15話 君にも死亡フラグを
夜見カズヒコが合計12回目の死を迎えた翌日、ある組事務所。
「俺のせがれが昨日、あのいかれた殺人鬼にやられたのは知っているだろう。
俺はあいつの顔を見た。お前らには、敵討ちをしてほしい。
ぶっ殺せ。痛めつけてからでもいい。とにかく殺せ。
このままじゃうちの組は舐められる。
成功した奴には1本やろう。シャバに戻ってきたら、幹部にしてやる。
それから、高村の件も忘れるな。あいつは取引でこの街に来ているはずだ。叩け」
昨日カズヒコが憑依していた小学生の、
地元のヤクザの父が、組員の前でそう告げた。
全国的な組織に比べれば勢力はしょぼくれたものだが、
人を傷つけるのにためらいのない男たちが揃っている。
しかし、そんな組長に比べて組員はそう乗り気ではなかった。
「一人殺って1千万ってなあ。
ここで幹部になったってそもそも大した組じゃないんだし」
組員たちは口々に不満を言うが、
親の命令に従うことは、この社会では許されていない。
組員たちはそれから調査を進めていったが、
基本的に家から出歩くことのないイチロウに行きつくのは
難しいことだった。
それは警察でも同じことだった。
地元の人間の線が強いということまでは辿り着いていたが、
いくら聞き込みを進めてもイチロウに行きあたることはない。
捜査はだんだん迷路に入りこんで、
ついには保護者達が仕組んだ連続保険金殺人という説まで
浮かび上がったほどだ。
一方イチロウも一度に殺しすぎたことを反省し、
しばらく家に引きこもりっぱなしになった。
警察が聞き込みのため家を訪れることもあった。
もちろんイチロウは戸籍上この家に存在しているので、
イチロウもまた広い範囲の中での被疑者の1人なのだが、
父のトシオはイチロウが一日中家にいるものだと信じているので、
アリバイはあることになっていた。
捜査も敵討ちも滞っていた。
一方地獄。
「僕は、何度死ねば良いのでしょうか」
「がんばってください、としか言いようがないんですよね」
「せめて、イチロウに殺される運命は避けたいんです」
「別の人に殺されるのなら、良いのですか?」
「よくはないですけど、マシってだけですね……」
「そろそろ次が始まります」
「もうですか」
無限死地獄に飽き飽きした僕は、露骨に大きなため息をつく。
「次もまた、あなたの街です。
時間と出来事は、みんなリンクしています。頑張ってください」
シンプルな一言だったが、大きなアドバイスのように思えた。
僕がここまで受けた無限死地獄での死は、繋がっている?
今はただ、コウジの死を悲しむよりも、
僕とコウジを殺したイチロウへの復讐心で動いている。
だからこそ、死んでも心は死なず、またこうやって動き出している。
次だ、次こそイチロウを殺し、生き残り、
無限死地獄の罰を奴に背負わせる。
カズヒコはおどろおどろしいやる気に満ち溢れていた。
ヤクザの父は、面子を守るため、大規模な復讐を図っていた。
今、イチロウにも負の力が迫っている。




