黎明編 命を奪う意味
地球人の感覚だとなるべく苦痛を与えないようにするのが望ましいと感じるものの、
<命を奪うという事実>
が変わらない以上は単なる自己満足に過ぎないであろうことも事実だとは思う。
ただその<自己満足>についても無視していればいいというわけじゃないのが人間という生き物の面倒なところだ。自己満足を一方的に無視されて蔑ろにされてたらそのストレスは蓄積されやがて抑えきれなくなってしまう可能性が非常に高くなる。
だから今の地球人社会においては<屠殺>についても一瞬で確実に完全に死なせるのが一般的になってる。<活造り>はほとんどの地域で違法だったりするんだ。まあ一部の完全自治を得た植民惑星なんかだと禁止されてないことろもあったりするらしいが。
俺としてはさすがにそこまで気にする必要性も強く感じないものの、それと同時に与える苦痛は少ない方が気が楽なのも事実ではある。あるが、今の時点では義務化する必要性までは感じないかな。
この辺りについても将来的にどうなっていくかは後の人間達に任せることにしようとは思う。そこまで口出しするのもどうかとは思うし。
と言いつつ正直なところ複雑な気分なのもまた事実。はてさてどうしたものか。
さりとて何もかもを俺の気分で決めてしまうのも好ましいとは言えないのも分かるからなあ。
難しいところだ。
なんて俺の内心などには関係なく、黎明も未来もイザベラもそれぞれ獲物を得ることができて満足げな様子だった。今は取り敢えずそれでいい。日頃の鬱憤を適度に晴らしつつ食用肉を確保しつつ自分達がどうやって生きていけてるのかを学ぶという目的は果たせてるし。
『命を奪うことに躊躇いがない』
からこそ、
<命を奪う意味>
についてしっかりと実感を持っていてほしい。それによって律してほしいんだ。目先の感情のみに囚われることなく道理に沿って判断できるようになってほしいんだ。
地球人社会ではただ、
『法律で禁止されているから』
という形で諭そうとするがそれだけじゃ納得してもらえない場合も少なくない。特に事件事故に巻き込まれた被害者やその家族および遺族はそんな理屈じゃ飲み込めないことも多いのは紛れもない事実。
そしてそもそも自分の感情ばかりを優先して事件や事故を起こす人間はその辺をちゃんとわきまえてないからそんなことをしでかすわけで。
自動運転がまだ十分に普及していなかった頃には、
『ムカついたから』
なんていう本当に浅はかで身勝手な理由で危険な運転をして事故を起こすのもいたらしいな。




