不思議な雑貨屋の店員さん(一章完)
「そんなに見ててくれてありがとう。」
「いやっ・・これは違う。店主として。そう。それだけだ。」
モジモジゴソゴソ落ち着かない。
「そうなの?」
「いいから!それより、これからどうするんだ?」
「・・・・わからないわ。」
正直な言葉。
「貴族社会では終わっただろ。」
「実家も頼れないだろう。」
追い討ちをかける言葉。
「仕事も・・ね。」
セイラは素直に、その言葉を受けた。
魔術書の写本なんて貴族令嬢という肩書きがあってこそだ。
「じゃあ、雇ってやる。」
「えっ?」
「俺の店。」
「何?」
「助手がいる。」
「・・・そう?」
「客が増えて面倒なんだ!」
そうだろうか?
なんでも魔術で解決してしまうのに。
「私で良いの?」
「あんたが良い。」
「でも。」
自信なさげなセイラに
「あんた。綺麗な文字書く。計算も。あと倹約家だ。」
「それが理由になるの?」
「重要だ。店の物を使い込まれたら叶わない。」
そんな事言って、品物は客が来なければ出ないのに。
「でも、魔術は専門じゃ無いわ。」
「帳簿がつけられるだろ?」
「補佐程度ね。」
セイラの取った授業はすべて中途半端。
一人で全部こなすことはできない。
「補佐が欲しいんだ。」
「そう。」
その言葉は何より欲しいものだった。
それでも卑下する言葉が出て来る。
「私。訳ありよ。」
「問題ない。」
「男性と一つ屋根の下に住んでいたし。」
「アパートだって同じだろ。」
「でも・・・。」
「いいんだ。俺が良いと言っている。あんたが良いって言っている。
俺は全部見ていた。あんたが間違ってないのを俺が知っているんだから。それでいいだろ!」
ぶっきらぼうな言い方。
それでもセイラの胸が温かくなった。
ずっと言われていたの。
努力が足らない。
価値がない。
魅力がない。
相応しくない。
どうして・・。
もっとできないのかしら?
優しい言葉でセイラを攻撃してきた人たち。
でも。
「これ以上、ゴチャゴチャ言うな。」
乱暴な言葉が、救いになった。
セイラは小さく息を吐く。
そして、
「宜しくお願いします。」
頭を深々と下げた。
アステルは驚いた顔をした。
「即決するとは思わなかった。」
セイラは微笑む。
「だって、チャンスを逃したく無いんですもの。」
その日から
王都の裏通り。
不思議な雑貨屋に、店員が一人増えた。
地味で、目立たない。
それでいて、温かな心遣いをする店員が。
そこには、天才と呼ばれる店長がいて。
とてもとても気難しいのだけども、店員さんが呼ぶ時だけは概ね言うことを聞くらしい。
これも。
伝聞なのだけども。
これで第一章完です。




