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ゆたかの怪奇列島第7章「二番」  作者: こうた


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第3話「衝突」

“ドンッ!!”

空気が弾ける。

地面が割れる。

衝撃が走る。

ぶつかったのは——

拳。

巨大な“影”の拳と、

受け止める

桃太郎

その一撃。

重い。

圧倒的な“力”。

桃太郎の足元が沈む。

「……ぐっ」

歯を食いしばる。

だが——

退かない。

影が笑う。

『ほらな』

さらに押し込む。

『これやろ』

一拍。

『力や』

“バキッ”

地面に亀裂。

桃太郎の腕が震える。

押されている。

ななが叫ぶ。

「無茶すんな!!」

神父が冷静に言う。

「純粋な出力では劣っています」

一拍。

「ですが——」

視線を向ける。

「それだけではありません」

その瞬間。

桃太郎が足を踏み込む。

“ズンッ”

体勢を立て直す。

押し返す。

ほんの少し。

だが確実に。

影の拳が止まる。

『……ほう』

興味を持ったような声。

『まだ折れへんか』

桃太郎は答えない。

ただ——

前を見る。

真っ直ぐに。

一気に弾く。

“バンッ!!”

衝撃。

影が一歩下がる。

その隙。

桃太郎が踏み込む。

拳を振るう。

だが——

“スッ”

影の体が歪む。

すり抜ける。

当たらない。

ななが叫ぶ。

「実体ちゃうんか!?」

神父が即答する。

「不安定です」

一拍。

「実体と非実体が混在しています」

影が背後に回る。

『雑やな』

振り下ろし。

“ドンッ!!”

桃太郎が吹き飛ぶ。

地面を転がる。

砂埃。

ななが歯を食いしばる。

「くそ……!」

ゆたかは動かない。

ただ見ている。

冷静に。

影がゆっくりと歩く。

桃太郎へ。

『結局こうなる』

一拍。

『力や』

『選ばれたんも、強かったからやろ』

桃太郎が、ゆっくりと起き上がる。

呼吸が荒い。

だが——

目は、死んでいない。

影が続ける。

『俺も強かった』

一歩。

近づく。

『負けてへん』

一拍。

『でもな』

拳を握る。

空気が軋む。

『選ばれへんかった』

その言葉。

重い。

ななが小さく呟く。

「……きついな」

神父も頷く。

「事実です」

一拍。

「強さと評価は一致しません」

ゆたかが口を開く。

「せやな」

影が、ゆたかを見る。

『お前は分かるやろ』

一歩。

近づく。

『外やもんな』

一拍。

『評価されへん側や』

空気が、わずかに揺れる。

ゆたかは、笑う。

小さく。

「せやで」

あっさり認める。

影が一瞬止まる。

『……は?』

ゆたかは続ける。

「別にええやろ」

一拍。

「それで」

沈黙。

ななが横を見る。

「お前な……」

神父も興味深そうに見る。

影が、ゆたかに詰め寄る。

『何がええねん』

低く。

怒りを含んだ声。

ゆたかは答える。

「誰かに決めてもらわなあかんのか?」

一拍。

「価値」

空気が止まる。

影の動きが止まる。

ほんの一瞬。

桃太郎が、その言葉を聞く。

目を見開く。

ゆたかは続ける。

「一番やから価値あるんか?」

一拍。

「ほな二番はゴミか?」

沈黙。

影の輪郭が、わずかに揺れる。

『……違う』

かすれた声。

だが——

強く言えない。

ゆたかが言う。

「やろ?」

一歩。

近づく。

「ほな終わりちゃうやん」

その瞬間。

空気が変わる。

ほんのわずかに。

だが確実に。

影が、後ろに下がる。

初めて。

明確に。

ななが呟く。

「効いとる……」

神父が頷く。

「概念に干渉しています」

だが——

次の瞬間。

影が、叫ぶ。

『黙れや!!』

爆発。

感情が一気に膨れ上がる。

“ドンッ!!”

衝撃波。

全員が吹き飛ぶ。

ゆたかも、後ろへ。

地面に叩きつけられる。

「っ……!」

影の体が、さらに膨張する。

巨大に。

歪に。

『分かるか!!』

怒号。

『ずっとや!!』

『比べられて!!』

『選ばれへんまま終わる気持ち!!』

空気が震える。

周囲の人間たちが、膝をつく。

涙を流す者もいる。

「なんで俺や……」

「なんであいつばっかり……」

完全な崩壊。

ななが立ち上がる。

「止めなあかん!!」

神父が言う。

「臨界です」

一拍。

「このままでは広域に影響します」

ゆたかが、ゆっくりと立つ。

「……やな」

桃太郎も、立ち上がる。

今度は——

迷いが少ない。

まだ完全ではない。

だが。

前よりも、明確に。

影を見る。

そして——

一歩。

踏み出す。

『来い』

影が構える。

巨大な拳。

圧倒的な力。

だが——

桃太郎は止まらない。

ゆっくりと。

確実に。

前へ。

■ 第7章 第3話 終

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