表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無限死地獄  作者: 法将寿翔
ある男の話
23/24

22話 撃

僕はあの、僕が僕として死んだ、そして竹田の息子としても死んだ河原にいた。

今、僕は死の運命にある。

中村家で目覚め、この街を最後に一目見るつもりでぐるぐる回っていた。

最後なんて言っておいてまた死んでしまったらどうしようもないのだが。


この体は相当臭いらしく、すれ違う人がほとんど怪訝な顔をして顔をそむける。

僕には特にそうきつく感じられないのだが、

フグが自分の毒で死なない、というのと同じ話なのだろうか。


夏の日差しは変わらず照り続け、ずっと歩き続けていた僕は頭がくらくらしてきていた。

そこでちょうどあの河原まで辿り着き、橋の下で休憩しているわけなのだ。


ところで、さっきから後ろをうろうろしている男がいる。

存在には気づいていたが、触れると余計危ないかと思い、

何事もないように振る舞っていた。


きっとあの男が今の僕の死の運命に大きく関わっているのだろう。

しかし、ここでこうやってじっとしていても何もしてこないのを考えると、

何か指示を待っているのだろうか。


橋の下は日差しこそ避けられるが、熱気は変わらず僕を纏っている。

しかし、僕の最終手段はあまり人の多いところでは使えない。

僕の命を狙いに来る人間がいるとするとこういう場所の方が狙いやすいのだろうが、

ひょっとすると予定されている死因というのは殺害によるものではないのか?


そう思っていると、明らかに怪しい黒塗りの車が現れた。

1人のガラの悪い男が運転席を降り、後部座席を開けると、

一人の男が降りてきた。

黒いスーツを身にまといながらも所作からだらしなさが溢れ出るような男だ。

やや遠目で顔がはっきり見えるわけではないが、

やはりあれは地元のヤクザの倅、竹田だ。


なるほど、自分の息子を殺したイチロウの正体を突き止め、命を狙っていたのか。


竹田はじりじりとこちらに近寄ってくる。

居場所は既にバレている。

潔く出ていくことにした。


「よう、俺のガキを殺したクソ野郎」


「あの時とはずいぶん態度が違うな、クソ親父」


竹田は、奴の息子としてイチロウに殺された時とは打って変わって

強気な態度だった。その原因は一体なぜだ。

そう考えていると、竹田は懐から一丁の拳銃を向けてきた。


「なるほどな。拳銃に勝るものなしってか」


「ああ、そうだよ。お前、あの時と雰囲気変わってないか?」


中々、観察眼があるように思えた。

事実、あの時とはイチロウの中身は違う。


拳銃を向けられたまま対峙している。

他の組員は拳銃を持っていないのか、ただ立って僕らを囲んでいるだけだ。


すると、またも黒塗りの車が土手に止まった。

そして、長い棒のようなものを持った男が駆け下りてきた。

竹田のそばまで来ると、手にしている物の正体が分かった。日本刀だった。


「何で来たんだ、佐伯」


「組長の手を汚させるわけにはいきません」


「あ?いいんだよ。俺自体久々に殺しを楽しみてえんだ」


そう言うと、再び銃を僕に向ける。


ガチャリ、という音を立てて安全装置が外され、

指が改めてトリガーにかけられる。


こうなったら仕方ないと手をポケットに伸ばそうかと思った瞬間、

佐伯と呼ばれた男が腰元の日本刀を抜き、竹田を後ろから突き刺した。


「すいませんね組長。ここで死んでもらいます」


「俺までも裏切るのか、佐伯……」


竹田はその場に崩れ落ちた。

周りの組員も慌てる様子がないのを見ると、これは予定調和だったとでもいうのだろうか。

竹田から流れる血が辺りの地面を赤黒く染めていく。


佐伯が竹田の体から日本刀を抜き取ると、水鉄砲のように血が噴き出た。

そしてそのまま、日本刀の先端を僕に向けた。


「お前のやり口は知っている、中村イチロウ。

デカいナイフで獲物をザクザクザクって手口だろう。

何で自分が知られてるんだって思うよな?これが裏社会の力だ」


裏社会なんかよりもっと恐ろしいものの力で

この中村イチロウの手口を知ったのだが、それを言うとややこしくなりそうだ。


「裏社会ってのは恐ろしいね。使い捨てられた高村も泣いてるだろうよ」


「お前!?どこでそれを知った!?」


佐伯が焦りだしたのが手に取るように分かった。

しかし、日本刀をちらりと見ると、再びクククと笑い出す。


「まあ、目撃者のあんたには死んでもらう。それだけだ」


不気味な笑顔を浮かべた佐伯が日本刀を手ににじり寄ってくる。

僕がナイフで向かってくることを想定しているのか、余裕が感ぜられた。


「済まないな、こんな人間でも今は死なせられないんだ」


「あ?」


静かな河原に、乾いた破裂音が響いた。

僕の拳銃から。


民間の異常殺人者が拳銃を持っているなど想定外だったようで、

佐伯は腹から流れる血を見て信じられないというような表情をしている。


僕が高村に憑依したとき、持っていた2丁の拳銃の片方を駅のロッカーに隠しておいて、

それをさっき取ってきていた。


「うわあぁぁーーーッ!!」


佐伯は錯乱した様子で走って向かってくるが、

僕はなぜか冷静に銃の引き金を2度、3度と引く。

佐伯の動きは完全に止まり、苦悶の表情を浮かべゆっくりと倒れた。


「消えろ」


そのまま銃を他の組員に向ける。

全員を撃つ分の弾など残っていないのだが、

怯えた組員たちは一目散に逃げ去っていく。


河原には僕と、2人の死んだヤクザだけが残っていた。


生き延びることが出来た……のだろうか?




するといきなり、体が浮かぶような感覚がした。

目線の高さもだんだん上がっていく。


足元を見ると、棒立ちのイチロウがいた。

ということは、僕はイチロウの体から抜け出した?


3mほどのところで僕の体は止まった。

イチロウは意識があるようで、

いきなり河原にいることに困惑してか辺りを見回している。


聞こえるかは分からないが、僕はイチロウに語り掛けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ