21 たとえ異世界でも裏路地は危ない
オウキ商会を後にした俺たちはシャーネの言う仮面屋を目指して歩いていた。
「・・・まだ怒ってる?」
「もういい。怒ってないからそうビクビクするな」
俺そんなに挙動不審だったかな・・・
でもさぁ、このモードのシャーネさん怖いんだもの。しょうがないよね。
「わ、割と歩くんだな」
何とか言葉を探して話題を変える。
「同じ西側だが今から行く店は少し奥なんだ」
そう言いながらシャーネは細い裏路地に曲がる。
パッと見複雑そうに見えるがシャーネは一切の迷いも見せずどんどん奥へと進んでいく。
道は曲がれば曲がるほど狭くなり人の気配も消えていく。
・・・どこが少しなんだ?
「あとどれぐらいかかるんだ?」
「もう少しだ。少しは辛抱してくれ、子供じゃないんだから」
怒られてしまった。
話題はないし、薄暗くてなんか臭いし、嫌な空気が漂っている。
少なくともまともな人間が行くような場所じゃない気がする。
「・・・もしかしてその仮面屋の人って相当の変人だったりする?」
「よくわかったな。私もだいきら・・・結構苦手だ。この辺はそう言う奴が多い」
いや、言い直してもアウトですよ?。割とガチトーンで大嫌いって言おうとしてましたよね?
「なぁ、ここはデートなんかするとこじゃないぜぇ?」
鼻にかけたような男の声に俺たちは振り向く。
そこにはスキンヘッドに刺青、ボロボロシャツといかにもって人が立っていた。
「デート中に迷ったのか?、それともこのへんでヤる気だったかぁ?」
「なら俺たちも入れてくれよぉ、まあ、そこのひょろひょろのガキはいらねぇがなぁ」
そう言いながら前からも二人ほど同じような男たちが出てくる。後ろも三人に増えていた。
わかった、あかんやつや。
前の世界で一人で東京に行ったときに従姉から言われたことがあった。
『光夜、何があってもビルの裏にある路地の方とか行っちゃダメだよ。毎年たくさんの人が事件に巻き込まれたりしてるんだから』
・・・ごめん茜姉ちゃん、異世界にきてまでやらかしたバカな従弟を許してくれ。
「・・・だから嫌いなんだここは」
ボソッと下を向きながら心底疲れたような声で呟くシャーネを少しだけかわいそうだと思う。
言いぐさからして過去にも同じように絡まれたんだろう。
「さてと・・・嬢ちゃんは一緒に来てもらおうか」
「もちろん、隣のおめぇには死んでもらうけどなぁ!」
「ギャハハハハ!!」
男たちはそれぞれ獲物を取り出してこちらにじりじりと近づいてくる。
「どうする、シャーネ」
耳打ちするようにシャーネに問う。
「・・・これも経験だ。あとは任せた」
そう言ったシャーネは俺が反応する前に魔法で姿を消した。
「えっ、ちょ!!」
「ハハハ!!傑作だ!、彼女に見捨てられたぞこのガキ!!」
「ギャハハハハ!!、かわいそうだなぁ!」
汗が落ちる。もちろん俺のだ。
そこそこ強そうな五人のゴロツキに俺はこのクソ狭い路地で一人対処しなきやいけないわけだ。
「まあいいさ、女がいなくなったとこで同じよ。殺して金めのもん全部もらうだけさ」
「こいつ、冒険者っぽいしなぁ。そこそこ持ってそうだ」
「まずは冥土の土産いいもん見せてやるよ」
そう言ってスキンヘッドのボスっぽかった男が手を前にかざした。
俺はそのしぐさを知っている。
・・・攻撃魔法だ。
『ライトニング・ショット!』
手から放たれた光から高速で雷光の矢が俺めがけて走る。
ギリギリでかわして前にいる男たちを飛び越えるように飛んだ。ついでに空中で短剣と長剣を抜刀する。
空中で奴らに目を向けると後ろからまた別の光が見える。
『岩投』
その言葉とともに今度は結構な大きさの岩が飛んできた。
「っがあ!!」
空中にいたせいで直撃を食らう。長剣でなんとかダメージを少なくしたが衝撃自体は変わらず俺は地面に叩きつけられる。
思ったより痛い。やっぱりラノベのようにはいかないようだ。
「さっ、とどめを刺すか」
そんなことを言いながら一人が近づいてきた。
気配は一つ、こいつだけのようだ。
逆手持ちにされたナイフが俺の上で光った。
「おりゃあああああ!・・・あ?」
振り下ろされたナイフは俺に届かず止まる。代わりに俺の長剣が男の胸に突き刺さっていた。
「なっ!?、ガドがやられた!」
「油断してるからこんなことになるんだ。少しは学べ能無し」
過去にゲームで見た技。倒れたふりをしてとどめを刺しに来たバカを刺す殺し方。
俺のはなった言葉は自分でもビックリするほど冷たく、まさに殺人鬼のそれだ。
深淵はしっかりと仕事をしてくれているらしい。
とりあえず起き上がって血で少し汚れた長剣を抜く。男はそのまま浅い呼吸で崩れ落ちた。
「・・・テンプレ的にはさ、ここは殺さずに圧倒的な力見せて降伏させるのが異世界チート系のお約束なんだけど」
俺はゆっくりと左手に魔力を込める。
『イマジナリーソード』
俺の左手に握られた短剣に覆いかぶさるように青く薄い長剣が形を成す。
『ヒール』
体についていた傷が一瞬で消える。
「天性魔法が二つ!?、そんなバカな!?」
「大賢者でも成し遂げてない技術だぞ!?」
俺は二振りの剣を構えて息を吐いた。
「俺はそんな物語に出てくるような能天気お人好し野郎みたいにご都合主義では出来てないんでね」
『フレイム・ボール』
「ギャアアアァァァァ!?」
横で虫の息状態になっていた男を燃やす。ついでに左腕をまるっと深淵の炎で覆った。
「お、お前・・・一体何なんだよ!?」
「天性魔法を何個も使えるなんてありえねぇ!!」
騒ぐ男たちに俺は最後の一言を口にした。
「お前らみたいなくそ野郎、殺したって何とも思わないんだよ・・・なんせ主人公なんかじゃないんだからな」
感想だけ言うならば・・・人を切るのは案外難しかった。




