解呪
注:本日2話目の投稿です。
「皆様先程は、意思を奪われていたとは言え、大変ご迷惑をお掛け致しました。我が名はガブリエラ。今後は大恩ある主君の剣として、お仕えする所存。どうぞ宜しくお願い致します」
深々と、皆に向かって頭を下げるガブリエラ。
「天使キャラ…キターーーーーーーーーー!!」
さっきまでの、俺とガブリエラのやり取りを、妙に熱い目で見ていたシズカが、我慢出来ずに奇声を上げる。
「ハア‥ハア‥さ、流石お兄様ですわ。パーティのカラーが黒になった時点で、悪魔位しか仲間に出来ないと諦めておりましたのに、まさかの召喚天使、しかも武人キャラですわ!」
「ふわー光ってて綺麗です‥あ、アイリです。よろしくお願いします」
「…ツバキ」
「ほっほっほ、天使を従えるとは、我が君は神にでもなるつもりかのう。エレノアじゃ、よろしゅうのう」
「ナーサ‥なの」
「と、ダスラじゃんよ天使さん」
皆の挨拶が一通り終わったのだが、ガブリエラがじっとアイリを見ている。
「どうした?」
「主君、アイリ殿には、何やら憑いておる御様子、もし主君の計らいで無いのなら、祓って差し上げたいのだがどうだろうか?」
「ありがとうガブリエラ!是非そうして欲しい。アイリこっちに来てくれないか」
「はい、シンリ様」
アイリが、尻尾を振りながら、俺の元に駆けて来る。
「アイリ、いきなりだが、約束を果たす機会が来た様だ。アイリの【呪い】を今から解く!」
「ほ、ホントですか!?」
「ああ、俺の本来の目的は、正直シャルロッテ等では無い。あの【呪い】の話を聞いて、何かアイリの解呪の情報が、得られないかと思って、ここに来たんだ」
「わ、私の為…」
「おばば‥なんてのは、眉唾だったんだが、今回ガブリエラとの出会いにより、あの予言とやらは現実となった。ガブリエラ!」
アイリの前にガブリエラが歩み出る。
「主君、これは…」
「何か問題が?」
「いえ、アイリ殿は現在、【呪い】とその[耐性]の二つの力の鬩ぎ合いによって、体内の魔力や力が強制的に抑えられています。これらが一気に解放されれば、そのショックにより暫く動けなくなるかと…」
「確かにアイリは、俺やシズカと修業していてもLVの上がりや、能力の伸びが少なかったが…」
「恐らく、そのLVとやらも急激に上昇するでしょう。その反動があるかと」
「わかった。下層の状況確認は、俺一人で行く。皆は、アイリの側について居てくれないか?」
「主様、同行許可を!」
じっと俺を見つめるツバキ。譲る気は無さそうだ。
「よし、ツバキは共に来い。後は全員解呪後の護衛と状況を注視、不測の事態があればすぐ知らせろ」
「わかりましたお兄様。留守はお任せ下さい」
「うん。俺達もなるべく早く戻る!行くぞツバキ!」
…コク!
そう言ってツバキは影に、俺は迷宮の床に、それぞれ沈み込んだ。
その様子をきょとんとしながら眺める一行…。
「お兄様ったら、いつの間にあんな事まで…。まあ、いいですわ、ガブリエラ準備はよろしくて?」
「はっ!いつでも」
「エレノア、念の為に結界を、ナーサはワタクシの側を離れぬように!始めてガブリエラ!」
シズカの指示が飛び、エレノアが室内に結界を張る。そしてガブリエラの詠唱が始まった。
『汝は我、我は汝。闇照らす光にして、シンリの剣。我求めるは、聖浄なる御光!』
詠唱が終わり、術が発動すると‥辺りは光で満たされた。
時は少し進み…。
俺とツバキは、今23階層のボス部屋にて、[ウィザードラビット]と[アーマーラビット]を相手に戦闘中だ。
検証してみると『壁移動』スキルは、確かに使える能力だ。潜っていれば、敵に見つかる事も、毒の影響を受ける事も無い。それに、潜っている時にも普通に呼吸が出来ている。ツバキが影に居る時も、こんな感じだろうか…。
だが、迷宮のシステム的に、ボス戦は避けて通れないらしい。
ボス部屋の中には、扉を開けてしか入れないし、ボスを倒さない限り、階下への通路も現れない。
まあ、そんな訳で今戦っているのだが…。
「行くよ、ツバキ下がって!」
ツバキを影に入らせ、[村雨丸]を横に一閃すると、古いアニメの様にスパっと、全ての敵が上下に二分された!
よく見ると、切られた[ウィザードラビット]の後ろの壁面も凄い事になってる。
「これは、本当に加減が難しいな…」
頭を抱える俺を他所に、ツバキは終始興奮気味だ。今も納刀した途端、飛びついて来て俺に抱き着いて離れない。
「素敵、主様、主様!」
(根っからの強さ至上主義で教育されてるから仕方無いか‥確かに、俺自身ひく位の威力だからな)
「そろそろ下層に行くぞツバキ!」
…コク!
抱き着いたまま頷くツバキと共に、俺達はあの24階層に降りた。
[デスキャタピラー]が、徘徊してるのはこれまで通り。問題の、ボス部屋の前に辿り着き、扉を開ける。
ボス部屋は、以前より随分小さくなっていた。これは、ボスのサイズに影響されてるのだろうか。
室内には、体長5m程の[ポイズンキャタピラー]がいた。派手派手しい極彩色のイモ虫で、糸と毒針、それに周囲に毒性の息を撒き散らす。
これも、[村雨丸]の一閃で、あっさりと倒した。
「よし、これで迷宮が元通りになったのは、確認出来た。ツバキ帰って皆と合流…」
続く俺の言葉を遮る、あまりに強い魔力の接近…!!
ガバァァァン!
無理矢理外からこじ開けられた、ボス部屋の扉…そこに立つ異形の黒い影…。
侵入者を感知し、迷宮が新たに[ポイズンキャタピラー]を産み出す!
しかし、産み出された[ポイズンキャタピラー]は、黒い影の持つ槍から放たれた『雷撃』によって瞬殺された!
「あ、アイリなのか?」
そう、あまりに桁違いに膨れてはいるが、この魔力の波動は、確かにアイリの物だった!




