種族的な特徴(これはまあ仕方ないんだろう)
光も灯も、いかにも人間的な羞恥心のようなものは持ち合わせていない。だから俺の見てる前でも平然と裸になる。それでも光の方は性格なのかあまりだらしない恰好はしない。
一方の灯は、<奔放>という言葉がまさにぴったりとくる自由さだ。小さかった頃にはそもそも服を着るのを嫌がった時期もある。そうして裸で焔達と一緒になって遊んでた。
最初のうちは何とか服を着せようとしてたシモーヌもやがて諦めてしまって、好きにさせてた。すると、第二次性徴が始まった頃には服もそれなりに着るようになってきた。ただしそれも、『恥ずかしい』とかじゃなくて、どうやら服を着た方が多少なりとも身を守ることができるというのを理解しただけのようだったが。
とまあ、俺としても見ないようにはしてるものの、どうしても目に入ってしまうことはある。
で、プロポーションとしては、光の方は引き締まった体ながら同時に肉感的な印象もあり、シモーヌには負けるものの胸もそれなりにある。さすが密の娘といった感じだ。
が、鷹の娘である灯は、これはもう鷹がどうとかいう問題ではなく、単純に種族的な特徴なんだろう。ぱっと見は小柄かつ非常に華奢にも見える細身で、特に胸は比べるのも申し訳ないくらいの<絶壁>状態ではある。羽毛に覆われたタカ人間の若い個体なんかは、一見しただけでは雄雌の区別も難しいレベルだからな。
ただ、本人は特に気にしてないようなのでそこが救いではある。人間社会のように胸の大きさをとやかく言われないというのもあるかもしれない。俺もシモーヌも基本的には話題にしないし。これは別に、灯に気を遣ってる訳じゃない。それを話題にする必要がないだけだ。
なんてこともありつつ、休憩は終わり、午後の調査を再開した。午前と同じように、光の仕事ぶりを灯が見るという形だった。
だがその時、イレーネのステータス画面に<アラート>の文字が。
「接近警報。未知の動体が接近中です」
と警告を発するイレーネに、光が、
「<未知の動体>?」
と訊き返す。するとイレーネは、
「六体の動体反応。そのうちの五体はボノボ人間と推定。しかし、残る一体がこれまでの類型に当てはまりません」
とのことだった。
イレーネは、移動する際に発生する音などを拾いこれまでのデータと照合、正体を推定する。しかし今の言い方だと、過去のデータにないものだということなんだろう。
「これまで発見されてないものか?」
タブレット越しに俺が問い掛けると、イレーネが応えてくれた。
「最も近いものは<人間>ですが、人間は樹上をこのように移動はしません」