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青天の霹靂

そう、それはまさに、青天の霹靂だった。いつかは、覚悟していたことだった。でも、、私たちの日常が、こんなにもあっけなく崩れ去るなんて、私は、夢にも、思っていなかったんだ。



いつものように学校を終え帰宅しようと校門を出てすぐのことだった。突然腕を引き止められた。

髪はアイボリー色の、綺麗に巻かれた長髪に、雪のように真っ白な肌と手足、蒼色の瞳をした、異国風の整った鼻筋、そして結婚式からそのまま抜け出してきたかのような足元まで覆う真っ白なドレスを身につけた、年代は20歳後半くらいの、女性だった。



「見つけた。やっと、、リリア」


!その単語に一瞬で背筋が凍りついたように動けなくなった。

何で、知らない、名前のはずなのに、


「?誰ですか?」


震えるほど悪寒を感じる 否、これは、最近、毎日のように接してきたから分かる、悪魔の気配



「やっぱり、世界線が違っても見た目は変わらないのね。」


「…?どういうことですか?…」


「多数の人智を超えた効力を感じる。7代天使…いえ、今は堕天してしまった、あの悪魔…それから、、一際強い禍々しい呪いそのものの原点たるダンタリオン、そしてその呪いを封じるかのように、かけられた守護の天使の気配……興味深い…とても」




「あなたは…一体…」


声が震えて、それ以上、言葉に出来ない。



「私はただの、しがない魔人です。あなた、禁忌を犯しましたね、人間の、この地球上で、触れてはならない禁忌に」


魔人、、やはりー、この人、他の人には見えていないのか、道行く人は誰も彼女を見ない むしろ、1人で放心している私の方をチラチラと見ていた。





「まあ、今はここは目立ちます。場所を変えませんか。御用があるのです。あなたに」


「え、、私…ですか?」



「あなた、今、記憶がないのではありませんか?」



「!どうして…」



「アトランティス協会ですか、随分灯台もと暗しとはまさに 」


「紫音寺君は元気かしら」


「え、、斗真さんの、知り合い、ですか?」


「ふふ、何だ葛城に邪魔な本部の犬もいるのね」


「.....あの...」


「ああ、ごめんね、私は昔の、正確には、こことは違った世界線で、あなたの仲間だったの」


「??」


「随分過保護に飼われてるのね、ねえ、記憶、思い出したいと思わない?」



「え?それは、もちろん...でも、、」


「私はあなたの過去を、知っている」


「え!?」


「仲間だったのだから、当たり前でしょう?」


この人は危険だ。本能がそう告げている

私は未だ数年ぶりくらいに汗が滲み手足が震える程緊張し切迫していた。


でも硬直したかのように後ずさりしか出来ず、

彼女の身から禍々しい気配が突如覆い尽くし、視界をみるみる黒で埋めつくしていくー



手持ちの聖水と聖書を放ち祈りの言葉を口にしようとするが、上手く言葉が出ない


応援を呼んでいる時間はない。なんとかしなければ、だけど天啓の使えない私に及ぶ力は虚しく、対する相手の強さは未知数

身体が見えない鎖で高速されたかのように鉛のように重く動かない。


真っ暗な闇が、目前に迫り、視界を覆い尽くしていく。


意識を失う最後に見たのは、突如光の裂け目が現れ、闇を両断するように、誰かが割って入った姿だっ.た




.....................................................................



「ー!斗真!しっかりしろ、斗真!」


「!…せ、の…?」


目を開けると、


「一体何なんだあの女は。様々な悪魔が何重にも巣くっていて、どの聖剣も効かない、正体さえ分からなかった…!」


「結衣、結衣は?!」


咄嗟に先程までの悪夢のような出来事を思い出した。


「とにかく、酷い怪我だ。ユナン神父が車を出してくれているから、すぐにでも戻って手当しなければ」


「結衣はどこなのですか!!」


「…あいつは、無事だよ。先に帰った。」



「先に…?」


違和感を感じる。結衣が、私をおいて帰るわけがない。

まさか……



そして、私の意識は、現実へと引き戻された。

………………………………………………………………





終わって、しまうのか…?これで…?

私はもう能力を失ったから、何も誤魔化すことなど出来ない…

これが私の弱き心が抱いた、ただのー、


いや、まだ、まだ終わらない。真実など、いくらでも

変えられる。周りがいくら口を揃えて真実だと語ったとしても、それを信じられる確証が揃わない限り、偽りの真実なのだから、


私はまだ、負けない。


あのとき、あのとき、結衣が私に優しく笑いかけて、手を差し伸べてくれなかったら、今の私はいない。、私はあなたの存在に救われた。

だがら私は貴方を守る。どんな攻撃の刃からも、










あの日から、3日が過ぎた。

今日も結衣は学校を休み部屋に閉じこもっている…

夕食にも朝食にも顔を出さず、ミサにも欠席して、、悪魔祓いにも参加していなかった。


………………………………………………………………


『だけど、いくら愛はなかったといえ、関係を一度でも持ってしまうことに、過ちだとは1ミリも感じなかったのか!?見られなければいい、聞かれなければ、誰にも知られなければそれで良かったのか!?それが起こったという事実は変えられないのに!

君が、父さんの馬鹿な誘いに賛同しなければ、断っていれば!こんなことにはならなかった…!』





「!! はぁ……っはぁ……、夢、、か。」


ベッドから飛び起き、辺りを見回してからため息をついた。額に玉のような冷や汗が浮かんでいた。……今更そんな過去のことを悔やんだって仕方ないのに。

確かに、あれが全ての事の発端だった。私はあのおぞましい魔性の女から産まれ、そして、私の生は多くの人を不幸にした。私の血はどれだけ善行を重ねようと穢れている。だから天啓だってすぐに消えてしまった。




プルルルルルル


!こんな夜中に、、内線?緊急の悪魔祓い要請だろうか。


「はい、紫苑寺ですが、……なんですって、、結衣が!?」


頭の中が、真っ白になった。

受話器を無造作に置き捨てると一目散に部屋を飛び出し走った。

なぜ?一体なぜこんなことに!?疑問ばかりが次々に浮かび上がり思考がうまく働かない。

いつもの廊下がとてつもなく長く感じた。


バン! 寮の1階の擁護室の扉を勢いよく開けた。



「結衣は!結衣は大丈夫なんですか!?」


「えぇ、先程、地方の医者を呼び見てもらいましたが、命に別状はないようです。今は眠っています。」


答えたのは修道長だった。奥のベッドの1角に結衣が眠っている、近づくと寝息をたて今は安息している表情に見えた。


「はぁ……良かった…!」


とりあえず結衣が無事だったことに安堵する。でも問題はまだまだ山積みで、聞きたいことは山ほどあった。


「一体どうして睡眠薬なんて…」


「おそらく地下施設で見つけたのでしょう、あそこの管理は杜撰ですから。」


「あなたが、結衣を、最初に?」


「えぇ、私が夜の巡回から戻ってきたとき、寮のキッチンの明かりがついていたので、不審に思って確かめたんです。うちは貞節をモットーにしていますから、消し忘れなどほとんどなかったので。…そうしたら、結衣さんが……」


修道長は結衣の過去を知っているし、他のシスター同様信用していない体は今までの言動から見て取れたが、床に伏せる結衣の頭にそっと濡れタオルを置き看病している様は、親が子に抱く感情、とまではいかなくても、少なくとも今は結衣を案じてくれているのが見て取れた。


「事情は分かりました。ありがとうございます。結衣を、助けてくれて、、。」


「私はシスターですから、当たり前のことをしたまでですよ。」


謙遜して呟く修道長の表情からは、何を考えているのかもう分からなかった。

ふと周りを見ると、ユナン神父に葛城先生、柚にそして意外にも瀬野もいた。


「驚きました、まさか、こんなことになるなんて…。結衣は、確かにシスターとも折が悪く、居心地が良かったとはいえないかもしれませんが、エクソシストとして闘う決意をしてくれたのは、つい最近なのに…。」


ユナン神父が思案げに呟く。


「ユナン神父、濡れタオルを交換してきていただけますか?」


「あ、えぇ、分かりました。」


「私の責任なのです。あのとき、何を、犠牲にしてでも結衣だけは守らなければいけなかったのに。まさか、こんなことになるなんて.....私は、」


「……。」


「……。」



「斗真様の責任じゃないです。これは、私たち全員の問題です。いずれ知らなければならなかったこと。

私たちこそ、ごめんなさいね、結衣のことを、あなたにばかり押し付けてしまって…」


「修道長はもう充分よくしてくれていますよ。結衣をここにおいてくれているだけ…救われています。」



「結社側が接触してきたことを考えると、この協会に彼女を匿っていることも既に知られているでしょう。あの魔人が、独断で行ったとはいえ、リーダーや他の幹部が黙っているとは思えない、

これから事態は、悪くなるばかりだと。私にできることなど小さいですが、あまり時間がありません、私の方で他の教会をあたり、天啓を受けている力のあるエクソシストを探してみます。」


「ありがとうございます。修道長。」


「こうなった以上、私も、もっと修行して大悪魔もはらえるように頑張ってみるわ。」


「ありがとうございます。皆さん…」


「紫苑寺、お前があの女に取り入る気持ちは分かる。私も出来るならばお前の信じるあいつを信じてやりたい。でも、、もし、あいつがこの教会や、修道院を脅かすようなことになったら、、」


「分かっています。その前に、私が必ず止めます。」



瀬野はそのまま振り返ることなく、何も言わずに去っていった。


『結衣の契約を切ることはできない。』


『どうして分かるんですか?』


『契約内容を知っているからだ。』


『その内容は、何なんですか』


『それはいえない』


『…では、結衣は何を代償にしたんですか?見た所五体は普通そうですが…』






………ガタン、 不意に立ち上がる。


あの魔人、ジョーカーといったか、なぜ今になってこんな些細な出来事を思い出すのだろう

病院で眠る結衣を再び目にしたとき、悪魔の制御ははるフィアが行うから、彼女を匿ってほしい と連絡してきた日のことだ。


私は、、結衣に再び会えたことがうれしくて、気にも止めなかった。

この違和感を、私は、心の奥底に封じてしまった。


どんな悪魔だろうと、代償なしに契約を得ることは出来ない


次回は「結衣と柚の意外な繋がり」をお送りします。

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