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無限死地獄  作者: 法将寿翔
ある男の話
22/24

21話 終わりの始まり

目覚めると、そこは見覚えのある、汚れた、散らかった部屋だった。

イチロウの部屋である。

彼が人を自分の部屋に入れることなど無いだろう。

地面に押し付けられたような重たい体で、自分がイチロウであることを悟った。


さて、自分が憑依したということはこの残忍な男に

死の運命が近づいているというわけなのだが、その詳細は知る由もない。


だが、このまま家に居ても死は刻々と近づいてくる。

僕は家を出ることにした。


外は暑かった。

日差しがじりじりと肌を刺し、多量の水分を含んだ熱気が抱きしめてくる。


行く当てはあまり無かった。

汗をダラダラ流しながら、僕は街を歩き回ることにした。





「中村が家を出ました」


家を出るイチロウ(もっとも中身はカズヒコであるが)を

確認した、ラフなファッションの男が電話を掛ける。


「分かった。今から行く。そのまま追え」


電話の相手は佐伯だった。

佐伯たちは、中村イチロウに辿り着いていた。

高村の犯行に関しては、単独で動いたに過ぎないと説得すると、

竹田はあっさりと納得した。

その後も佐伯はナカムライチロウという男が気になっていた。

それなりに長い付き合いだったからこそ分かっていた。

高村は嘘のつけない男だったのだ。

それはただ正直だからとかではなく、

単にそれほどの応用が利く頭がないというだけだったが。


佐伯は部下にカズヒコを尾行させた。

そもそも、イチロウの正体が分かってからは

数日間中村家を監視させていたのだ。

しかし、イチロウは相変わらず犯行時以外はほとんど家を出ないため、

監視の効果は全くない状態だった。


その中でやっとカズヒコが憑依した状態のイチロウが家から出てきた。


太った、遠目から見ても不潔なのが分かるような男だった。

イチロウの体から発せられているであろう

脂っぽい嫌な臭いに顔を歪ませながら佐伯の部下は後をつけていく。


ところが、入り組んだ路地に入ったとたん、部下はカズヒコの姿を見逃してしまった。

佐伯に付いてきて竹田組に入ったので、この辺りの土地勘はあまり無かったのだ。


「申し訳ありません!見失いました!」


「まあいい、家を出ているのは分かってるんだ。

お前は家の前で待っていろ」


佐伯は部下からの電話を切ると、

すぐに他の部下数人にカズヒコを探すよう指示を出した。


それから1時間ほど後に、ある部下からカズヒコを発見したという旨の知らせが入った。

大体の居場所が分かったところで佐伯が向かおうとすると、


「何やってんだ?」


竹田だった。


「ちょっと野暮用で…」


「嘘をつくな」


竹田はこういう時の勘は無駄に冴える。

佐伯は嫌々ながら正直に話すと、

「ほう。よくやったな。じゃあ俺が行こう。

悪いがお前の報酬は無しだ。俺の獲物なわけだからな」


ケチ野郎が、と佐伯は心の内で悪態をつきながらも、

落ち着いた表情ではい、と二つ返事をした。










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