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32 短剣に誓って

「わ、わかりました」


俺は恐る恐る背中の長剣と腰の短剣を鞘ごと外して差し出した。


ちなみに武器はシニカさんが「ここの中にいても何があるかわからないんだからいつも身に着けておきなさい」と俺に言っていたのでそれ以来ずっと持ってた。


顔をしかめたまま二振りを受け取り鞘から抜いて眺める。


「・・・どっちも随分使い込んだな」


「し、シニカさんとの模擬戦で・・・」


「ほぉ、よく折れなかったな・・・いい子たちじゃねぇか」


顔が一瞬優しくなる。なんというか、近所に住む子供好きのおじいちゃんみたいな顔だ。


「だが、戦場に持ってくにはあまりにも不格好すぎる。こいつらが可哀想だ・・・こっちのロングソード、相当の業物だな。結構いい値しただろう」


「いえ、それは村であった商人に譲ってもらって・・・」


「なら相当の幸運だな」


「そ、相場だといくらですかね・・・」


「5000ゴールドくらいだな」


「え!?、ご、5000!!??」


俺の代わりにびっくりしてくれたのは隣でちびちびとお茶をすすっていたアシェットだった。


「イクス製の最高品質クラスの値段じゃないですか!!」


「おぉ、見た感じイクスのみてぇだな。そりゃいいやつだわな」


アシェットは目を見開いて驚き、シロガネは楽しそうに剣を眺める。アザレア先輩はマジで興味なさそうに窓の外を見ていた。


「んで、こっちの短剣だが・・・これはうちで作ったやつだな。誰からもらった」


「あっ、シャーネですね」


そういえばあの村でもらって以来、何だかんだずっと持ってた。


「残念だがもう寿命だな。こいつは俺たち鍛冶師じゃ直せない。もういつ折れてもおかしくないレベルでボロボロだ」


「そうですか・・・」


ここまでずっと俺の左手で頑張ってくれたこいつがもう限界だって言われると少し悲しくなる。


なんだかんだ長い付き合いだったしな・・・


「そうだなぁ・・・こっちの長剣は多少の手入れで何とかなるが短剣は新しいのを打たなくちゃならねぇな。お前はおそらくそこまで戦いなれてるわけじゃなさそうだし、あんまし弱いもんをやるとすぐにダメにしそうだ。お前、魔法はどんなの使う」


「えっと・・・」


答えずらい。いっぱいあるから・・・


「その子、人の魔法奪えるから色々使えるんだよー。というか知らないの?、シロガネおじさんはほんとに外のこと興味ないなぁ・・・」


俺が言いよどむとアザレア先輩が口をはさむ。


「魔法を・・・奪う?、どんなのだ」


「あ、いや、まだそんなにあるわけじゃないんですけど」


とりあえず自分が持ってる魔法をすべて説明する。


「・・・んじゃあ、もう媒介武器にするのがはえぇな、やっぱり」


「媒介武器?」


「魔具の一種で、魔吸鉱と他の金属を混ぜた合金を使って作る魔法の威力を高める杖のような役割をしてくれる武器です」


わからない単語にアシェットが解説を入れてくれる。アシェペディアさんマジで博識。


「しゃーねーな。このロングソードと同じアダマンタイト合金で作るかぁ・・・」


はいまたサラッとわけわからん単語が出てきましたー


アダマンタイトってあれだよな。ファンタジー御用達の超硬金属だよな。


・・・というかこの剣、そんないい素材でできてたのかよ。ガンガンシニカさんのバゼラードにぶつけてたわ。


「ということは一生ものの武器にするんですね」


「そういうことだ。こいつが変な使い方して折ったり、馬鹿なことしてなくしたりしなければな」


そう言って俺のことを睨む。すっごい睨む。


「・・・んじゃ、こいつらは預かるぜ。この短剣もこっちで供養してやるから」


「供養・・・」


「当たり前だ、武器には敬意をもって接しろ。こいつらはお前たち武士の命を守ってくれてるんだ。供養するのは当然のことだ」


そう言って俺の剣をもってスタスタと歩いて行く。


「ま、待ってくれ」


「あ?」


「少し、短剣を貸してくれ」


俺の言葉に少し眉を上げ、考えるように俺を見つめてから無言で短剣を差し出した。


手に伝わってくる慣れた重量感。これももう味わうことができないと思うと、やはり寂しい。


ここに来て、こいつを持ってからそんなに経ってはいないが、それでも乗り越えてきた試練を考えると、思い出と呼んでしかるべきものが沢山ある。


思い出されるのは初めて人をこの手で、確実な殺意をもって殺した感覚。


使ったのはこの得物だった。


鞘から現れたボロボロの刃。たった十日ほどでできたとは思えないほど傷ついていた。


「・・・ありがとな。俺をここまで連れてきてくれて」


短剣を持つ左手が少しだけ、あったかくなった気がした。


「・・・ありがとうございます」


「もういいのか」


「供養できなくなりそうで」


「そうか。きっとこいつも喜んでる」


鞘に納めてシロガネに手渡す。


「よろしくお願いします」


「任せろ。代わりの得物は用意してやる。しばらくはそれを使え」


そう言って出ていった。


「・・・いい人ですね」


「あの人ツンデレなんだよねぇ。ただの武器大好きおじさんだから」


「でも顔は怖いです」


それぞれの感想に俺は思わず笑ってしまう。


鍛冶師シロガネ。第一印象最悪のおっさんはただの武器大好きおじさん。


付き合いは結構長くなるだろう。

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