帰還
翌日、俺達は朝食を済ませると、地上への帰路についた。
目立つので、ガブリエラは[透明化]してもらっている。
上層で、数組のパーティとすれ違いながら、ゆっくり時間をかけて、昼前には迷宮入口に辿り着いた。
「おお、お前等生きて帰ったのか。今日で5日目だし、もう死んだとばかり思ってたよ」
容赦の無い、ギルド職員に話しかけられる。
「まあ、何とか25階層まで行けましたよ」
「ぶっはっは、相変わらずジョークの冴えた奴だ。今回は、もう帰るんだろ?俺は、マッケン。また迷宮に挑戦する時は、訪ねて来な、アドバイス位してやっから」
「あはは、どうも…」
(相変わらず失礼な奴だマッケン。しかしギルドカードで俺がAランクなのは、解ってるはずなんだが・・)
「まあ、あの[A・A・A戦士団]でさえ、20階層で尻尾撒いて引き返したんだ。Aランク1人の新設パーティじゃ仕方無いさ」
(あいつ等が不甲斐無いせいかーー!)
「主君、この失礼な輩は、切り捨てても良いのだろうか?」
「気持ちは解るがダメだ!」
迷宮入口付近の露店で、適当に買い食いしながら、馬車へと戻る。
馬車の周囲は、停めた時よりも広く開いてる様だ。よく見ると血の跡や、折れた剣、何かの木片等が、散乱している。
(恐らく、留守を狙って襲撃して来た奴がいたんだろうな)
気になったので、辺りで聞き込みすると、あのガゾムが仲間を連れて、何度か襲撃して来たらしい。
(で、その度に返り討ち‥ご苦労な事だ…)
全員が乗り込んだのを確認すると、俺達は、王都の屋敷に向けて出発した。
「おかえりなさいませシンリ様」
「シンリお兄ちゃん、おかえり!」
屋敷に着くと、馬車の音で気付いたのだろう、セイラとオニキスが出迎えてくれた。
「お、おかえりなさいませ!」
遅れて、ラティも飛び出してくる。
「ただいま。こっちは、変わり無かったかい?」
馬車とスーさんを、アイリに任せて、屋敷に入る。
そして、リビングで新たな仲間のガブリエラを紹介した。
俺達の帰還祝いの為、料理の買い出しをと、セイラ達が出かけたので、女性陣を先にお風呂に入らせる。
後でこっそりシズカが報告して来たが、アイリはエレノアにも劣らないナイスバディになっていた、それにガブリエラのスタイルとその肌は、言葉では表せない程だとか…っていやいや。
皆が上がったのを確認し、俺も一人で入浴した。途中、背中を流したいだの、護衛の為だの、進化した姿を見て欲しいだの、子作りしたいだのと、次々と戸を叩く者が現れたのだが、ミスティに頼んで扉に封印を施しておいたので、ゆっくりと疲れを取る事が出来た。
帰還祝いのラティの料理は、やっぱり絶品だ。
弁当も【魔眼】に収納して持って行ってたので、ほぼ作り立てで食べれたのだが、それとはやはり別物だな!
美味しい料理と楽しい仲間達、宴は夜遅くまで盛り上がった。
翌日は、昼前に目が覚めた。とは言っても、全員まだ寝ているが…。
(パーティメンバーだけでなく、何故かセイラやオニキス。それにラティまで一緒に寝てる…広いベッドだからってこれは流石に多過ぎだろ)
皆が起き、昼食を済ませた俺達は、ギルドへ向かった。
ギルドに着いた俺達は、普通に窓口に並び順番を待った‥のだが、順番が来て名前を名乗ると、本部長室に上がる様、言い渡された。
「おお、ナーサ!無事だったか!?」
(やっぱりそっちが目的か…全く、実の息子は、20階層でコテンパンになってたぞ…)
「シルビア‥ただいま‥なの…ダレウスも」
「さて『黒衣』の、ナーサの件をじっくりと…」
また妙な事を言いかけたダレウスを、シルビアの視線が冷たく射抜く!
「…いや、迷宮での報告を聞こうか?」
そうダレウスが言い直すのを確認したシルビアは、全員のギルドカードを回収して退室した。
「…そうか、いや流石だな。24階層を突破しやがったのか!」
「まあ、アンタが動けば、とっくに突破出来たんじゃないのか?」
「いやいや、迷宮攻略ってのは、総力戦だ。仲間の実力が伴って、初めて挑戦出来るってもんだぜ」
「まあ、アンタと実力が伴うってのは、確かに難しいかもな」
「…ああ、『黒衣』んトコが、羨ましいよ!」
そう言って俺の仲間達を見回すダレウスは、少し寂しそうだった。
戻ったシルビアから、カードが配られる。見るとナーサ以外、全員ランクがAになっていた!
「おいおい、これは…」
「お、驚いたみたいだな。でもこれは、シルビアとも話し合って決めた事だ」
全員の視線が、シルビアに集まる。
「皆さんの実力は、確認済みですし、ここ数年難航不落だった24階層を突破されたのですから、誰も異存は、ありません」
「ま、そう言うこった。それで二つ名なんだが…まず『荊姫』シズカ、そして『黒花』ツバキ、『艶魔』エレノア、で最後に狼の嬢ちゃんが、『銀狼』だったんだが‥なんだか色が変わってやがるから『黒狼』アイリって事になった!」
「まあ、予想の範疇でしたわね」
「黒が付いてます、嬉しい!」
「主様と一緒!」
「妾は、人が付ける名等、興味は無いのう」
まあ、各自まんざらでも無いみたいだ。ちなみに、ナーサはBランクになっていた。
「シンリ様、迷宮での回収素材を、出来ればギルドで売却して頂くと助かります」
「ああ、いいですよ。下で出して帰ります」
「感謝します。迷宮の素材は、ギルドの大切な収入源の一つですから」
シルビアも、色々苦労してるんだろうな‥上がアレだし…。
「『黒衣』の‥何か今、失礼な事考えてやがら無かったか?」
「さあ、何の事だか…」
話しの雲行きが怪しくなって来たので、早々に組長室(本部長室)を後にし、迷宮からの回収素材を提出しに1階の受取場に向かう。
「こここ、これは、[ウィザードラビット]の杖!それに[ステューピファイモス]の触覚に鱗粉。更に[メタルゴーレム]のレアメタルに、[ポイズンキャタピラー]の皮もこんなに!…」
あまりの量と、ここ最近回収されなかった希少な素材に、受取場は、応援の職員まで駆けつけて、一時騒然となっていた。
素材を全て出し終えた俺達は、結局集計が終わるまで、そこで1時間程待たされる事となる。
そして、かなりの額の報酬を受け取り、ギルドを出た時には、もうすっかり日が傾いていた。




