29、魅了
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「ど、どうしたんだ?ほら、これを……」
「え……?」
そして差し出されたのはハンカチだった。反射的に受け取ってしまうも、何故渡されたのかわからない。
するとサイラス様が眉間に皺を寄せ、とんとんと泣きそうな顔で自身の頰を指差した。つられて触ってみると濡れている。
「あ……」
自分が涙を流していることにも気づかなかった。それでも、自覚してしまうとお兄様方の優しい表情に込み上げるものがあった。
「……ふっくっ……お兄様にも、サイラス様にも……ずっと、会いたかったんです……ぅっ」
「……ああ。俺たちも、ずっとエリザベスに会いたいって話を、いつもしていたんだ」
とくにサイラスが本当にうるさくて……と話しているお兄様をみて、余計に涙が溢れてくる。
サイラス様に至っては、私が泣いていることでおろおろしていたが、私の涙の意味がわかって少しホッとしたのか、ジーク!それは言ってはだめだろう!と慌てている。
素っ気なくなる前の先ほど見た夢の中の彼よりも表情がある気がする。
2人と同じ気持ちだったことが嬉しくて、しばらく涙が止まらなかった。
ひとしきり涙を流し終わったところで頭を切り替えた。
ひとまず余命宣告のことは伏せたまま、両親に関心を持って欲しかったことからドレスを数着と宝石を数個買ったこと、あまり外に出ることもなく、離宮で過ごしていたこと。
ミリアが庭でお茶をしていたときに迷い混んできたことから、遊びにきてくれるようになったこと、ミリアが養子入りしたことで舞踏会などに出席することになり、出席してほしいと頼まれ参加したことなどを話した。
「……ちなみに、お兄様はミリアのことは……?」
「一度だけウェルシの街の孤児院で会った」
(やっぱり小説通りになってるのね……)
ウェルシは小説でお兄様とミリアがであった街で、お兄様が留学していた国との国境沿いの街だ。
今後2人は惹かれていくのだろうか。
少し不安になったところで──
「……サイラスからミリアのことは聞いた。正直会った感じだとただのいい子としか思わなかったが……もう今後、会うつもりはない」
お兄様がきっぱりとした様子で言い切ったことに驚く。初対面からお互いとても好意的だったはずだ。
「……本当に、それでいいんですか?」
思わず俯いて、確認してしまう。
小説での2人は力をあわせて国を立て直し、公私共に最高のパートナーとして描写されていた。
「……サイラスから前回の話を聞いたとき、ミリアのことも聞いた。……恐ろしいと思ったよ。俺の人の見る目のなさに」
「……え?」
一体何を聞いたのか。ちなみにまだあの処刑されるところまで話はしていない。
すると、サイラス様が口を開いた。
「……あの女は……エリーの悪評をこれでもかと流した挙句、俺やジークにも王宮で会ったときの話をしてきた。もちろん、いい話なんてものじゃない。最初は俺たちもその件は取り合わなかったんだが……」
「……私の悪評については、知っています。たしかに国の財政のことなど知らずに、ドレスや宝石を買いましたから……」
「いや、それは必要経費も多いだろう。舞踏会に出るために買っていたのもあるだろう?そうじゃなくて……」
サイラス様が言い淀んでしまう。何か他の理由があるのだろうか。
私の悪評はあと何があっただろうか。最期にミリアが教えてくれたのはほんの一部なのだろうけれど。
「……魅了魔法を使っていたんだ」
「魅了、魔法……?」
「ああ。俺もジークが途中からおかしくなったと思っていたんだが、原因がわかるのに時間がかかってしまったんだ……そのせいでいろいろと後手にまわった……」
サイラス様は悔しそうにそう言って俯いた。
その話を聞いて少しずつ私の中で全貌が見えてきた気がした。
「魅了の魔法は……洗脳のようなものだ。ジークには何を言ってももう聞いてもらえなかった。……エリーを救おうと処刑までする理由がないと、証拠を必死で集めてジークの元に戻ったときには、もう刑の執行の時だった……」
「だから……」
私に会いに行けなかった。
暗にその件を言っているのだとわかった。
「……あの女が、早めるようにジークに言ったんだ」
それは、もうミリアには何も思わないと思っていた私もショックを受ける。
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