番外編② 会社ロゴを作ろうとしたら、全員センスが壊滅してた件。
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「――というわけで、アクオビのロゴ、作りましょう!」
朝。
新人のミナセ(通称)が、
ホワイトボードの前でテンション高くプレゼンしていた。
「せっかく会社作ったんですし、ロゴとか欲しいじゃないですか!
信頼ってまず“見た目”からですよ!」
「……いや、うちは“悪役”会社だぞ?」
「悪役でもブランディングは大事です!」
まっすぐすぎて眩しい。新人らしい発想だ。
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「じゃ、まず社長から案をどうぞ!」
ミナセがペンを渡してくる。
俺はホワイトボードに、
ドーンと“悪”の字を描いた。
「どや!」
「……昭和かよ」
ミナセの目が、完全に“教育者のそれ”だった。
「今の時代、“筆文字ドーン”は流行りません!」
「じゃあお前やってみろよ」
ミナセはタブレットを取り出して、スタイラスを走らせる。
数分後、画面には――
「A」の形をした黒い稲妻マーク。
「おお、悪くないじゃん」
「でしょ!? “アクオビ”のAを稲妻風に――」
「……ん?」
赤間が覗き込み、スマホを見せる。
「これ、某配達アプリにそっくりっすよ」
「――あああっ!?!?!?」
ミナセの顔が真っ青になる。
「ま、まぁ、たまたま似ただけで……」
「“アクターズ・オブ・イービル”なのに“配送業感”出てるの草」
「社長、笑ってる場合じゃないですよ!」
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その後も提案は続く。
・赤間案:「ドクロにネクタイ」
→ 「完全に中二病企業」
・ミナセ案②:「Aを反転させてEと重ねる」
→ 「子供の落書き」
・アオト案②:「黒い円にトゲをつける」
→ 「爆発マークにしか見えない」
もうカオスだった。
「うーん……どれも悪くはないんですけど……悪すぎるっていうか……」
「悪の会社だからな。」
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最終的に、妥協案が出た。
黒い背景に、赤い筆記体で
《A.O.E.》
その下に小さく
Actors of Evil — “We act so the world stands still.”
(俺たちは演じる。世界が止まらぬように。)
「おお……なんか急に、ちゃんとした会社っぽい」
「海外ドラマのロゴみたいっすね」
「お前ら……普段のノリとギャップありすぎだろ」
ミナセが照れ笑いしながら言う。
「社長、やっぱ“悪”って、ちゃんと見せ方大事ですよ」
「そうだな。中身がふざけてても、外見はシリアスに限る」
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その日の夜、事務所のドアに新しいロゴが掲げられた。
株式会社アクターズ・オブ・イービル(A.O.E.)
――悪を演じ、世界を支える。
外から見たら、立派な会社。
でも中では、赤間と新人がロゴで揉めてる。
……まあ、これくらいが“アクオビ”らしいか。
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次回:
番外編③「新人研修:悪のポーズ講座」
――「“悪の笑い方”で一日終わった件。」
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次回更新、11/5日を予定しております。




