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20 勇者どもの尻尾

「さて、如月君。やっぱり知りたいのはあの四人の居場所と現状でしょ?」


「言い方がなんだか腹立つがそうだな。居場所は聞いておきたい」


こいつはこれでも商売屋の頭だ。そういう情報に関してのツテは結構あるだろう。


「まず風見隼人・・・はもう知ってるか。彼は前王が亡き後、この国の王になった。一応代理っていうことだったんだけど権力とチート能力を振りかざして王になった」


こっちはおそらく最後になるだろう。なんせ国のトップだ。簡単に落とせる首じゃない。


「次は岩天心、ユトニシア王国の大臣になった。国の第二位の地位を手に入れて常に風見の隣にいる」


こいつは確か精神的にかなり弱かったはずだ。少しキレるのは厄介だが上手くやれば死ぬよりひどい目にあわせられそうだ。でも風見が近くにいるのか・・・


「磯貝麻紀音、ここの貴族になってる。国の後ろ盾もあってかなりの権力があるよ。かなりの男をはべらせてるみたい。それ以外はあんまり情報はないかな」


こいつに関してはこちらでの情報がかなり少ない。どんな能力を持っているか知る必要がある。さもなければ簡単に返り討ちにされるかもしれない。ちなみに頭はそんなに良くなかったはず・・・?


「最後に四人目の九条逸希、これが一番厄介かな・・・」


「どういうことだ?」


言葉の意味が分からず俺は首を傾げる。


「実は二か月前に国外追放になったんだよ。姫に手を出そうとしたんだよね・・・」


あっ・・・さすがIQ皆無さん。なんだか殺すのかわいそうになるくらいバカだなぁ。まあ、残虐と非道の限りを尽くしてボコボコにしてから殺すけど。


「んで?、国出てからは何してるんだ?」


「あぁ、彼は盗賊に堕ちたよ。能力は確か《スキル・スナッチ》、相手の魔法を一回分コピー出来る魔法だってさ。あとはナイフ技能とスピードアップっていう身体強化系のやつらしい。公言してたんだよ」


「・・・バカだからか」


「馬鹿だからねぇ」


俺は呆れてため息をつき、黄木は苦笑いになる。


「でもバカだけどその強さは魔王を倒した一人であり、そこらじゅうの村から金品や女子供も攫うかなり強い大盗賊だ。一筋縄ではいかないだろうね」


だろうな。俺たち転生者は良くも悪くも神に選ばれたチート人間だ。


・・・あれ?、俺も含めるけどそんなんが暴れたりしたら相当ヤバいんじゃね?


きっと考えちゃいけないんだろうな、うん。


「・・・なるほど、じゃあ当面の目標は九条逸希を始末するって方向でいいか?」


「かまわないよ。僕は君の目標をサポートするだけさ」


爽やかに笑う青年を前にして俺の顔は苦虫を嚙み潰したように歪んだ。


協力関係にはあるが正直仲良くお友達するのは意地でもお断りしたい。


「・・・もうそろそろシャーネを呼び戻してやってもいいか?、おそらく心配してくれているはずだから」


「ああ、ごめんそこまで気が回らなかったよ」


黄木は机の上に置かれている銀色のベルを鳴らして使用人のような人を呼ぶ。


「先ほどのお客様をここに」


「かしこまりました」


そう言って頭を下げた使用人が部屋を出ていき、数分もせずにシャーネとともに戻ってきた。


「さて、先ほどはとんだ無礼をしてしまいました。謝罪させてくださいシャーネさん」


そんな風に頭を下げる黄木にシャーネは平然とした様子で「こちらこそ」と返した。


どうやら別室で落ち着きを取り戻したらしい。


「それから、ここからは少しビジネスの話になるんですが・・・そちらのギルドでどうかうちの依頼も受けてはもらえないでしょうか?」


突然の言葉にシャーネは一瞬だけ驚いたような素振り(仮面もあってめちゃくちゃわかりにくい)を見せるがすぐに返答をする。


「私の一存では決めかねますが資料さえいただければこちらで検討しましょう」


「助かります。ではすぐに作らせますね」


そう言うと黄木は部屋から出て資料とやらを作りに行った。


「・・・おい、何を話していた」


若干怒気を孕んでいるような声でそう言ったシャーネに俺は内心すごい焦りながらも冷静を装う。


「いや、ちょっとした昔話だ。俺はあんまり過去のことを他人に知られたくなくて。黄木は同郷の出身者なんだ」


噓は言ってない。まあ、物凄くぼかしたから真実でもないんだが。


まさか転生者で別の世界から来ましたなんて言えるわけがない。


だから昨日何者だって聞かれた時も咄嗟に「神に愛されてる」なんてめちゃくちゃなことを言ってしまったわけだし。


「・・・そうか、納得できないが飲み込んでおくことにしよう」


やはり教団という環境が故の事情なのか詮索はしてこない。かわりに不機嫌オーラがすごかった。


残念ながら俺には女の子の機嫌を取る方法も上司の機嫌を取る方法もまったく分からないので自然消滅を待つことにした。


「ここを出たらどこに行こうか」


話題転換ついでに聞くとシャーネは若干の不機嫌さを残しながらも答えてくれる。


「次は、そうだなこの近くに仮面屋がある。そこでおまえの分の仮面を作ってもらう」


行き先は決定。俺たちは戻ってきた黄木から資料とマスター・ウェニズマ宛ての手紙を受け取りオウキ商会を後にした。

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