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獣人を拾った魔法使いは、どうやら密売組織の摘発にも巻き込まれたようです。  作者: 廿楽 亜久


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01

 クロルが復帰してから、数日。

 グランは、相変わらず、同じ店で働いていた。


「いやぁ! グランが残ってくれて嬉しいよ!」


 背中を叩かれながら、グランは何ともくぐもった声を上げるしかなかった。


 あの魔獣を倒した後、ルミアは魔獣に襲われたことも、倒したことも、店どころか警備隊にすら報告しなかった。

 報告すれば、自らを魔獣を倒せる存在であることを証明してしまい、結果的にルミアが魔法使いであることが露見する可能性が高くなる。


「魔獣なんて、死んでれば獣と変わらないんだし、適当に森の隠しておけば大丈夫だって」


 魔法使いが、すでに過去の遺物となっている現代において、現存する魔法使いは、奇特な目で見られる。

 ルミアも、それを避けたいのだろう。


「……自分が、遺管から連絡しておきます」


 とはいえ、さすがに魔獣の討伐に関しては、魔法遺物管理機関に連絡しておきたい。

 グランがそう告げれば、ルミアは少しだけ嫌そうな表情をしていたが、ルミアのことを伏せることを条件に、納得してくれた。


 それから警備隊にも連絡が回り、今ではすっかり魔獣の脅威は去ったと、町にも安堵の空気が漂っている。

 この店も、クロルの復帰のこともあり、少し浮かれている様子だった。


「でも、落石で壊れた荷車を弁償するって……律儀なやつだなぁ」

「えぇ……まぁ、仕方ないとはいえ、多少は」


 坑道への道は、落石事故もそれなりにある。

 だからこそ、ルミアも魔獣に壊された荷車を、落石で壊れたと嘘の報告をしていた。


 簡単に信じてもらえるか不安だったグランの心配を他所に、店主たちは案外簡単に信じて、心配までされてしまった。

 ほんの少し、心苦しさを感じながらも、そっとルミアの方へ目をやれば、ルミアは特に気にした様子もなく、別の仕事を片付けているようだ。


「……コレ、か?」

「?」


 小声で、小指を立てるクロルに、グランが首を傾げれば、クロルは慌てたように店主に振り返ると、やたらと冷たい視線を向けられた。


「今時って、これ通じないのか!?」

「違う町の連中に通じないってだけじゃないか?」


 クロルの行動の意味は、よくわからないが、あまり良い意味ではなさそうだと、グランは小さく息をつくと、振り返った。


「ルミアさん。重い荷物は、自分が持ちますよ」

「え、いや、別に……」

「そうだぞ。腰をやってからじゃ、遅いんだからな!」


 コメントに困るクロルの自虐ネタに、グランも逃げるようにルミアの元へ近づくと、その荷物を抱えあげる。


「本当に平気なんだけどな……」

「いいですから」


 ため息をつくルミアは、もうひとつの小さな荷物を持ち上げると、ふと思い出したように、紙束をグランの荷物の上に乗せた。


「この魔法、便利ですね」


 中身の量と一致しない軽さの荷物を持ち上げながら、脚立の上で荷物を受け取るルミアに目をやる。


「でしょー浮遊魔法の応用でね。単純に浮かせる以外にも、手に触れた物を軽くするとか、意外に汎用性が高いのよ」


 以前から、細腕の女の人にしては、荷運びが速いことに疑問はあったが、力と体力があるのかと思い込んでいた。

 おそらく、他の従業員たちも、グランと同じことを思っているのだろう。

 それが魔法などとは、誰も想像しないだろう。


「あと使えるのは、収納魔法かな。ポケットが、1.5倍くらいの容量になる」

「なんか微妙ですね……」


 容量が増えるのは助かるが、『すごい』と褒めにくいラインだ。


 しかし、ふとグランの頭に過ったのは、魔獣と戦った時の杖だ。

 小さな杖ではなく、両手で使うタイプの杖を、ルミアは握っていたはず。

 グランのように、護身用の刀を持ち歩いているわけではないので、あの杖はどこからか取り出したことになる。

 その収納魔法だろうか。


「あぁ、これ?」


 グランの疑問に答えるように、ルミアの手に突然現れた魔法の杖。


「これも収納魔法だよ」

「でも、ポケットには入りませんよね?」

「ふっふっふっ……さて、どこの収納魔法でしょうねぇ?」


 悪戯でもするように、グランに問いかけるルミアに、グランも顎に手をやり、唸り声を上げる。

 作業のために、ポーチこそ腰についているルミアだが、その程度でこの杖のサイズは入らない。

 他に、ポケットがあるかと言えば、入りそうな大きさのものは、どこにもない。


「真面目なワンチャンには難しいかな?」

「……降参です。どこにしまっているんですか?」

「服。というか、袖」

「……はい?」


 『袖』ともう一度、答えるルミアに、グランもつい眉を潜めてしまう。


 確かに、袖にも物を詰め込めるといえば、詰め込める。

 本来、そういった用途ではないが、手品などでよく使われる場所であることに違いはない。


「結構、魔法の判定っていい加減だからね」


 いじわるにも楽しそうに笑うルミアに、グランも少し喉の奥を鳴らし、


「ルミアさんみたいですね」


 同じように言い返してみれば、そっと杖がこちらに向けられた。

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