ウッドランド
ミーティアラ王国王都ウンディエネを出発したタクロー一行は、一路ミーティアラ王国国立公園を目指した。
ミーティアラ王国国立公園は、ウンディエネより北東の位置にある。
近くには町があり、そこには国立公園管理局もその町にある。
町の名は、ウッドランド。正に木の国と思わんばかりに木が生い茂る場所だった。
国立公園指定区域とされる場所は、巨大な森の一角だけ。それ以外は、トレスティナ樹海と呼ばれている。
かつてゲーム時代では、その場所はただのマップの一部であり、樹海どころか国立公園となっている場所にも入れなかった。
その為、タクローが行ってみたいと言い出すのは無理もないと、ゲームメンバーは思った。
止める事は難しいと判断し、ヒカルが共に行くと言うのでブレーキ役を頼んだのは言うまでもない。
ワゴンタイプの魔導車を運転するタクローは、目を輝かせてキョロキョロと景色を見渡す。
ウッドランドまでの道は簡単な整備が成されており、モンスターの数も少ない為、戦闘にはならない。
対向車も、同じ方向へ向かう魔導車も居ないとなれば、タクロー達の独走状態。
例え道を蛇行しようとも、はたまた道を外れようとも文句を言う者は居ない上に、事故を起こす心配も無かった。
簡単な整備しかされていない為、デコボコ道で腰や尻にダメージを受けながらウッドランドを目指す。
ウッドランドに着くと、既に夕方になっていた。
巨大な大陸ルクセンドル。
ミーティアラ王国の国土もまた非常に大きい。その為、町や都市間の移動距離はあまりにも長い。
数百年前は、小さな町や村が点在していたが、モンスターの脅威から身を守るためにより集まったせいで、お互いの距離が離れてしまったのだ。
ウッドランドもまた、モンスターから身を護るために壁が作られていた。
ウッドランドに入ったタクロー達は、宿の手配をする。
リリーアに付いてアチコチ回ったセルヴィナは、慣れた様に宿の手配をする。
この町の人間達もまた、亜人を見てやや不快な顔を見せたが、セルヴィナが居る事であからさまな顔はしなかった。
近場にある、食事処で夕食を取る。
タクロー達は食事と共に酒も頼み、幼い少女達は果物のジュースだ。
「おいおい、いつからここは奴隷市場になったのだ?」
楽しく食事をするタクロー達に向けて、大きな声を上げる男が居た。
タクローが不機嫌な顔を向けると、ガタイの言い男達がニヤニヤと笑いながらこちらを見ている。
「おぅ? なんだ、文句あるのか?」
声を上げたと思われる、男が睨みつける。
危険を察知した、トリスがセルヴィナに目で合図を送る。頷いたセルヴィナは、席を立って咳払いをする。
「貴様達こそ、文句あるのか?」
「ああ? ああ……、なんだ、剣聖の娘か……」
鼻で笑う男に、セルヴィナがあからさまに怒りの表情を浮かべた。
「セルヴィナ、ザコにイチイチかまうことは無いぞー」
タクローの言葉に、男達が立ち上がる。
「てめぇ、俺達が国立公園警備隊だと知って言ってるのか!」
「ほぅ、なるほど……、道理で素行が悪い訳だ」
国立公園警備隊は、ミーティアラ王国の軍人によって組織されている。
基本的にモンスターとの戦闘集団であるが、町の治安を守る役目も担っている。それだけでは無く、殆どが貴族の次男以下と言った出世の見込めない者達。
貴族と言う肩書きを背に、町の中では威張り散らしている。
だが、モンスター戦闘ではきちんとした戦いをするため、誰も文句を言うものは居ない。彼等もまた、モンスターと戦えない役立たずはこの役職に就けない事は知っている。その為、日々の研鑽は欠かさない。
タクローは鼻で笑う様に、『それがどうした?』と言わんばかりの顔で見る。
今正に、国立公園警備隊が一触即発と言わんばかりの体勢になる。
「主様への無礼は許さんぞ!」
セルヴィナが、剣に手を掛ける。
「あるじさま!?」
警備隊員全員が驚いた顔をした後、笑い声を上げる。
「おいおい、剣聖が王家でも無いやつの下につくとはなぁ。お前も、奴隷になりさがったのか?」
一人の男の言葉に、警備隊員達がわざとらしい笑い声を上げる。
「セルヴィナ、トリス、ちょっと黙らせた方が良くないかぁ?」
タクローの言葉に、二人はニヤリと笑い頷いた。
「お前ら、話は外でしよう」
セルヴィナが、親指で店の入口を指し示す。
国立公園警備隊は八人も居る。ニヤニヤ笑って、「良いぜぇ」と一人が言うと、全員が下衆の笑みを浮かべた。
外に出ていった、八人と二人。
外では、男達の悲鳴にも似た声が響くのであった。




