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破綻少女は死に想う  作者: 七天 伝
第一章 求めるもの
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安寧のために

 今いる《宣誓の草原》から《風の森》の方へと足を進める。辺りには私を除いて虫一匹見当たらない。周りを見渡しても人工物や人影は全く見えない。この空間を支配しているのは私と時々吹く風だけだ。


 退屈だ、と感じるのはいつぶりかなと考える。いつからか退屈を感じることはなくなった。自分以外のすべてが恐怖であった私にとって退屈などという感情を抱く余裕はなかった。今はこの感覚が愛おしかった。


×××××


 あれからだいたい1時間くらいで森の前に着いた。結局、ここに着くまでに私以外のプレイヤーを見かけることはなかった。私より先に先行しているのだろうか。

 私以外この周辺に転送されなかったとも考えられる。ハーデスと名乗った存在の話が真実ならば約10万の人がこのゲーム内にいるはずだ。人に会わないなんて考えられない。たまたま草原で会わなかっただけだろう。この森は広い。いくら見渡しが悪いからといって誰にも会わないなんてことはないはずだ。


 もし会ったら、その時は殺す。私が私でなくなる前に殺す。私の心の安寧が脅かされることがないように。


 人を殺すことに、もう躊躇はなかった。

 大鎌を強く握りしめて森の中へと入っていった。


 《風の森》はその名称の通り風がよく吹く。風の強さに違いはあれど風が止むことは森に入ってから一度もなかった。時々強く吹く風が木々をざわめかせ、葉の擦れる音が鳴り響く。


「うるさい…」


 あまりに鬱陶しかったので憂さ晴らしがてら大鎌で薙ぎ払う。くるりと一閃すると私を中心に半径5メートルくらいの木々は大きな音をあげて倒れ伏した。


「…加減を覚える必要があるかな?」


 そう考えつつ、今の音で誰かが来るかもしれないと思いその場から軽く離れていった。



 1度大鎌を消し、一際太い木の枝に飛び乗り、幹に体を預けて休憩がてら隠れる。たまに斬り倒した木々の方を確認していると、しばらくして一人の少女が現れた。


「……?……………?」


 口がパクパクと開いているのでなにか喋っているのかもしれない。だが、風のせいで何をいっているのかは全くわからない。


 分からないのものは仕方ないので無視して容姿を見る。短い水色の髪、身長はたぶん私より上、右手には水色の石がはめられた杖。あの杖でどうやって攻撃するのだろうか。


「まさか《呪塊(カース)》じゃないよね…?」


「…?」


 耳を研ぎ澄ましていると今度ははっきりとなにを言っているのか聞こえた。風は相変わらず吹いている。それなりに距離もあったのになぜ聞こえたのだろうか。さっきまでとは違う感覚が耳を覆ったような。いや、考えるのは後にしよう。


 いまので思い出したが、このゲームは『邪神』と呼ばれる存在を倒すのが最終目標…だったはず。そんな感じのことをあの管理者が言っていたと記憶している。。


 その配下に《呪塊》という化け物がいたはずだ。犬の体に猿の頭で四足歩行する化け物だったり、溶けたチーズのようなものや、雪だるまのような形をしているがその体はゴミでできている化け物、などなどと多種多様なようだ。まだ実際の姿は見ていないので分からないことは多い。


 思い出しているうちに少女が杖を前に突き出して周りを警戒しているのが見えた。私は見つからないように少女の姿が見えるギリギリまで下がる。再び少女の方を見ると、杖の先端に魔法陣が形成されている。魔法陣の中からは氷でできた槍のようなものの先端が見える。


 殺すのは確定だ。別にあの存在が私に何かしたわけではない。だけどあれもきっと同じだ。放置すればいつか絶対に私に害を成してくる、だから殺す。そして何より私の心に安寧が欲しい。あの少女の姿を見てから私の心はずっとざわついている。少女の容姿が原因ではない。あの存在そのものが原因だ。あの存在を殺すことで私に安寧が帰ってくる。


 痛いのは嫌だ。だから抵抗されないように一撃で殺したい。だけど少女は警戒している。不意打ちで殺せるのだろうか。いや、無理だ。


 そうやって考えを巡らしていると背後からクシャリ、クシャリと落ち葉を踏む音が聞こえてきた。ハッとして後ろを向いて見下ろすとぱっと見一メートルほどの大きさをした緑色の卵形の化け物が視線の中に現れる。

 

「(呪塊…!)」


 1体現れたと思ったら2体、3体と私の視線の中に姿を現す。葉を踏む音がどんどん増えていき、最終的に私の視線の中には10を超える数の呪塊がいた。卵の真ん中の辺りには割れ目があり、時々割れ目が開いてその中から赤く染まった目が外を覗いていた。


「…そうだ、いいこと思いついた」


 魔法少女としてはアレを倒すのが当たり前なのだろう。だけど別に私が倒す必要はない。あの少女に倒してもらおう。倒しきって警戒が解けたところを襲えばいい。


 問題は私をスルーしてくれるかどうかだったが杞憂だった。私のいる木を無視して彼女の方へとコロコロ転がっていく。


「(よかった…)」


呪塊から目を離し、再び少女の方へ目を向ける。半ば私がけしかけた呪塊との接敵を今か今かと待ち構えていた。


補足 呪塊について

・小型、中型、大型と大まかに3種類に分けられている。(作中の卵型は小型、蛇型は中型)

・作者イメージ的にまど○ギの魔女の手下みたいな姿をしている



アドバイス等があればよろしくお願いします。


(*・ω・)*_ _)ペコリ

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