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Libra  作者: 紫雨
番外編
13/13

道化の心

陽太の想いとは。

実はがっつり窓越しで告白っぽいことを陽太は千夏にしているのですが、当時の千夏は割とパニック状態だったので、それをしっかり覚えていない、という設定です。それっぽいこと言われた気がするけど、はっきりは言われてないしな…とか思っています。

最終話から数日後のお話です。

「――というわけで、千夏(ちなつ)に手出すの、無しな」


 後日、どうしてもという智弘(ともひろ)に連れられて、二人で陽太(はるた)に会いに行った。

 陽太に釘を刺しに行くのだと。私はそんな必要ないと伝えたけど、「だから甘いんだよ」とデコピンされてしまった。


 甘いのだろうか。陽太のことに関しては、たぶん私の感覚は麻痺しているところがあるので、他人の指摘の方が正しい気もしている。

 ただ、智弘が言うように、陽太が私に手を出そうとしているというのは…どうも、しっくりこなかった。


(確かに、あの日の陽太は様子が変だったけど…)

 陽太らしくないこと、何かごちゃごちゃ言っていたような記憶がある。

 でもそれは、陽太にとっては私に彼氏ができるということが初めてだった訳で、お気に入りのおもちゃを取られて拗ねている3歳児みたいな感情で発した言葉だろうから、こんな智弘の直接的な言葉には、笑い飛ばして「ないない!」って言う陽太を想像していたのだが―――




「やだって、言ったら?」

「ほらね、ないで――はぁ?」


 予想外の陽太の返答に思わず変な声が出た。ほらみろ、と智弘が肩をすくめる。


「やだじゃないだろ、ガキかよ」

「もともとはオレが千夏のこと紹介したんだよ、紹介主がダメって言えばこの話は白紙じゃねぇ?」

「どんな制度だよ、それ」

「――いやいやちょっと待って、陽太何言ってんの?」


 意味がわからない。まさか本気で、私のこと?


「そうだよ。気づくのが遅くなっちゃったんだけどさ…、千夏、オレを選んでくれる?」


 陽太が、じっと私の目を見て言った。見たことないような、表情をしている。



「……」



 それでも、私は陽太のことを、ずっとずーっと、近くで見てきたのだ。

 陽太の、考えていることと、どうしたいのかも。きっと私だけに、わかることがあると――思いたい。




「選ばない。私は、…智弘を選ぶよ。」


 智弘の手をとって、ぎゅっと握った。

 珍しく自信無さそうに立っていた智弘は、一瞬動きを止めて、そして握り返してくれた。


「そうだな、千夏はそーいう女だ。オレが人肌脱いだ甲斐があったってもんだなぁ!」


 いつものカラっとした笑顔で、陽太は笑った。

 この笑顔を何度も眩しいと思って、ずっと見ていたいと思って――そして救われてきたのだ。



「おふざけはやめなさいよ陽太、趣味が悪いわよ」

「おふざけ…?」

「そうだな、悪かったよ。智弘、手なんか出したりしないから安心してくれよな!」


 バシバシと、陽太が智弘の背を叩いて、二人は笑っていた。







「…敵わないな」


 二人きりになってから、智弘がつぶやくように言った。

 その言葉を聞いて、彼も親友のエールに気づいているのだとわかった。



 自惚れでなければ、私への気持ちに気づいたというのも本当で、私たちを気遣って、道化を演じたのも本当だ。それが陽太だ。


 "一見何も考えていないようで、実はそんな気配りもできる。

 そしてそれをあからさまに相手に見せないようにこなしてしまうのが陽太の魅力だと思う。"


 そんな陽太のいいところを、知っているのは私だけだと思っていた。でも初めて、同じように気づいてくれる人と出会った。

 それが智弘だったことを、智弘と出会ったときのことを――思い出す。

 丸く収めようと道化を演じたのに、私たち二人ともにバレてるって、そんな締まりきらないところもさすが陽太という感じだ。



「手なんか出したりしないから安心してくれって」

「…そうだな、安心だな」

「安心してくださいな。」


 二人して、陽太の演技プランに乗りましょうか。


 陽太を愛しい気持ちは変わらない。

 でも違うベクトルで、今隣にいる智弘を愛しいと思うようになったのだ。



「手、つなご」

「お、積極的」

「嫌?」

「嬉しいに決まってる」

「じゃあ茶化さずに、嬉しいって言ってよ、めんどくさいなあ」

「めんどくさいとか言うなよ、傷つく」

「どうしちゃったのよ、そんな傷つきやすいキャラじゃなかったじゃない」

「どんなキャラだよ。余裕ないんだろうね、嫌われたくないんだよ…」


 想いを伝えあってからというもの、智弘は可愛くなった気がする。本人曰く余裕がないかららしいけど。

 可愛いねって言うと、また拗ねそうだからやめておく。



「……じゃあ、どっか行っちゃわないように、…ずっと握ってて」



 絡めた彼の指に、ほんのりと熱が灯った。



(おわり)

2人は陽太の想いを、このように解釈して受け取ることにしました。

でもこれは陽太視点の話ではないので、実際のところは、本当に何も考えてなかったかもしれないし、2人の考える通りかもしれないし、智弘を紹介すると言った時からこうなるところまでが陽太の思い描いていた筋書きだったかもしれません。

これに関しては彼にしかわからないことなので、皆さんのご想像にお任せしたいと思います。


ここまで読んで下さってありがとうございました!

またもし何かお話が舞い降りたら、番外編として書かせて頂きたいと思います。

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