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何かあったら(すぐに帰ってくるから)

新暦〇〇二〇年六月十九日。




(じん)が逝ってしまったことで、改めて(ひそか)達との別れの時が近付いていることを実感させられて、俺は、残りの時間をこれまでよりもっと大切にしたいと思った。


「何かあったらすぐに帰ってくるから、連絡頼む」


留守番をしてくれるセシリアと(ひかり)(あかり)にそう告げると、


「承知いたしました。お気を付けていってらっしゃいませ」


「こっちは心配ない…いってらっしゃい」


「いってらっしゃ~い♡」


って感じで見送られ、俺とエレクシアとシモーヌのチームA(アルファ)が調査に出る。


もっとも、『別れの時が近付いてる』と言っても別に明日明後日に立て続けにってことはないだろう。(ひそか)(ふく)(よう)も、さすがに外見上は年齢を重ねている印象はありつつも、健康面ではこれまでと別に変りないし。


ただ、(じん)の次くらいに強く、生態系の頂点近くに存在する(よう)も、体が弱ればカマキリ人間マンティアンなどに狩られてしまう可能性はあるので、その辺りは心配だった。


もしくは、万が一、河で魚を採ろうとして落ちるようなことがあれば、そちらにはワニ人間(クロコディア)もいる。


つくづく、彼女達が死と隣り合わせで生きてるんだってことを実感するよ。


それでも、彼女たち自身がそのことを不幸だとか思ってないのなら、俺が口出しすることじゃないとも思う。


どういう最期を迎えるにしても、な。


だから別れのその時まで、悔いのない……


いや、大切な人を喪うとなればどう頑張ったって<悔い>は残るだろうが、それでも少しでも悔いが減らせるようには心掛けたいよ。


たぶん、残された時間は、長くても数年くらいだろう。俺やシモーヌにとっては、たとえ十年でも、(ひそか)達にとっての一年かそこらだろうけどな。


そんな中、俺は調査の仕事をこなしてる。


俺達の担当は、河の向こう岸、ヒト蜘蛛(アラクネ)が生息する地域だ。と言っても、エレクシアがいるので、何の心配もしていない。俺やシモーヌがエレクシアの足を引っ張るような真似をしなければ何の危険もない。


人間のようにも見える部分があるとはいえ、ヒト蜘蛛(アラクネ)は限りなく虫に近い感覚しか持ち合わせていないのは、これまでの調査で改めて確認された。


それでも、本当の虫ほどは<反射>だけで生きてる訳でもなく、ある程度の、それこそネズミ程度の知能は持ち合わせているらしい。だから危険を危険として理解することはできるから、エレクシアの強さを思い知らせてやればそれ以降は近寄ってこなかった。


それでも、<例外>ってのはどこにでもあって、何度撃退されても俺達のことを執拗につけ狙ってくるヒト蜘蛛(アラクネ)の個体がいた。


そいつは、ヒト蜘蛛(アラクネ)の中でも例外的に知能が高そうで、『悔しい』という感覚を持ち合わせているらしいんだ。それで、エレクシアに負けたことがよっぽど悔しかったらしく、何度も<再戦>を挑んできてるのだった。



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