とある森のくまさんが死んだら
俺たちは、哀しみに揺れている。
ただ生きているだけで腫れ物、まるで犯罪者のように扱われて、孤独な日々を送る俺たち。
住処は森と言って差し支えのない森羅万象なネットだ。
ここは誰かを殺せてしまえる、そんな場所。
故に俺たちは"自由な平和"を求めて、悪を殺しに回る、そんな殺人鬼になってやる。
──そうすれば平和を、仲間のために作ることができるのだから。
俺の、”僕の”生まれ育った環境は本当に地獄だ。もはや魔界というべきかもしれない。──
──僕はただ独り、森に帰っていた。
木々が揺れて、静かな匂いの風が頬を撫でる。
”俺は”ふと夕暮れを見上げると、文字通り燃えていた。
──「…腹が空いた。」そう呟いて。
”俺は”盗んできた塩むすびと漬物を食らった。
──「……疲れたな。」
これだけじゃ足りない。…けれど、文句は言っていられない。明日も食えるかどうかもわからないのだから。
──あれは、鶏だろうか。嗚呼、可哀想に。今から食われるのだろう。人間が檻から何羽も車に乗せてどこかへ向かっている。
嗚呼、可哀想に。数多の鶏たちが次々へと殺されている。あれが人間にとって正しい行動とはいえ、あまりにも残酷である。
──残酷。そういえば、僕の妻子まだ生きているだろうか?それとももう殺されただろうか?
…本当になぜ、僕だけが生きているのだろう。新たに妻を作ろうにも周りには誰もいない。このまま僕らは溶けるように朽ちていき絶滅でもするのだろうか。
嗚呼、そういえば、綾子から手紙が来ていた。…もう一週間は経っているがまだ開いていない。このままでは読めなくなってしまうかもしれない。それは嫌だ。だから、あまり気は進まないがせめても、読むことにしよう。
”あなたへ、まずは、ごめんなさい。
あの日、あまりあなたとお話ができず、切り裂くように別れてしまったこと。私の意思ではない結婚とはいえ、あなたを深く傷つけてしまった。あんなに優しくて、愛しいあなたを。
…だから、今からそっちに行くね。多分手紙が届く頃に着くと思う。そこでいっぱい話しましょ。 綾子より”
……まて、綾子に何があった?もう届いてから一週間は経っているのだぞ?なぜ綾子は俺のところに来ていない?まさか、行くことを拒否されたのか?あるいは──
すると、同じ住所からまた新たに手紙が届いた。俺は一瞬安堵してから、次第に視界がくらみ始めた。この手紙は綾子からではない。龍之介という名の綾子の夫からだ。内容があまりにもド直球すぎて、俺は今、もとより出せなかった声が、余計に出ない。
”君が、かつて綾子と交際していたという者だね。
ここで君にとっては悲報を二つ記しておく。
心待ちにしていなさい。
一、綾子は死んだ。
恐らく、あの地震で何らかに巻き込まれた。
二、私は君を殺しに向かう。
綾子が亡くなったのは君との関係性が問題だ。
無断で外出した彼女が君に会いに行こうとしていた。そのせいで彼女は巻き込まれた。
君が殺したも同然だ。故に、私が報復を行う。
大人しく持して待て。”
…最悪だ。……最悪だ。死んだ、。?綾子が?俺のせいで?
俺は一つ、深く深呼吸をして、俺はナイフを手に取った。自分の手首に当てながら。
「痛い。」血が出始めている。どうする?死ぬか?あいつに殺されるより自死したほうが何倍もマシではないか?……というか、なぜ俺は生きているのだろう。一体何のために生きている。愛人は奪われて、挙句の果てに死んだ。
我が国は攻撃を受けていないが、世界では戦争をしている。…本当に何のためにこんなにも必死に生きていたんだ。怖かったのか?だとすればそんな恐怖はもう俺にはないぞ。ただずっと、綾子と別れてから手紙を守るようにして過ごしていた。一縷の望みにかけて。されどもう、失望した。
恐らく奴は明日来る。であれば…。
──いや待て、希望はなくとも、一縷の望みならあるのではないか。そうして僕は重い腰を上げた。
翌日、龍之介は死んだ。俺が殺した。紛れもなく、憤怒と哀愁と憎しみに任せて、釘刺しにした。
気分は最高だ。俺を罵り、殺そうとしてきた奴を返り討ちにしてやった。こいつは上級国民なのだ。携帯しているものだけでも結構な金品を奪うことに成功した。…だが、俺の望みはそうじゃない。
望むことは自由な平和と、快楽だ。平和の実現のために、これから上級国民を殺してまわろう。
同時に殺す快感を味わいたい。この哀愁を、憤怒を、憎しみを、晴らすのに最適だ。
──そうだ、奴らがいなくなれば平和になる。その平和を、仲間のために作ることが僕の生きる理由だ。
しかし、悲劇は起こった。
僕は腹が減っていた。丁度ふもとに、肉がある。誰かの食べ残しだろうか?なんて贅沢なやつだ。でもいい。そのおかげで僕は一仕事の前に腹ごしらえができるのだから。
だがその時、「ガタンっ!」という聞き覚えのある音がした。そして続け様に、「…バンッ!」という音と共に、僕は突然の眠気に襲われた。しばらくこの檻の中奮闘したが、そのまま瞼を閉じた。意識が落ちる前、かすかに人間の声がした、
「…よし。──おーい! こっちの”熊”は眠らせたぞ!」
「了解した。こっちも出ていたから対処は完了したってさ。」
すると、大地が大きく揺れ始めた。なぜか突然に雨も振り始めた。最悪の組み合わせ。
まるで、哀しみを全身で訴えかけるかのような、そんな地震が俺の麓を襲った。
「…チッ。運が悪い。…にしても最近の多い、、な、。」
俺はこの時、目を見開かせながら、動けなかった。物理的にも、精神的にも。終わりなんだと、綾子のように、いや、これは綾子の哀しみが引き起こしたのだろうか。俺を天へと誘い込むための。…そんな気がした。
そうして俺は、、家屋に押しつぶされた。
動けない。冷たい。寒い。だがその時、ふと静かな哀愁漂う風が頬を撫でた。何んだか、暖かった。苦しいはずなのに、なぜか笑みがこぼれた。
「…俺を、慰めてくれているのか?」
お読みくださった方、ありがとうございます!
今回は人間の"俺"と熊の"僕"を照らし合わせて、"自分たちの平和"のために奮闘する様を描いてみました。結局はどちらも抗えなかったわけですが、真っ当に生きている"私たち"からしたら"いなくなってほしい対象"ですよね。
残酷だけど、"私たち"は救われています。
これを読んで、どう思いましたか?
良かったたら反応等、お願いしますっ!
続きは私の気分次第です。
それではまたっ!




