46.召喚士と試練の渦 2
声だけが聞こえて来る……そして気づけば、足元は固い岩によって動きを封じられていた。
「何だい、召喚士のくせに姿を求めるのかい?」
「こ、声だけじゃ、た、戦うこともままならないはずです」
「へぇ、さっきは逃げ出したくせに、あたしとは戦ってくれるのか! 気に入ったよ! そうまで言うなら、あたしの実体を現わしてやろうじゃないか」
隙を見つけて、足元が自由になればいい……その為には、そうするしかないんだ。
声がした足下は動かず、周りの岩や土の壁が、曲がりくねった様にして動き始めた。
まるでこの部屋、空間そのものが彼女というべきかのように。
「――出て来てやった! あんた、召喚士だろ? 何でもいい、呼び出してこの部屋ごと破壊してみな! そうしたら、ずっと気にしている足下を柔らかくして隙を作り出してやろうじゃないか!」
どこからか姿を見せた彼女はさっき出会ったシルフとは違い、筋肉質な体つきをしていて、腕っぷしの強さは、どう見ても敵いそうにない。
見た感じはイビルをさらに逞しくさせた、強気な女性のように見える。
「も、もう駄目元だ! 大地に根付く数多の……じゃなくて、大地に眠る双葉の――」
「――へぇ? あたしの前で、大地の妖精を呼び出すのかい?」
召喚する力は手元に感じられて来ないが、土が見える場所ならもしかしたらここに呼べるかもしれない……そう思って、唱えをしてみた。
「……ぴぎぃ」
「えっ」
「あっはっははははっ! 何だい、そりゃあ! 何を呼び出すかと思えば、生まれたてのマンドレイクかい」
「ギギィ、ピギィ……」
「え、えええ……イビルじゃないなんて、そ、そんな」
それほどまでに、召喚する力は残っていないのだろうか。
「……ふん、たとえ成長しきったマンドレイクであろうと、あたしの前では何も出来ないだろうな!」
「そ、そんなことは無い! 彼女なら、彼女の毒なら……!」
「少しはやる気が出たのかい? どうやらあんたは仲間か味方かはどうでもいいが、自分が支配下に置いているモノをバカにされると、力を出す系のようだな」
「い、いや……」
「それと、それが人間ではないってこともだ。それもそうか、あんた人間に罵られるのが嫌で滅してしまったわけだしな! 召喚士の味方をする者なんざ、獣くらいしかないか」
「ち、違う……」
「何が違うっていうのさ! 人間が嫌いで冥界送りをしたんだ。今さらのことだろうさ」
イゴルもルジェクも……村にいた時の仲間だったに過ぎないはずなんだ。
それをトルエノの力によって、僕はあいつらを滅しただけに過ぎない。
「あははは! あんたの召喚士の力を、大地のマリムに見せてみな! そうしたら、アタシがあんたに力をやるよ!」
「……や、やってやる! ぼ……俺は、最弱じゃない」




