第八章 - 青春時代① 第一回サマー・スクール Ep.5:新たなる出会い
<エリスのサマー旅行記⑫ 新たなる出会い>
日曜日はディッカー校から南西方向にある、イギリス海峡に面した町『ブライトン(Brighton)』へのゆったり旅だった。エリスたちは各々、いつもとは別のグループで行動し、ブライトン・ビーチ周辺の浜辺を歩いたり、露店で遊んだり屋台で美味しいものを食べたりした。
エリスは女の子グループに混ざって、軽快にガールズ・トークしながら(内容が完全にそうだった)、カットされたスイカやパイナップルを食べたり、あとフィッシュ&チップスも食べたりした(驚くことに彼は、まだイギリスに来て一度もF&Cを食べていなかった)。
でも最も落ち着けたのは、ただ黙々と水辺で『水切り』した時間だった。当日はあいにくの曇り空だったが、海の波は穏やかだったので、水切り石は5~7回くらいまでよく跳ねてくれた。ただ海水浴シーズンでもあったので、人気のない水切り場を探すのには苦労した。
あっそうそう、内陸国のスイス出身のエリスにとっては、本物の海を見る経験はこれが初めてだった。もちろん彼は興奮したし、誰もが一度はやる『波際ギリギリまで引き付けて、波が来たら「わーっ!」と言って逃げる遊び』もバッチリ楽しんだ。
潮の香りも新鮮で、何もかも充実して満ち足りた気分になっていたが、ふと故郷のレマン湖を思い出して、家族が恋しくなるエリス……。あぁ、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんに会いたいなぁ――。時刻は18:00。黄昏時にはまだ少し早かった……。
ここでワンポイント解説! 執筆現在の2025年ではイギリス並びにEU諸国、そしてEU非加入国であるスイスや、その他アメリカなどでも、3月最終日曜日~10月最終日曜日の間には、『サマー・タイム(英国夏時間: BST)』という時間表示が採用されており、通常我々が従っている『グリニッジ標準時(GMT)』よりも1時間進んだ時刻を示している。
これは高緯度の国は夏の間、日中となる時間が長くなるため、それを有効活用するために採用されている制度なのだが、2040年ではほとんどのヨーロッパ諸国でサマータイムが廃止されており(単純にややこしいのと、未来の時計は自動で起床アラームなどを調節してくれるため)、エリスたちが目撃している時間はGMTだということを、ここで宣言しておこうと思う。
よって7月22日のロンドンでは日の入り時刻はBSTでは21:00前後だが、GMTでは20:00前後ということになる。黄昏時にはまだ1時間半ほど早いのだ。エリスは最後に残していた『とっておきの石(大きさも形も完璧! まるでサーフボードみたい)』を海に投げ返してから、ガッツポーズして帰路に就いた――心が乱れていた彼の一投は、波に阻まれてあっけなく撃沈した。
*
19時ジャスト。ディッカー校に帰ってきたエリスとテムバが寮部屋のドアを開けると、中に見知らぬ男の子がいて、熱心に腕立て伏せをしていた。きっと新入りだ! そう思って二人が挨拶しようとした矢先、男の子が二人に気づいて立ち上がった――彼はエリスのことを凝視しながら硬直している。エリスは彼のことを見て、少しティエンジェのことを思い出した。もしかして彼は、いきなり僕らが現れたからティエンジェのときみたく、シャイになっているのかな――。
「やぁ――」エリスが第一声を発したのと同時、男の子が「うぉぉぉぉぉぉ!」と叫び声を上げた。エリスとテムバが戸惑うなか、彼は二人には理解できない言葉で独り言を唱え始める。「Majika...Kawaisugidaro...Dousuruyo? Ikuka? Ikukkyaneeyona? Otokonara!」それは呪文のようであった。
詠唱を終えた彼は、何らかの加護を受けたかのように決然とした表情を浮かべ、急に二人の目の前までズンズン歩いてきては、エリスの片手を取って片膝を突いた。「結婚しよう(Let's get married.)」彼の口からとんでもないセリフが、指輪のように差し出される。これには、さすがのテムバも黙ってはいられなかった。
「うぉううぉううぉう――」テムバが彼らの間に割って入る。何だこいつ……いきなりエリスにプロポーズしたりして……隣の俺はアウト・オブ・眼中かよ? 俺はお前らの挙式に呼ばた介添え人じゃないぞ! いや落ち着け、クールにやり過ごすんだ。相手は新入りの東洋人なんだ。「悪ふざけはそれくらいにして、ちゃんと自己紹介しよう。君は新しくスクールに来た生徒なんだろう? 俺はテムバ、そしてこっちのか――」
「あっ? 何だテメェ? 俺の『可愛い子ちゃん』の彼氏か?(Huh? Who the hell are you? You the boyfriend of my 'CUTIE'?)」男の子が鬼の形相をテムバに向ける。なっ、なんじゃコイツはぁぁぁぁぁぁ! っていうか、か、か、彼氏!? そんなふうに見えるのか!? ま、まあぁ? そういうことなら否定しないでおこうかのぅ?
「彼氏かどうかは関係ない! いきなり初対面で結婚とか言われても、冗談にしか聞こえないし、それじゃエリスが迷惑だろうと――」
「へぇ~君、『エリス』っていうだぁ~(Oh, really? Your name's 'Ellis', huh?)」男の子が、テムバの影に隠れるエリスに甘い求愛ボイスを掛ける。「エリス、俺と結婚してくれるかい?(Will you marry me, Ellis?)」こ、こいつ~性懲りもなく~!
「いいかい? 君が思い違いするのも無理ないが、エリスは『男の子』なんだ。分かるか!?」テムバが応戦する。
「そんなこたぁ分かってんだよ! スクールの校則で『異性の部屋には入れない』って言われたばかりだからなぁ!」男の子がテムバを突っぱねる。こいつっ、なんて力だっ――。こ、校則には『暴力禁止』もあるんだからなぁ!?
「じゃお前ゲイか!?」テムバは高圧的な態度になるのを抑えられなかった。そうだ、こいつはゲイに違いない! 派手なピアスにネックレスまで着けて、髪の毛はブリーチしてピンク色のメッシュまで入れてやがる。服装だって上はタンクトップ一枚だし……その浅黒く日焼けしたムキムキの筋肉を見せびらかしたいだけなんだろう――。「それともバイなんですかい!?」
「いや俺はストレートだ! でもエリスと結婚できるなら喜んでバイになるし、ゲイだろうが他のなんだろうが好きに呼ばれても構わねぇ!」男の子は堂々と宣言する。「俺はエリスにひと目惚れした! 添い遂げられるなら、この身を捧げたっていい! なぁ頼む、俺を受け入れてくれエリスゥゥゥゥ」彼は無遠慮にエリスに抱きつこうとするも、テムバはそれを頑なに阻止する。
「相手の意思も尊重しろ! お前そんなんで、よく今まで生きてこられたな!?」とテムバ。「中国人か? 韓国人か? それとも――」
「グゥゥゥゥゥ~」突然、誰かの腹の虫が大声で鳴いた。衝突してた二人が虫の居所を探り当てると、エリスが照れくさそうに腹を押さえていた。
「えぇっと……僕お腹すいたんだ。よかったら、カフェテリアでお話しない?」
<エリスのサマー旅行記⑬ 超肉食系男子『カイト』現る>
ガツガツと肉を頬張りながら、互いに敵対心を剥き出しにしている二人の男子に挟まれながら、エリスは美味しそうに『スコッチブロス(ラム肉と大麦、根菜が入ったスコットランド発祥のとろみのあるスープ料理)』やサラダを食べている。まるで彼らのイザコザなど意に介していないようだ。はたからすれば、どう見たって三角関係の修羅場だったが……。
エリスの右手側でソーセージを貪っている新入りくんは、『長瀬 海翔』という名前の、千葉県から来た17歳の日本人だった。プロサーファーになって世界大会で優勝するのが夢で、今は地元の大会で結果を出しながら、チャンスが来るのを待っているそうだ。プロの先輩や元プロの父親から英語はひと通り習ったらしいが、少しガラの悪い人たちのようで、荒っぽい言葉遣いが移ってしまったとのこと。
彼は今年の春、練習中にやや重い怪我をしてしまったようで、その怪我自体はこれまで治療とリハビリをしてきて大分回復したようなのだが、大事をとって夏はオフシーズンにしたことから、こうして気分転換にサマー・スクールにやってきたのだと言う。話を聞きながらテムバは内心、『なるほどアスリートか、どうりでガタイが良いわけだ。でも口が悪いのはティーチャーのせいじゃなく、お前自身の態度の問題だろう!』とツッコミを入れていた。
「あの……カイト?」スープを飲み終わって、スプーンを器に置いたエリスが、何かを覚悟したように話し出す。「さっきの『結婚』のことだけどさ……」おっと、まさか承諾するわけではござらんな? テムバは心中穏やかではなかった。ちなみに日本やイギリス、スイスでは婚姻は男女とも18歳以上から可能で、婚約には年齢制限はない。さてエリスはどんな回答をするのだろうか?
「ごめん、今はまだ約束できないかな」彼の返答は至極当然のものだった。「まだ君のこと、あんまり知らないし、君も僕のこと知らないでしょ? 結婚って、強い絆と確かな信頼関係を築いた二人が、一生に一度だけ交わす神聖な契約だと思うんだ。だから……ごめんなさい」
「だったらこれから知り合おう!」カイトが懐からスマホを取り出して、その画面をエリスに見せつける。「ほらっ、これが俺のインスタだよ――あっ、フェイスブックでもよかったら友達になろう? 今の時代アプリさえ使えば、相手を知ることなんて簡単――」
「ごめん僕、SNSはしてないんだ。僕自身あんまり興味がなくって、それにお父さんにも禁止されてるから……」エリスが申し訳なさそうに告げる。現代的すぎるコミュニケーションは、表面的な情報しか交換できず、またプライバシーの問題もあったため、彼の父親は使用を控えるようにと忠告していたのだ。実際これは保護者として正しい指導である。画面のなかの偽りの幸福など、青春真っただ中の彼の人生には不要なものだ。
「そっか……」カイトが残念そうに腰を下ろす。ちぇっ、たぶん脈なしだな……エリスが迷惑がってるのが伝わってくるぜ……あぁそうさ、俺もあっち側の立場をよく知ってるしな……だが、それでもまだ――。「でもさ、こうやって直接話して知り合っていくってのはОKってことだよな?」彼はまだ諦めていなかった。ポジティブなバイブが満ちてくる!「これから結婚を前提として、強い絆を育むために『お付き合い』するってのはどうよ?」
「えぇっと……」エリスが返答に困っているので、僭越ながらテムバが代弁する。「無理に決まってるだろう! 君は日本、エリスはスイス。住んでる国が遠すぎるし、そんな遠距離恋愛が簡単に成立すると本気で――うっ」カイトに鋭い眼光を向けられ、ついテムバは怯んでしまう。こ、こいつの目……ガチで一人、二人くらい殺ってるだろ――。
『うっせぇぇっ、そんなこたぁ言われずとも分かってんだよ! 仮にこれからエリスに好きになってもらえても、遠距離でいつまでも気持ちを繋ぎ留めておける自信はさすがにねぇ! クソがっ!』カイトは必死に考えていた。何か、何か逆転の一手はないのかと……そして思わぬ閃きがあった――。
「ならさエリス。このサマー・スクールの間だけでも、俺と付き合ってくれねぇ?」カイトが真剣な眼差しでエリスを見つめる。「そんで別れるときにさ、もう一度俺から結婚を申し込むよ。そんとき君がイエスって言ってくれたらさ……俺……」彼は頭を掻きむしって深く息を吐いてから、こう告げる。「君と暮らすために、スイスに移住するよ」
はっ? 何言ってんだコイツ? 単なるプレイボーイの域を超えてるだろ!? その後カイトが、「まぁ、時間は掛かるかもしれないけどさ……今なんか俺、スイスが世界地図のどこにあるのかさえ分かんねぇや」と続けている間も、テムバは呆れて物も言えなかった。エリス気をつけろ、こいつ相当やり手のヤリモク野郎か、あるいは結婚詐欺師かもしれないぞ――。「けどな、この気持ちだけは本物なんだ。なぁエリス、俺にチャンスをくれ」
「そんな勝手な提案――」
「――いいよ?」
耐えかねたテムバがエリスに代わって提案を却下しようとした瞬間、エリスがそれを受諾する。テムバは一瞬、自分の耳が信じられなかった。えっ、いいの? いいはずないでしょ? えぇぇ、い、いいんだ? アグレッシブな態度にほだされちゃったとか? ワイルドだろぉ? って? そんな……。当のカイト本人も同様に耳を疑っていたみたいだが、返事の意味が理解できるにしたがい、顔全体に笑顔が広がっていった。
「ほ、本当か?」カイトが改めて確認する。
「うん! 僕、まだ恋ってしたことないんだ。だから今のうちに勉強しておきたくて……」エリスが上目遣いでカイトをうかがう。「そんな理由じゃあダメかな?」ぐはっ! そ、その表情は反則だぜエリス……完全に悩殺されちまった――。
「ぜ、全然ОK! よっしゃやったぜっ、これで決まりなっ!? 俺たち恋人同士だ!?」カイトは完全に有頂天だった。「これからシクヨロなエリス!」
「うん、シクヨロ~!」とエリス。
いや、そりゃちょいと軽率すぎやしませんかね!? テムバはこのカイトとかいうチャラ男のせいで、エリスが悪影響を受けやしないかと気が気でなかった。いつだって純真無垢な子羊はオオカミの餌食になるんだ(ちょっとブーメラン)。お願いだから何事もなく済んでくれ……いや、俺がエリスを守るんだ! カイト! お前を見張ってるよ、どこにいても――。
<エリスのサマー旅行記⑭ テムバの奔走、カイトの焦燥>
あれから夜に新人を含めたレクリエーションがあったのだが、カイトは時差ボケで眠いとのことだったので(イギリスと日本の時差は9時間)、ひと足先に寮に戻って21時に就寝していた。追って寮に戻ったエリスとテムバは、彼を起こさないように気を使いながらシャワーを浴びたりして、22時に就寝した。
とは言え、それから2時間くらいテムバは眠れなかった。カイトがエリスに夜這いを掛けるのではないか、という危惧が頭から離れなかったのだ。カイトめ……もし事を起こそうってつもりなら……すぐに現行犯逮捕して……日本に強制送還……してやる……むにゃむにゃ……。結局その夜は何事もなく、テムバの警戒は徒労に終わった。
次の日。朝支度して午前中の授業(カイトは英語のテスト)を受けている間も、特にカイトから怪しい動きは見られなかった。しかし午後の自由時間になるとカイトは、エリスのところまで来てひと言「デートしねぇ?」と誘い、まんまとエリスを連れ去ることに成功した――当然テムバは彼を追ったが、エリスに「ごめん、今は二人きりにして?」と制されたことで折れるしかなかった。
テムバはエリスの最大の理解者であるニコラに助け舟を出すことにした。彼を探して施設内を徘徊していると、運動場側の男子寮『Stud House(スタッド=種馬)』内のコモンルームで、友達とビリヤードの『9(ナイン)ボール』で遊んでいるニコラを発見した。
※ちなみにエリスたちの寮は学校側の『Dicker House』と呼ばれる建物で、サマー・スクール中は男女兼用となっている。またStud Houseの隣には『Crossways House(クロスウェイ=交差点=♀の暗号)』という女子寮や、『The White House』という校長用住居、『Knights House』という管理人用の住まいなどがあり、生徒用の寮のコモンルームにはビリヤード台の他、フーズボール(テーブル・サッカー)台やピアノなどが設置されている。
テムバはニコラに事のあらましを説明し、『エリスが今チャラ男とデート中だ』ということを伝えた。するとニコラは「あんっ? まぁ好きにすればいいんじゃね? 別に俺には関係ねぇし……エリーにとっても良い社会勉強だろ?」と、気にも留めていない様子だった。見損なったよニコラ。君は誰よりもエリスを大切に思っていると信じてたのに……俺の買い被りだったな――。テムバがその場を立ち去ったそばから、ニコラは簡単そうなマッチボールへの一打を、盛大にミスショットしていた。彼も動揺していないわけではなかったのだ。
一方そのころエリスとカイトは、あの『ダックダックゴー事件』が起きた池に来ていた。エリスがカイトにそのときの様子を面白可笑しく話していると、池の方から水鳥たちが泳いで近づいてきた――もしかすると彼らはエリスの声と、あのペレットの味を覚えていたのかもしれない。エリスはしゃがみ込んで、「先週はごめんね。ちゃんとご飯あげられなくて」とアヒルたちを撫でなでし始める。餌がなかったからか否か、その日のアヒルたちは大人しく、どこかエリスに謝っているようにも見えた。
『あぁクソ、マジで可愛い……俺マジでこの子と付き合ってんだな……』カイトはそんなエリスを見つめながら、自分の置かれている幸運をしみじみと痛感すると同時に、はやる気持ちを抑えるので精いっぱいだった。けど、与えられたチャンスは長くねぇ……積極的に攻めてくしかねぇんだっ――。
「なぁエリス……」カイトが神妙な面持ちで切り出す。「『セックス』ってしたことある?」彼は変化球など持っておらず、ど真ん中直球勝負を挑むタイプだった。エリスは少し驚いた顔をした後に、難しい顔になって、最後にキョトンとした顔で「セックス(性別)?」と聞き返した。
そっかそっか、知らねぇか……たぶんエリスは『箱入り息子』だったんだろうな。きっと親とか周りの人間に大切にされてきたんだ……それもそうか、こんな子に世の中の穢れを知ってほしくないよな……。カイトは恋人(仮)の予想外の反応を前に、この場合どうしたものかと、次の一手を考えていた。
※ここで重大な補足として、世界の性教育事情について説明しておこう。世界の国々、特にヨーロッパの国々では、日本よりもずっと早く・深く・オープンに、性教育を扱う傾向があるのだが、どういった単元で行うかは国によって、学校によってバラバラだったりする。エリスの生まれ育ったスイスでは、小学校低学年くらいから徐々に行っているのだが、それらは当然それほど踏み込んだ内容ではない(それにエリスは他の人と身体の構造が違うので、それらの授業はほとんど理解できなかった)。
踏み込んだ内容になるのは中学生からなのだが、それも毎月『保健』や『生物』の授業で取り扱うという学校ばかりではなく、『特別教育』の一環として限られた時期に集中して扱う学校も多い(まさにサマー・スクールのように)。そしてエリスの通うモーザー校では後者のタイプだったし、エリスはあろうことか、その週をインフルエンザで休校していたのである。そういう経緯から、エリスが性知識に乏しいという状況を寛容に、ご理解いただければと存じる。
「へぇ~、セックスを知らないんだエリス? おっくれてるぅ~♪」カイトは軽快におちょくってから、エリスに手を差し伸べてこう言った。「なら来いよっ、俺と『お勉強』の時間だ」
「うんっ」純粋な好奇心から、その手を取ろうとするエリスは、その間際に何か、重大な問題に気づいて手を引っ込めた。「あっ、でも僕……」彼は気づいたのだろうか? それが『危険な授業』になりかねないことに――。「その前にまず、手を洗わないとね?」池の水に塗れた手を見せながら、エリスが屈託のない笑顔を浮かべる。
「お、おぅ……」出だしから心挫かれるカイトだった。あぁ俺、すげぇー悪いことしようとしてるな……。大丈夫、行ける! 心を強く持て俺――。
さて、次章描かれる二人の『お勉強会』。いったいぜんたい、それはどんな内容なのだろうか? 乞うご期待!




