47.召喚士と試練の渦 3
「――ったく、あんた本当に最強なのかい?」
「ぐ……」
この空間、部屋もさっき逃げて来たシルフと同様に、相手に有利な状況下で俺に攻撃をして来ている。
マリムと名乗る女性は、俺が召喚した生まれたてのマンドレイクを一瞬で土に返し、俺が立つ地面を地震のような揺れで歪ませ、まるで波打つかのように振動を起こし続けて来た。
そこからは容赦のない攻撃が俺を襲う。
足下が覚束ない状態で、柔らかだった土の表面を岩に変え、その岩で俺を挟み込むようにして、何度も全身に強く衝撃を与え続けている。
「どうした、どうした~! あんた、強いんじゃないのか? 森の大木から言葉を得たくせに、ここに来てまた迷い出したって言うのかい?」
「……はぁっ――はぁはぁはぁ……息が苦――」
シルフと名乗った妖精がいた部屋は、木々に囲まれながらも涼し気な風が、時折どこからか吹いて来ていた。
だけどこの部屋は、乾ききった土と水気の無い岩が無造作に散らばっているだけで、口中は乾ききり、息をするのも吐くのも、ままならないほど苦しい。
「つまらない奴だ。悪魔か何か知らないが、本来召喚するべきあたしらをガン無視して、ふざけた悪魔なんぞを呼ぶから、こういう目に遭っているんじゃないのかい!」
今、何て言ったんだ――?
本来はいま目の前にいる女性や、シルフの妖精を呼ぶのが召喚なのか?
「あんた、何を学んで来たんだい! それともアレかい。最弱召喚士とかいう謂れで、同じ人間にやられっぱなしだったから、召喚すべき獣を呼べなかったとかいうクチか?」
「ち、違う……トルエノやイビル、ルムデスは俺が間違いなく召喚した……」
「どっちでも構わないさ、あんたはシルフも含めてあたしらを倒さないと、外に出られないんだから」
「……く」
何をどうしたって圧倒的に力の差が違い過ぎる上、目の前の彼女に至っては自在に土や岩を操って、俺の体に的確に当てて来ている。
「やれやれ――マンドレイクでも構わないから、呼び出して見せなよ! 武器もロクに持たずに今までは何かに助けられて来たんだろうが、まずは攻撃を司る精霊でも何でもいい、召喚しな」
召喚する暇も与えないし、呼んだところで何かが劇的に変わるでもない。
何が呼べるとは思えないが、唱えてみるしかないんだ。
「……我が望み、我は求む、刃を以って闇を満たす者をこの身、この地に願わん……」
「ほぅ……? それがあんたの言ってやつかい。何でもいい、何が出て来るんだ?」
何が出て来るかなんて、唱えの言を適当に並べただけで、自分にも分からない。
望んだことと言えば、今すぐ俺に力を貸してくれる攻撃性の高い者を望んだくらいだ。
◇
「――出ないねぇ。やはりそんな程度なのかい?」
「……うぅ」
武器も使えない、盾もあるわけじゃない……そんな俺が、どうやって召喚妖精を倒せるって言うんだ。
そう思いながら項垂れようとしていると、耳元で”彼女”の声が聞こえて来た。
『ようやく必要としたね。求めず果てるなら、それまで。……でも、ライゼルが刃を求めるなら、あたしは手を貸してやるよ』
「ユーベル……っ!」
「やはりそういう召喚をするわけかい。どこまで持つか、あたしがエルフを試してやるよ!」
俺が望んだ彼女では無かったが、こんな敵に対してくれるなら闇エルフでも構わない。
ここで何とかして、自分の力を取り戻したい。




