1万6000年前の君へ
「おい!そっちいったぞ!」
「うぅっ!てやっ!」
沼地の激しい戦闘だった。大きな牙が生えた象を、上裸の漢たちが泥濘に誘い込み、石槍や石を投げていた。
「帰ってきたよ!」
「まぁ...今日はどうかしら...」
「おーい!みんな〜!」
そこには、大人数の大人がやっと持ち上げられる牙付きの象が引きずられながらやってきた。「今日はたっくさん食べれるぞ〜!」
「やったぁ!お父さんありがとう!」
そんな和気あいあいとした会話を眺めながら、私と同じ日に生まれた男の子と木の実を取っていた。
「最近、寒くなったね。」
「そうだね...」
「そっちどう?採れる?」
「採れたよ!ほら!」カゴいっぱいの木の実を掲げる。
そう。ここは縄文時代。私?私は...未来の...私。この物語は私の物語!
それじゃあ。続きを。
男の子は笑い「かわいいね」
「へっ?」
「あぁごめん、つい。」
「なにそれ...」私は頬を赤らめてそっぽ向いた。
思い返してみると、これが私の初恋だった。
数日後、男の子が狩りに出ることになった。
私のムラは人数は多いけど、女の子が多いから若い男の子も狩りに出かける。
今日は猪を狩るらしい。
漢たちが出かけて行った。
安全を願いながら、私は縄をなう。
大勢の上裸の男が帰ってきた。4匹の猪が担がれてきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
男の子は笑いながら言う。
狩りは成功。狩られた猪のうち1匹は男の子が仕留めたらしい。さすが。
かっこいいし、狩りもできるなんて。素晴らしい。
明日も狩りに出かけるらしい。
翌朝、朝早くから出かけたようで遠くから微かに雄叫びが聞こえる。
上裸の漢たちが帰ってきて、こう告げた。
「1人...死んだ。」
それほど死と隣り合わせなのだから、仕方ない。
それで、誰が死んだ?
見渡してみると、あの男の子がいない。
「え?」
思考が止まった。
「あの子は?」
「...死んだ。」
そんなわけない。そんなわけが。なぜ。なんで。なんで。なんで。なんでなんでなんでなんでなんで。
狂った。
ただ狂乱に。
泣き。
叫ぶ。
これが人間のあるべき姿だった。
なぜあの子が死ななきゃいけない。
ただ...
ありがとう。
私を愛してくれて。
ありがとう。
またね。




