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第5話(2) ベンケイ (敵視点)

 京都の鴨川ダンジョンにはダンジョンに魅せられた狂人がいた。

 ベンケイという異名で呼ばれるその大男は、5年前のダンジョン出現時から鴨川ダンジョンにいりびたっていたが、次第に武器の強化に至上の喜びを感じるようになっていった。


 ベンケイは普通の探索者が目標とする100階層クリアや金印アイテムの入手には興味がなかった。

 より強い武器を作り上げることがベンケイにとっての無上の喜びだったのだ。


 ベンケイは鴨川ダンジョンを徘徊しては、見つけた探索者を襲い、装備を奪った。何人殺したか、ベンケイはおぼえていないが、奪った武器の数はおぼえている。

 巷ではベンケイが奪った武器は1000本を超えると噂されているが、実際はまだ999本だ。そして、奪ったすべての武器は、イワトオシと名付けた鴨川ダンジョン99階層で入手した大刀の強化につかわれた。


 鴨川ダンジョンで出現するあらゆる属性・特性を付与されたベンケイのイワトオシは、いまや攻撃力1000を超える。

 奇跡のような一本だった。国内でこの武器を超えるものはないだろう。


 だが、ベンケイはそれで満足はしなかった。

 ベンケイはイワトオシを眺めてはつぶやいた。


「まだ足りない。我が命よりも大切なこの至上の芸術、イワトオシを、もっと、もっと、強い武器に育てあげなければ」


 しかし、ダンジョン探索者たちは、いまやベンケイの噂を恐れ鴨川ダンジョンを敬遠していた。

 無人のダンジョンで宝箱から集める武器だけでは、強化できる数値は微々たるものだ。

 ベンケイは苛ついていた。


 別のダンジョンに行こうかと考えてはじめていた、ある日。ベンケイは新宿ダンジョンの100階層クリア後に裏ダンジョンが出現したという噂を聞いた。

 そこに行けば、イワトオシをもっと強くできるかもしれない。


 ベンケイは鴨川ダンジョン100階層のボス、一つ目一本足の巨大な傘のような化け物をイワトオシで一刀両断にした。

 100階層ボスであっても、ベンケイのイワトオシの敵ではない。

 ボスの間の先をよく探すと、あった。裏ダンジョンへとつながる扉が。


 転移先の裏ダンジョンにつき、ベンケイはさっそく出現したモンスターを斬った。

 このモンスターもイワトオシの敵ではなかった。

 だが、鴨川ダンジョンのモンスターよりは強かった。


 ここなら、きっと鴨川ダンジョンよりも強い武器がでるだろう。きっと強い武器を持つ者がいるだろう。

 愛刀をさらに強化できる

 ベンケイは狂喜した。

 モンスターを狩りながら、ベンケイは人を探して彷徨った。

 そして、小さな人影を見つけた。忍者のような格好のその人影は、こちらをじっと観察するように見ている。


 ゴーグルとマスクで顔はわからないが、まだ子どものようにも見える。

 だが、その武器! 

 ベンケイは歓喜した。

 2本あわせて攻撃力180超えの双剣。イワトオシにははるかに及ばないが、鴨川ダンジョンには存在しない強い武器だ。


 ベンケイはイワトオシを忍者のような格好の小男の方へ突き付け、歪んだ笑顔でいつもの言葉をはなった。


「俺と勝負をしろ。そして、おまえが負けたらその武器をよこせ」


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