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第99話 物語のはじまり○

 臙脂(えんじ)色のレザーアーマーに自動修復機能を持つ丈夫な魔法鉄の剣、その男の生命線、メインウェポンだ。



「ディエラ! 精霊よ照らせ!」


 白い光の玉が現れ男に追随するように宙に浮かびながら共に通路を進んでいく。


 コツコツと足音を立て進んでいく、仄かに青い暗がりを白く照らしながら。


「いたずらのバッグはまだまだ余裕はあるな。帰るまでがダイブだが……まだまだ遊び足りないよなァ」


 男は腰に着けている小さなウェストポーチをポンと確かめるように左手で叩いた。


 鉄の音と足音が混ざり合って響く、照らし出された敵影。鉄の鎧と、槍、緑の体表にギロッとした黄色く鋭い目。



 シィィィィィ、とイヤな静かな鳴き声が男の耳を通る。




「この狭路(きょうろ)でリザードマン2体か……やるぞ、ディエラ!!」


 槍を構えたリザードマンたちに男は駆けて接近していく。


「ディエラ、精霊よ飛び込め!!」


 左奥のリザードマン目掛け男に追随していた光の玉が速度を上げ突っ込んでいった。


 光の玉はリザードマンのその緑色の蛇のような顔に突っ込み勢いよくぶつかった。


 白い光はリザードマンの顔をその熱量で焼き、頭を手で抑えもだえるほどの火傷、ダメージを与え怯ませた。



「よしディエラ、1体1ならァア!!」


 前方のリザードマンに肉薄した男。リザードマンは槍を力任せに突き迫りくる人間を迎撃する。


「この狭路なら剣だって!! ダアああああああ」


 槍の一突きを読み避け狙い澄ます時間をつくった男の素早く荒い剣刃がその長いリザードマンの首を両断した。


 すぐさま、後方の態勢を立て直し槍を突いて来たリザードマンの両手を走り潜り込みながら切断し、無防備になった敵の首を一閃した。



 男の行手を阻んだモンスターたちは光の粒へと還っていった。



「ハァハァハァハァ……ディエラ上手くいった……ハハハハハッ」


 光の玉は笑う男の手のひらの上を踊るように舞い飛んだ。



「まだまだこれからだディエラ。俺はもっと潜ってみせるゾ。神の果実に届くくらいに! この呪いも、あの人に教えてもらったこの剣も」


 剣をビュッと素振りし一連の動作を終え鞘にしまった。何かの感覚を確かめ整えるように。





 ダンジョンの中、男は暗がりの奥へとその光とともに潜っていった。




 これはアイドルではなく最深の王国フカミッドラルドで生きる、ある青年の物語。



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