5話
渋谷は俺、俺、俺。
たまに知らない子。
俺、俺、俺。
知っている渋谷のはずなのに、
自分一色に染まった渋谷を見ると流石に引く。
自己承認欲求が満たされるとかそういうレベルじゃない。
気持ち悪さの方が勝つ。
「男王子でいっぱいだね」
「そうだね、お姉ちゃん」
俺が若干引いている横で、
春お姉ちゃんは目をキラキラさせていた。
まあ、お姉ちゃんもほとんど城の中で暮らしているからな。
気持ちは分からなくもない。
「あ、あぁ……言いたい……」
言わなくていい。
どうせ部屋に飾ってある俺グッズの話だろう。
知ってる。
全部知ってる。
「折角都会に来たんだし、色々買っていきましょうか!」
それはそうとして、
もっと俺グッズを買いたいらしい。
「そうだね」
正直、自分一色の街並みに少し萎えていた。
だが、ここまで楽しそうな春お姉ちゃんを見ると断れない。
⸻
「あぁ……この写真の男様もいい……」
「こっちもいい……」
「やっぱりこの時期が最高なんだよなぁ……」
その写真を撮ったの、貴方ですけどね。
「あっ、この時の男様!」
春お姉ちゃんは完全に自分の世界に入っている。
さっきから『ぼっちゃま』と呼び間違えないか心配だったが、
推し活モードに入ったせいで逆に大丈夫そうだった。
「……楽しそうだな」
本人。
王子。
男。
しかも五歳。
そんな超重要人物を連れてきているはずなのに、
完全に放置である。
護衛が一人じゃないこと忘れてない?
ちらりと後ろを見る。
護衛のお姉さん達が何やら一生懸命メモを取っていた。
『春、本日も重症』
とか書いていそうで怖い。
「がぁぁぁ……」
さらに視線を動かす。
他の護衛さん達まで、
いつの間にか俺グッズの列に並んでいた。
おい。
誰が俺を守るんだ。
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