50.召喚士と試練の渦 6
「――ちぃっ、この痛みは間違いなく光エルフの……ライゼルっ!! アタシの所に退避しろ! そのままだとお前も消えるぞ」
「えっえええ!?」
ユーベルが言う通り、俺の全身にも光の熱さと痛みが広がりを見せていて、俺がいてもお構いなしの神聖攻撃が、今すぐにでも展開されようとしている。
俺の目の前にいたマリムはすでに光に包まれていて、よく見えない。
「ひっひぃぃぃ……!」
「――ったく、面倒な奴を呼んだかと思えば、ライゼルをも忘れている? それとも何かの歪みで記憶が落ちたか」
情けないことに、ユーベルに守られるような体勢で彼女に覆われ、抱きしめられてしまった。
「動くんじゃないよ? 少しでも触れたら切り刻んでやるから……」
「は、はひ」
「……心が入っていないルムデスに怖れを感じるだなんてね」
「どうして俺のことが分からないんだろう……」
「や、やめろ! い、息がかかる……殺されたいのか」
「……ぃぇ」
何も言わないでおこう。
確かにユーベルの言う通りで、呼び出したルムデスは、俺が初めて出会った時とも違う怖さがある。
いくら魔力が溢れていたからといっても、まともな召喚が出来たとは限らない。
しかもよくよく思い出してみれば、ルムデス本人を召喚して味方にしたわけじゃなかっただけに、思い浮かんだ神聖の使い手と名前だけを望んだのがまずかったのか。
「――ち、光が消えていくってことは、終わったか」
「え? まさか、マリムを消した――!?」
「いや、そもそも召喚妖精は、ライゼルを試す為だけに現れた存在だろう? 悪しき存在じゃないなら、神聖魔法で消されるわけじゃない」
「じゃあ――」
「……悪いけど、アタシはしばらく消える。失敗だろうと、ライゼルが召喚出来るってことが分かったからな。それに、土の妖精なら今のやつで降すことが出来ただろうさ」
「え、ちょっと……!」
「じゃあな、召喚士」
抱きしめるようにして覆っていたユーベルはすぐに俺から離れ、そのままどこかにいなくなってしまった。
ルムデスの光で状況がよく見えなかった空間は、すっかりと静寂に包み込まれている。
ああ言っていたけど、マリムはどうなったのだろうか。
俺の召喚に期待していたとはいえ、もし消えたとなれば、このままこの先に進んでいいのか迷う。
「――召喚士、あんたの名は?」
「……! え、うわっ!?」
何も警戒せず、ただただ眺めていた俺の背後に、土の妖精マリムの姿があった。
しかもそのまま、逞しく盛り上がった胸部に吸い込まれていて、逃げられない状態になっている。
「ラ、ライゼル・バリーチェ……あの、大丈夫ですか?」
「ライゼルか! あたしはマリム。地神ハシュマリムってんだ。あんたの魔力に助けられたってことで、認めてやるよ!」
「え? 助けられ? ど、どういうことです?」
「さっきのアレは、初めて呼び出しただろ? 心も何も無いエルフなんざ、初めて見た。神聖魔法で消されるほどやわじゃないが、ヤバイと感じた時にどういうわけか、途中でいなくなってたのさ!」
ルムデスを呼べたのも奇跡みたいなものではあるけど、やはり不完全だったのか。
「つまり溢れていた魔力も、大した量では無かったと?」
「あっはっはっは! 大げさに言っちまったようだね。まぁ、あんなのを呼べる資質があるってのが分かった以上は、力を貸してやるしか無いって思ったわけさ! あたしらの試練は残り二つ……いや、シルフィードから逃げて来たから、三つかぁ?」
やはり試練からは逃れられないのか。
それにしてもルムデス……、彼女を無理やり召喚して、記憶の無い状態にさせてしまった。
元の場所に戻った彼女は無事なのだろうか。
今誰と一緒にいるのかさえも分からないままとはいえ、まさか中途半端に呼ばれるだなんて思わなかったはず。
アレが本来の力で彼女の姿なのだとしたら、ユーベルが恐れるのも分かる気がする。
「あ、あの~……そろそろ放して貰えないでしょうか」
「ん? 何だい、あんた母の温もりが恋しいんじゃないのかい?」
「い、いや、それはあの……」
何故それを……というのは置いといても、マリムは守りの妖精だったみたいだ。
一瞬だけだったとはいえ、ルムデスを呼ぶことが出来たのは自分にとっても、自信に繋がりそうな気がする。
残りの試練はマリムの力もあるし、何とかなりそうだしもしかしたら、他の召喚も出来るかもしれない。
「そ、それじゃあ、先に進みますか」
「おっ! やる気出たね。次はあたしとは相性が悪いけど、何とかなるだろ!」
「へっ?」
「まぁ、あたしが味方になっただけでも違うはずだぜ! なぁ、ライゼル」
「はぁ、まぁ」
今度は俺を覚えているルムデスを呼べるようにしたい……そしてその次はトルエノに――




