-9-A-街道のライトアタック
屋敷を出た俺たちは、王都からほど近い街道で馬足を止めた。
「お尻いたーい!」
俺の前でハンドルに掴まる息子は尻を痛めた様子だった。馬に乗るなら誰もが通る道ってやつだな
「慣れれば痛くも無くなるさ。あと少しすれば見離しのいい丘に着くんだが、、、少し休憩するか、」
「えーいいよ!僕大丈夫だもん!」
強がってるのか気を使ってるのか、、、どちらにしろ休ませた方がいいだろう。
「まぁそう言うな、、、護衛!この辺りで少し休む。周辺の警戒を頼む」
「「了解しました!」」
俺は前方と後方、二方向の騎士達に向けて声をかけると息子に自分の尻尾を巻きつけた。
「クルト、降ろすから俺の尻尾に掴まってろ」
「むー、、わかったぁ」
少しムクれてしまったが本当は尻が痛いのだろう、早々に俺の尻尾に掴まって来た。
「ありがとー」
ゆっくりと息子を馬から下ろし、俺も馬から飛び降りた。
ムクれながらも礼を言うあたり、いい奴だ。
「よし、クルト。あそこの木影で休むぞ」
「はーい」
街道の端に立つ木に背を預けると胡座をかいた脚上に息子を座らせて一息つく、
「どうだクルト、馬はいいだろう?」
「うん!今度はリューにも乗ってみたいや!」
「ハッハッハ、気が早いな。あれは自分より強い奴しか乗せてくれないんだ。しっかり鍛えないとすぐ振り落とされるぞ?」
そう、魔馬ならまだ調教次第でどうにでもなるが騎竜になると話は別だ。あいつ等はどんな調教でも絶対に自分以下の相手は乗せないからな。
「えー、、、僕じゃ勝てないの?」
「ハハッ、当たり前だろ。俺だって乗れる様になったのはお前が産まれてすぐだったんだ、直ぐにとはいかないさ」
「うーん、世知辛いや」
何か、、、こう、感想がおかしな気がするが目を瞑ろう...
俺は魔術で異空間から水魔筒を取り出すとカップに水を入れて息子に手渡した。
「まぁこれでも飲んでろ。父さんはちょっとションベンだ」
「え?、、、うん!わかった」
立ち上がって水を飲む息子の頭に手をトシトシ乗せた後、丁度いい茂みを探して街道を外れた。
よし、あそこにするか、
丁度俺の腰から下が隠れる程度の茂みを見つけ、ベルトを緩めながら茂みに歩み寄った。
ズボンから逸物を取り出し、発射する...
ふぅ〜、、、こうして外でする立ちションは幾つになっても辞められないな、
前世の俺も夜にエロ本を買った帰りは、ワクワク気味のムスコを取り出して茂みに栄養を与えたものである、
そうして栄養が全て出終わるのを待っていると茂みを挟んだ正面から殺気を感じた。
閉じていた目をカッと開ける、風切り音と共に俺の顔面へと矢が迫って来ていた。
「!?!」
咄嗟に顔を逸らす、
一秒もしない内に矢は顔スレスレを横切ると耳を穿ちながら後ろの地面に突き立った。
くそっ、やられた!
失った耳から送られてくる激痛に顔を歪めながら息を吸い込む...
「クルト!逃げろ!」
慌てて背後の気配を探り、後方へ居るであろう息子に声をかけた。
「あ、、、へ?」
一瞬遅れて後ろからは戸惑った気配、
「チッ」
舌打ちをしながら、俺は前方から目を離さず、息子の方へバックステップで向かう。
その間に2度、今度は背後にいる息子にも射線を合わせて矢が俺の身に迫って来た。一つは腕で叩き落とし、もう一つは止むを得ず左腕で防いだ。
「グッ...」
なかなか汚い手を使ってくれる...
俺は息子の方へたどり着くと矢の刺さった方の腕で息子を脇に抱える。
「と、父さん!腕が!」
「いい!下を噛む、口を閉じてろ!」
「は、はい」
言って、俺は魔術で先ほどの水筒と同じ様に異空間から盾を取り出して再度、迫り来る矢や魔術弾を叩き落とした。
このままでは埒があかない、、俺は矢のくる方向を挟み、先程まで息子と背を預けていた木に魔力を流しこみ、盾にする。
畜生!騎士達はどうしたッ!
「護衛ぇぇぇ!どこにいる!敵襲だぞ!!」
苛立ちながら更に集中し、周囲の気配を探り、周りを見渡す、
道の真ん中で2人、矢を頭に突き立ててくだばっていた...
殺られたのかよ...
襲撃者の気配は読めない、かなり上手く隠匿してやがる...
数すらも得体の知れない敵に心底恐怖しながら、俺は既に幾らか治りかけている耳に魔力を集中させる。
「クルト!そっちの腕に刺さった矢を抜け!」
「え、でも....」
「いいからやれ!」
「わ、わかった」
渋々といった様子で俺の腕に刺さった矢に手を掛け力を込める息子、俺は腕の力を抜く。
ブシュッっと音を立てて鮮血が飛び散り、早々と矢が抜けた。続けて腕にも魔力を流し、傷の治りを早めた。
「ヒッ...」
息子には刺激が強かった様だ、俺は剣を持つ方の袖で息子の顔に飛び散った血を拭うと礼を言う
「、、、助かった、もう大丈夫だ。後はしっかり掴まっってろ」
「うん」
息子は小さく頷くと、まだ短い自前の尻尾を俺の腕に巻きつける。
街道の端で待たせていた馬は何処かへ消えた。息子を抱えて王都まで逃げることも出来ないだろう、襲撃者を倒すしか生き残る道は無さそうだ。
まぁいいさ、傷も治って息子も無事。これで心置きなく戦えるってもんだ。
改めて、、、木の奥、茂みの奥へ意識を集中させる。
先程から引っ切り無しに放たれていた矢が俺たちが身を木に隠したせいか、なりを潜めている
どっち道このままでは回り込まれてまた撃たれる。
俺は不得意な幻影の魔術で俺たちの幻を作ると木の陰から飛び出させる。
瞬間、狙いすましたかの様に正確な射撃が、俺の幻の頭に突き立った。
発射位置は先程まで放って来た位置より随分と離れている様だ。
俺はその地点に木の端から視線を送ると大雑把に幾らか石を投げてみた。
手応えはない物の、だいぶ近ずいて来ていた様でガサゴソと茂みが揺れる。
そこへ俺は本丸の投げやりを取り出し、投げる。
グエッっと声がして茂みから迷彩柄の防具で身を包む男が前のめりに倒れこんだ。
まずは一人、
俺は仲間が一人殺られて幾ばくか強い殺気が放たれてくる様になった場所へ走り出す。
「オラァァァァァァ!」
今度は大剣、力の限り水平に凪げば樹々と一緒に肉を断つ感触が2つ、腕に伝わった。
腕の中では「うわぁ...」と、、教育上よろしくない物を見てしまった息子が口に手を添えていた。
三人、
そうして遠距離では仕留めれぬと思ったのか、、、3人の迷彩柄が三方向から剣を手に、一気に飛び出し迫ってきた。
予想以上に早い!懐に入り込まれそうになった俺は大剣を捨てる。
「ふん!」
俺は正面から向かってくる男の剣を横っ腹から蹴り、左の迷彩柄の胸に突き刺す。
「うがぁ!?」
右からの剣はそのまま刃を右手で掴み、奪い取った。
続けて残った2人の迷彩の首を両の脚で挟み込み、へし折る。
バキャリ、、、と、そのまま脱力する迷彩の体をクッションに着地した。
六人、
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一旦、静かになった街道に俺の呼吸音だけが聞こえた...
だがその沈黙を破る様にして、パチパチと手を打ち合わせる音、
「ヒューヒュー!やるねぇ、ヘイスティングス。まさかここまでとは、、、、、思ってなかったわよぉ?」
そして此方をあざ笑うかの様な女の声が聞こえてきた....




