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第8話(3) ペロキン炎上

 参ったな。11階層でペロキンの野郎を見つけたのはいいけど。

 タイミング悪く、シンといっしょの時に遭遇しちまった。

 俺はこっそり一人でペロキンをぶちのめそうと思っていたのに。


 ペロキンは、お供みたいな探索者を二人連れてきていた。でも、こいつらは町でシンを襲った奴ではない。

 筑地が言っていたように、ペロキンはダンジョン内ではふだんのツレとは違うプロの探索者を雇っているようだ。

 ステータスを見れない俺には、ペロキンのパーティーメンバーの実力はよくわからないけど、ペロキンふくめて3人とも装備はたいしたことがない。

 こんなんで100階層クリアなんてできるのか?

 たぶん、ペロキンの100階層クリアってのは嘘なんだろうな。


 なにはともあれ、ペロキンのお供は、さっきからコソコソふたりで内緒話をしている。


「やばくないか。あいつら、たぶん裏ダンの……」

「だよな。まずいよな。シテンノーは都市伝説であってほしいって願ってたんだけどな。トラップを踏んで破壊なんて、聞いたことねーよ」

「神様。俺はまだ死にたくない……」

「隙を見て逃げよう。それしかない」

「おう。……お願いです。神様。生きて帰れたら俺は心をいれかえてボランティアに生きます。だからお願いですから……」


 何にびびってんのか知らねーけど、半泣きの声でそんなことをしゃべったり祈ったりしているから、こいつらはほっとけば勝手に帰っていきそうだ。


 それはそうと、思った通り、シンは全っ然ペロキンの本性に気がついてない。

 かといって、シンを傷つけないようにペロキンの本性を説明できる自信が俺にはなかった。

 しかも、お人好しのシンのことだから、真相を知ってもあっさりペロキンを許しそうだ。


 シンが許しても俺は許せねーから、ここは黙ってぶちのめすに限る。

 二度とダンジョンに入りたくなくなるくらいには痛めつけてやらねーと。


 あと、ドローンを壊さねぇと。

 ペロキンは撮影ドローンを持ってきていた。録画は消すとか言っていたけど、信用できない。絶対ウソだ。

 俺の犯行をうつすことになるあのドローンをダンジョン外に持ち出されるわけにはいかないから、すきをみてぶっ壊すか奪う。

 問題は、いつどうやって実行するかだ。


 シンがいなければ、楽なんだけど。

 シンの目の前でいきなりペロキンを襲うわけにはいかない。


 シンは出てくるモンスターを瞬殺していった。

 俺が事前にトラップ製造機で作って大量に設置しておいたトラップも、シンが全部破壊してしまった。

 ちなみにトラップの破壊は、器用がかなり高いか、筋力がありえないくらいに高い奴が攻撃するとできるらしい。

 シンの場合は特殊で、バカみたいに頑丈をあげまくった結果、10階層前後にある低レベルのトラップなら踏んで壊せるようになった。ジャンヌいわく、ネットのどこを調べてもでてこない前例のない技らしい。

 俺はまだ低レベルのトラップしか作れないから、シンの前じゃ役に立たない。


 このままじゃ打つ手なし。

 どうやってシンとペロキンたちを引きはなそう。

 そんなことを考えながら、シンとペロキンの後ろをついて俺が歩いていると。

 突然、かん高い笑い声が聞こえた。


 笑い声の聞こえた方には、クマみたいな着ぐるみ姿で顔も隠している怪しい奴がいた。

 一瞬モンスターかと思ったけど。

 怪しい奴はいきなりムチで攻撃をしてきた。……あのムチには見覚えがある。ジャンヌだ。


「ジャンヌさんですか? どうしたんですか!?」


 ジャンヌは驚くシンにかまわず、ムチを振りまわしている。

 シンが盾を構えて前に出た。


「ジャンヌさん! ジャンヌさんですよね!? やめてください!」


 シンの盾にジャンヌのムチが当たった。

 シンだから平気で受けているけど、ジャンヌのムチは状態異常や装備解除といった嫌な特性てんこもりのやっかいな武器だ。


「ジャンヌさん!」


 どんなに呼びかけても聞こえないかのように、ジャンヌはシンにむかって攻撃を続けている。変だ。

 ジャンヌはいつもアイテムの横どりをしていくし、宝の取り合いで小競り合いはしょっちゅうだ。

 だけど、宝箱もないのにいきなり襲ってくるか?


「あいつ、気でも狂った……のか? まさか、状態異常か?」


 俺はそうつぶやきながら、いいことを思いついて、なにげなくペロキンの後ろにまわった。


「あ……なんか俺も頭が……うぅ……これは、混乱の状態異常だ! 混乱がうつった!」


 俺はそう叫びながら、双剣を抜き、一気にドローンに斬りかかった。


「ああ! 超大事な撮影ドローンに何を!」


 ペロキンが叫んだ。

 だけど、ドローンは想像以上に硬かった。これは、簡単には壊せない。

 そう判断した俺は、ペロキンをジャンヌの方にけっとばした。


 ちなみに、ペロキンが連れて来た探索者二人は、ジャンヌが出現したところで階層終点にむかって全速力で逃げていったから、もういない。


「ペロキンさん!」


「うあぁー!」


 ジャンヌのムチが容赦なくペロキンを襲った。

 装備解除の特性をもつジャンヌのムチが何度もヒットして、ペロキンの装備が全部はずれた。

 そして、装備解除されたドローンは、地面に落ちた。


 俺は急いで落ちたドローンを拾い、シンがペロキンの救助にいけないように妨害しつつ、手あたり次第に他の装備も拾った。


「キョウ! 正気にもどって! 早くたすけないと、ペロキンさんが!」


 シンはそんなことを叫びながら、俺に気付け薬を投げつけていたけど、至極正気の俺がこれ以上正気に戻るはずがない。


 その間、ペロキンはジャンヌにムチで叩かれ続けて、下着までビリビリにされて、ほぼ真っ裸の状態で地面でピクピクしながら「うっ……あっ……」と悶えていた。

 すんげぇ無様な姿。あんまりにも無様なせいで、俺のペロキンへの怒りがおさまってしまった。

 俺は(ま、こんなもんでいっか)と思って、階層の終点へと走り抜けた。


 俺が終点のワープ装置を踏んで、次の階層でアイテム整理をしながら、のんびりシンが来るのを待っていると。

 着ぐるみ姿のジャンヌがやってきて、いきなり俺に文句を言った。


「ちょっとぉ。ドローンはあたしの獲物!」


 やっぱりこいつは普通に正気だったか。


「俺が先に拾ったんだから、俺のだ」


 すでに俺はドローンをアイテムボックスにしまっているから、ジャンヌにはどうしようもない。


「え~。あのドローン、超レアなアイテムなのに。ま、いっか。あいつ、けっこういいアクセもってたから。ペロキン」


 俺が拾い損ねたアイテムをジャンヌは拾ったらしい。

 にしても。俺はあきれながら着ぐるみジャンヌに言った。


「お前、いつもこんなことしてんのかよ。完全に強盗じゃねーか」


 よく考えれば、こいつのムチって、完全に強盗用の武器だけど。装備解除ってモンスターには意味ないから。


「いつもじゃないけどー。どうしてもほしくなったら、手段は選ばないってのがダンジョンルールでしょ? でも、ないしょね。説教仮面にバレると面倒だから」


 そんなダンジョンルールはない、というか、強盗はダンジョンマナー違反だ。だけど、この闇ダンジョンじゃ、たしかにみんな欲しい物は奪う。


「俺はチクらねーけど。シンの奴、あのペロペロ野郎を外まで運ぶぜ? そしたら、バレるだろ。あいつは有名な配信者らしーから、全国に知れ渡るぞ」


 俺はダンジョン動画とか見ないけど、普通はみんなそういうので情報収集しているらしいからな。

 ジャンヌは肩をすくめた。


「まーねー。でもペロキンってやらせ疑惑あるからどうにかなるんじゃなーい? ペロキンが何か言ってもみんなが信じなければマイペンライ」


「んなもんか?」


「そうそう。もう撮影ドローンもないから、ペロキンは終わりでしょ。あと、あいつが裸で地面でピクついてる写真記念にとってあるし。余計なこと言うなって脅しといたから、しゃべらないって」


「おまえ……」


 こいつ、やり口がカタギじゃねぇ。


「それより、シンへの言い訳、よろしくね。ドローンゆずってあげたんだから。あれは人違いだった、とか、状態異常の混乱だった、とか、あたしへの好感度が下がらないようにうまく言っといて」


「いや、ムリだろ。強盗して拷問して写真とって脅したんだろ? シンの目の前で」




 結局、ペロキンに関しては、ジャンヌの言ったとおりになった。というか、それどころじゃない大騒ぎになっていた。

 ダンジョンでペロキンを襲った翌日。俺は学校で筑地に「SNSで大バズり中の動画」とやらを見せられた。


 それは、ペロキンが、シンを襲った男達と仲良さそうに胸糞な話をしている動画だった。

 つまり、ペロキンが仲間とグルになって、動画再生数をあげるために車イスのシンを襲ったことがわかる動画だ。


 筑地は自分がやったとは言わなかったけど、あの時、あいつが撮影してたのかも。

 とにかく、その動画がSNSで拡散されたのは、ちょうどペロキンがチンピラにからまれた車イスのシンを助けたふりしている動画が公開された直後だったから、大炎上。

 猛バッシングを受けたペロキンは全てのSNSと動画配信サイトでアカウント削除に追いこまれた。

 警察の事情聴取も受けているらしい。

 こうしてペロキンは社会的に終了した。


 ペロキンはいい気味だけど。

 さすがにそこまで大騒ぎになったら、シンの耳にも入る。

 俺はシンがショックを受けたんじゃないかと心配したけど。

 「残念だけど。そういう人もいるよね」と、シンは淡々としていた。お人好しとはいえ、シンもダンジョンで人間の汚さは腐るほど見ているからな。


 でも、その直後、「それより、ジャンヌさん、大丈夫だったかな。回復してあげられなかったけど。あの状態異常、気付け薬が全然きかなかったんだよ」と心配していたあいつに、俺はあきれた。

 「あの変な状態異常は、俺も自然にすぐ治ったから、だいじょうぶ」と俺は棒読みで言っておいたけど。


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