番外編:会社の名前と、もう一人の悪役。
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「――で、社長。“うちの会社名”、そろそろちゃんと決めないとですよ」
朝の事務所。
テーブルの上には、コンビニコーヒーと申請書の山。
悪役も、税務署に書類は出さなきゃいけない。
「会社名な……“ブラック・アオトンカンパニー”とか、どうだ?」
「ダサいです」
「即答すんな」
ミナセは真顔でノートパソコンを叩きながら言う。
「“悪”って言葉を、もうちょっとカッコよくできません?
“イービル・なんとか”とか」
「横文字にすりゃいいってもんじゃないぞ」
「でも“ブラック”よりはマシです」
「うるせぇ、こっちは本名みたいなもんだ」
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赤間が割って入る。
「社長、“悪役の会社”って意味なら、
“Actors of Evil”とかどうっすか? “悪の役者たち”」
「……アクターズ・オブ・イービル」
口にしてみる。
英語の響きが、妙にしっくりくる。
“悪を演じる者たち”。
俺たちの仕事に、いちばん近い言葉だ。
ミナセがニヤリと笑う。
「略称、“アクオビ”」
「ダサカッコいいな」
「ですよ。」
赤間が書類にペンを走らせる。
『株式会社アクターズ・オブ・イービル(通称アクオビ)』
――これが、正式にこの街で登録された。
「……悪役が法人化、か」
「いいじゃないっすか。社会的信用、多少は上がりますよ」
「いや、“悪”が信用される社会って、終わってね?」
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昼。
ミナセがデスクに座り、資料を整理していた。
俺はふと思い出して言う。
「そういや、お前にも“怪人ネーム”付けとくか」
「え、私にも?」
「そりゃ社員だろ。悪役名がないと、現場じゃ浮く」
「うーん……“ミナセ”のままでもいいんですけど……」
「ダメだ。悪役に本名は似合わねぇ」
俺はしばらく考えてから、笑った。
「――“シャドウ・ミナセ”ってのはどうだ」
「シャドウ……?」
「表ではサポート、裏では全部仕切ってる。
“影の参謀”って意味で、ピッタリじゃねぇか」
ミナセは一瞬、きょとんとしてから笑った。
「……悪くないっすね。
“ブラック・アオトン”と“シャドウ・ミナセ”。
並べると、それなりにヒーローっぽいですけど」
「それは言うな。うちは“ヒーローじゃない側”の会社だ」
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夜。
会社のドアに、新しいプレートが貼られた。
株式会社アクターズ・オブ・イービル
――悪を演じ、世界を支える。
ミナセがプレートを見上げながら、呟いた。
「……なんか、ちゃんと会社っぽいですね」
「っぽいだけで十分だ。」
「社長、サイン書きましょうよ。“代表取締役・ブラック・アオトン”。」
「サイン、怪人名でいいのかよ。」
「うちの会社、怪人名が本名ですから。」
ふ、と笑う。
正義がシステムで回る街で、
“悪”だけが人間のままでいる――そんな会社。
それが、“アクオビ”の始まりだった。
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次回:
番外編②「会社ロゴを作ろうとしたら、全員センスが壊滅してた件」
――「“悪のA”をデザインしたら、どう見ても某配達サービスに。」




