守りたいもの
全て、夢だったら良かったのに
ベッドの上で目が覚めた私が、真っ先に考えたことは、現実逃避だった
昨日、はるフィアと思われる魔人の攻撃か、洗脳か、分からないけれど、私は過去の、私を、いいえ、全て、私が何者だったのか、思い出した。
不思議と、取り乱しはしていない。
だって、こんな話は突拍子もなさすぎる。悪魔やエクソシストの存在に酷く驚いたのも、常識とかけ離れたことばかりだと感じていたのも、なぜなら、私はー
.....私はこの話しても誰も信じてくれないであろう現実と、騙している皆を、見ないふりをしている
私は被害者だ
でも、全て洗いざらい話したところで、誰が信じてくれるだろう
私にしてあげられることは、なんだろう
一晩中考えた
私のためにここまで思ってくれる彼のために、
私は、私のことを知りたい
彼とは、どんないきさつで出会い、どんな時を一緒に過ごしたのか、
………………………………………………………………
あれから、1週間が過ぎた。
整体の前で祈りを捧げながら、考えるのは斗真さんのことー
突然聖堂の入口から誰かの声がした。斗真さんだった。
彼はゆっくりと私の方へ歩いてくると、私の一つ前の席に座った。
「聖堂にいて大丈夫なのですか、結衣。」
「……まだ、聖水に触れなければ問題ありません。私、できる限り、祈ることは、やめたくないんです。」
「…心がけは素敵ですが、あまり無理しないで下さいね。あなたが倒れてしまったら元も子もないですからね。」
斗真さんは聖堂に置かれている聖書を読みながらそう呟いた。
「聞いてもいいですか?」
「何でしょう?」
「…ジョーカーという人を、知っていますか?」
突然読んでいた聖書の手が止まった、
「着物を着た、私と同じような髪型をした、赤髪の、綺麗な男性です。」
「どうして…そんなことを?」
「携帯電話に…その人からメッセージが来ていたんです。不思議な、メッセージが。
彼はこの教会の人達が私を助けてくれること、彼らは信用できることや、私が呪いにかかっていること、記憶を消したことや、両親のことも、あのときは理解できなかったけれど、今思い返すと、、」
「その人間がどうしたというのですか、ハルフィアは君を裏切り殺そうとした、どんなに優しい言葉をかけられても全て罠です、その人間だって同じです、」
「でも、私の記憶を消したのはその人です。私、今なら記憶を取り戻したい、そう思えるんです。それに、、どうしてだろう、彼に会わなきゃいけない気がする……なにか、大切な約束を、したきがする、、私には、やらなきゃいけないことが、もっと大きな、使命があった、ような…?」
「結社のことなど何も心配しなくていいのです!
結衣はとにかく、今生き残ることだけを考えていれば
…。必ず私が助けます。私の天啓さえ戻れば、あなたの悪魔は祓える。
…私は学校に行きますので、今日も敷地外に出ては行けませんよ。」
それでは、また夕食時に 。
そういって彼は聖堂を出ていった。
今日も正門に屈強そうな修道士が控えていた。
することもなく手持ち無沙汰に談話室のロビーで本を読んでいると、ユナン神父が通りかかった。
「結衣、気分はどうですか?」
「はい、おかげさまで、もうすっかり良くなりました。」
「それは良かった。…確かに、熱もありませんし顔色もいいですね。それなのにも、結衣を今月末まで休ませたいとは本当に斗真の過保護ぶりには呆れましたよ」
「……ユナン神父、何か外出する用事はないですか?買い出しでも、募金活動でも何でもいい、私、ここでずっとじっとしているのは耐えられないです、こんな所にずっといた方がどうにかなってしまいそうで、」
「1人で、ですか?」
「悪魔の気配を感じたらすぐ逃げます。だからお願いします」
「……わかりました。あなたがそういうなら、ちょうど調味料を切らしていたので、買い物リストを書きますのでお使い願いますか?」
「はい!」
「門の修道士たちには私から話しておきましょう。斗真の帰る前に、帰ってくるのですよ、」
「はい、ありがとうございます!」
教会の敷地を出て、八王子駅に向かった。
私が向かった先は…円城寺本家だった。
。
初日に、見つけたあのメモ張を、ポケットから取り出す
今思い返すと、エクソシストや悪魔結社に関する話だ。
私は彼のことをほとんど知らない。両親のことも、里親だった人達のことも、兄弟がいるのかすら、何も
?パラパラと捲っていると、気がつけば、メモ帳の後半に、まだ文字が綴られていた。
あのときは途中を少し見たが、何のことか分からず、また、白紙のページが続いていたから読むのを辞めてしまったのだ。
私はそのページを開いた
4月16日
最近よく色んなものがなくなる。私の宝石やネックレスがまたなくなっていた。家政婦が3人いるが、最近新しくきたあの家政婦の仕業に違いない。だってあの女はフィンランドから稼ぎに来たという在日労働者で、住所もない身元もはっきりしない怪しい奴、金に困っているのは一目瞭然だしね。
あの人に何でこんな何処の馬の骨とも知らない女を雇ったのかと聞いたら教会の神父から職を探している人がいるから雇ってやれと言われたからだという。品行方正でお淑やかなシスターだとか吐かしているが、女の私には分かる
この女は、自分を売っている八方美人だ。
こんな女、どうせ金目当てか男を作ってすぐ裏切って出ていくのが目に見えてるのに。
4月20日
昨日、夜中にふと目が覚めて廊下を歩いていたら、誰も使っていない客室で夫とあの家政婦が話し込んでいた。なんの話をしていたのか分からない、でも家政婦と密談なんて、こんな夜中に必要なこと?
4月30日
娘は昨夜も帰ってこなかった、どうせ不良のような生徒たちと鶴んでいるのだろう、どうしてこんなろくでもない子供になったのか、それは私の教育が悪いとあの人はいつもそういう。全部全部、私を責める、こんな才能もない親不孝な子を産んだ私が全て悪いんだと、それでいつもいつも口癖のように、もう1人跡継ぎがほしいと呟くのだ。
5月3日
久々にがん検診に行ったら卵巣に腫瘍が出来ていたらしい。早期発見だったため手術は可能だが、手術すれば子供を産めない体になると言われた 。娘には期待できないわ。だから、もう1人跡継ぎの子が必要なのにー。千年続く円城寺家の家系が途絶えてしまう。どうしよう、あの人にこんなこといえない。
5月5日
病院の領収書を見られ知られてしまった。
もう終わりだ。
5月6日
家の包丁がよくなくなっている、あの子が家の包丁を持ち出そうとしていたので、問い詰めたら、悪魔を殺すため、だとかまた変なことを言っている、
いくら私でもかばいきれないものもある。もうどうしたらいいのか分からない。
5月10日
あの人はあの家政婦以外の家政婦を解雇してしまった。間に合っているからというが本心はあの女が気に入っているからじゃないの?
5月15日
買い物なんて普段絶対についていかないくせに最近よくあの家政婦と共に出かけている。私がどうしてあの女と親しくするのと聞いたら、彼女といると作曲のインスピレーションが湧くのだとかいうが、そんなのまるで信用できない。
5月20日
昨夜もあの家政婦と夜更けまで話し込んでいた。
何を話しているのか集中して耳を澄ますと、跡継ぎがどうとか、妻は期待できない、受精卵と、産婦人科、明後日、三鷹総合病院とかどうとかいう単語がきこえた。
5月29日
明日は私は三鷹に出張する予定だったが、急遽キャンセルした、明日夫とあの女がどこに行くのかあとをつけてやる。
5月30日
家を出て仕事に向かうフリをして家の近くで待っていた。案の定やはり夫とあの家政婦が一緒に出てきた。
向かった先はやはりあの総合病院だった、あとを付けて分かったのは産婦人科のに二人で入っていった所まで、話のないようは分からなかった。
どうしてそんな所にあの人と二人で行くの?考えたくもない最悪の予測しか浮かばない自分が嫌になる。
6月1日
私は最後の手段に出た、至る所に盗聴器をしかけた。もし私を裏切っているようならば私はー。
6月2日
ありえない、ありえない、ありえない、やはり、そうだった、あの2人は愛し合っていたんだ。あの家政婦は、、
そして自分の子供 を産ませるつもりだったのだ。私を捨てて、駆け落ちでもするつもりなのよ、いや、きっと邪魔な私と娘に出ていけというのよ、、
私が盗聴器を持って二人に問い詰めると、
どうしても跡継ぎを作りたかった。私はもう子供がうめないから、仕方がなかったという、
これはあたしとあの人の受精卵だといいはる。
だけどそんなの嘘に決まってる。
浮気の言い訳よ、
私はずっと見ていたんだから、産婦人科だけじゃなくて、別の場所に2人で入って行ったところをー
あなたは随分あの女のことを可愛がっていたものね。
6月5日
あの家政婦が懐妊してから、あの人はいつもいつも彼女の心配ばかりしてそばにいる、私のことなと見向きもせずに、、。
6月6日
あの子が学校でまた問題を起こして電話がきた、全部全部私に押し付けて、許せない。またおかしなことを言っている。今日は特に酷かった。悪魔が入ってきただの、殺されるだの何とか訳の分からないことを言って、包丁を振り回し始めるようになった。何かの呪文を1人でブツブツ唱えていた。気味が悪いわ、、あの子がこんなふうになってしまったのはやはり私の責任なの?
9月1日
あの女のお腹が大きくなってくるにつれて苛立ちと憎しみが増幅していく。不貞を正当化して、
被害者のフリをしているのが特にー
9月25日
この日私は、人生を決定ずける大きな出来事があった。
私は全てを終わらせようと思っていた。この、結婚記念日の日に、
1人森の中で途方にくれていたとき、私はとある人間に話しかけられた。20代前半くらいの真っ黒な黒装束に身を包んだ怪しい男だった。彼は、私は救世主だよ、そう言って、君の望みを叶えてあげられる、そう不気味に笑った。
あの男は私の懸念を全て言い当てた。あの家政婦のことも娘のことも何もかも。ただの人間ではない、と感じた。彼は自分は、悪魔と契約した魔人だよ、といった。娘もよく同じことを言っていた。今までおおよそ悪魔なんて信じられなかったが、彼の人並外れた能力を見せつけられて信じた。私は復讐したい、と言った。
彼はただわらって、君の復讐を手伝ってあげる、と言った。
9月26日
。怪しい廃ビルのような所に連れていかれた、目隠しをされていたから詳しい場所は分からない
その場所には大勢の魔人たちがいた。そこで彼に特別な呪文をかけられると、瞬く間におぞましい数の化け物のような様々な形の悪魔が見えた。私は願った。
夫とあの家政婦の関係が崩れ去ることを、多くの人間に非難されればいい、仕事もなくなってしまえ、円城寺家はもう衰退してしまえばいい、私は自分の右目を代償に、悪魔、アシタルトと契約を交わした。
9月28日
悪魔の効力は凄い、願ったことが全て現実になる。夫とあの家政婦の不倫関係はすぐにバレた、シスターは教会を追い出され、
夫の仕事の契約は次々に打ち切りになった。
あははははははは!!!あの女も、あの人も、もう終わり。
12月一日
あれから、久しぶりに家に帰ったら
、玄関で夫は死んでいた。驚く程に呆気なく、殺されていた。
罪も認めずに、あっさりと
あの女、私が魔人だと気づいていたみたいだ。でももう遅い、そんな弱々しい聖書じゃアシタルトははらえない。
あとは最後に、あの女とその赤子を殺せば私の殺したい奴は全員、、
12月2日
まさか、こんなことになるなんて、娘が反撃してきた、まさか娘も、魔人だったなんてー。しかも私より、強い、悪魔だ。
才能の欠片もないろくでなしだったくせに、、どうして、いつの間に!
だめだ、このままでは、私は娘に、、
こんな所で、終われない、、あの女を、フィオナスカーレットを殺すまでは、絶対に、、!!




