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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
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壁の破壊

 イースタル要塞が激しく揺れる。

 見張りの兵士達が、遥か東部に閃光を何度も見る。遅れて、ボンッやパンッと言った音が聞こえた。

 兵士達が気が付けば、足元が揺れる。

 イースタル要塞を守る様に建てられた壁から、黒煙が幾つも上がっている。


「なんだ!? 遠距離から何か来てる!!」


 一人の兵士が大きな声を上げ、それを皮切りに兵士達が緊急警報を鳴らせた。


 要塞内部にサイレンが鳴り響く。

「敵襲、敵襲!」と大きな声が、幾つも聞こえた。

 レスポーが要塞内にある軍本部、会議室に飛び込むと辺りを見回す。そこには、驚きと共に恐怖を感じて立ちすくむ者達の姿があった。

 今まで前例を見ない事態に、どうして良いのか解らないと言った様子も見受けられる。


「一体、何が起きたんです!?」


 レスポーの声に、一人の将官が答える。


「知るか! 急に、東から攻撃だとよ!!」

「東!!? アレクシアですか!?」

「しか無いだろう!!」


 激しい爆音が鳴り響く為、二人は大きな声を上げて話す。


「将軍閣下は!?」

「今こちらに向かっている!」


 ウラジネス・スネクラ将軍は激しい怒気を孕んだ表情で、軍本部会議室に向かっている。


(東側からだと!? アレクシアめ、遂に動いたと思えば、何だこれは!? 何の勧告も無しか!)


 これまで、戦いにおいては攻撃勧告を行ってから、戦闘開始となっていた。それは、主に一般人の待避や降伏する場合に備えて行われる。

 しかし、今回の攻撃でそれは無かった。

 それに対して、ウラジネスは激しい憤りを感じていたのである。

 しかしながら、未だアレクシアの攻撃とは断定出来ていない事もまた、彼の怒りの炎に油を注ぐ形になっていたのだった。


 見張り台で二人の兵士達が望遠鏡を覗く。


「あれは、確かにアレクシア帝国の旗印だ……」

「だが、アレは何だ? 何なのだ!?」

「知るか!」


 二人の兵士達は、壁の向こうに見える得体の知れない物体を凝視する。

 円筒の先が光ると、煙を吐く。遅れてドンと空気を震わせる音が聞こえた。

 すると壁に激しい爆発と衝撃が襲った。

 何度めかの攻撃の後、ようやく動きを見せる。

 壁に向かって前進を始めたのだ。



 アレクシア帝国軍第一機甲師団、師団長レイジネル・ラングレイ大佐はヘッドセットタイプの魔導通信機を付けて、双眼鏡を覗く。


「こちら、スコーピオ。着弾と、壁の一部破壊を確認した。これより、前進する」

「アルマジロ了解!」


 スコーピオは第一機甲師団のコードネーム、アルマジロは第二機甲師団のコードネームである。

 レイジネルは、運転手に声を掛けて魔導車を発進させる。次いで、魔導通信機で自身の部隊に前進の命令を下した。

 二十台の戦車と、一万の歩兵が一斉に進軍を開始する。後方に第二機甲師団が、援護射撃体勢を取るように一定の距離でついてくる。


「大佐、連中何もしてこないですね……」


 部下である兵士に声を掛けられ、レイジネルは首を捻る。


「おかしいな、勧告をする為の使者は送られているはずだがな……」


 レイジネルは指定の時間になったので、攻撃を開始した。しかし、ミーティアラ王国軍は一切の抵抗も無いように見えた。

 実際そうなのだが、レイジネル達にとってそれは不思議としか言い様がなく、何かの策が設けられているのかと、内心疑いながら前進をする。

 壁の近くまで来ると、戦車を横一列綺麗に整列させ、砲撃開始を命じる。

 近い距離での砲弾は普通の城壁であればひとたまりも無い。

 だが、このイースタル要塞の壁は超大型モンスターの体当たりにも耐えられる構造であると、事前に知らせが来ていた。


「やはり、硬いか……。よし、工兵隊出番だ! やってくれ。歩兵隊は、工兵隊の援護を」


 レイジネルの指示で、リュックの様な物を背負った数名の兵士が敵に気が付かれない様、壁に向かって移動を開始する。

 第一機甲師団は既に、二度の実戦を経験している。どちらも、アレクシア帝国領近くにある小国への攻撃だ。

 最初は、戦車十台と歩兵二千から始まり、次に少し増やされ、現在は本格的な師団レベルになったのだ。

 その為、古参兵の動きには無駄がない。新参兵は古参兵のサポートを受けて、かなり連携が取られている。


 工兵隊が壁に到着すると、一人の兵士が壁に手を付けて壁沿いに歩き出す。

 ある場所で動きを止めた、兵士は仲間に手信号で合図を送る。

 全員が頷くと、三人がリュックから魔導式工具を取り出した。本来は魔導車など魔導機械マキナのメンテナンスに使われるハンディタイプの工具で、それは地球世界で言う所のインパクトレンチだ。

 ソケットを、ドリルに変えて石壁に穴を空けていく。等間隔で数箇所穴を空けると、そこへ爆発魔法術式を書き込んだ魔石を投げ入れる。魔石には魔導伝達金属のワイヤーが付けられていた。

 ワイヤーで繋がった魔石を、空けた穴に次々と投げ入れる。

 作業が終わると、ワイヤーをある一定の距離まで持っていき、精神感応金属版と繋げる。

 精神感応金属版から、一人の工兵がマナを送ると魔石内の魔法術式が起動。複数の穴が一気に爆発し、壁に大きな亀裂を入れた。

 レイジネルの指示で、戦車隊は壁の亀裂に砲撃を開始する。

 すると、あれほど強固であったイースタル要塞の壁の一部が完全に崩落したのだった。

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