45.召喚士と試練の渦 1
何も召喚出来ない……
最強になったはずの力は、一体どこへ消えたというのか。
何でこんな状況なのに、試練を与えて来るんだ。
「召喚士ライゼル……あなたが冥界の獣を召喚したことは知っていますよ。その力を使って、シルフに示すのです!」
「ま、待ってくだ――」
「何もしないのであれば、こちらは風を起こしあなたを切り刻むだけ」
友好的な妖精なのかと思っていたら、すぐに攻撃を仕掛けて来られた。
親父に会っただけで、まだ何の力も戻っていないのに。
「邪悪にも冷酷にもなったあなたには、あなた自身が知らない力がある。それを使い、シルフであるわたしを倒しなさい」
「そう言われても……召喚する感覚が戻っていないのに、一方的にこんなこと!」
「――あ! どこへ行くのです?」
「た、戦うつもりじゃないので、僕は元来た道に戻ります」
いくら可愛らしい姿の妖精でも、今は戦わずに森を抜け出したい……そう思っていたら、この場から走り出していた。
状況の流れでは、戦って善戦して召喚の力を取り戻せたかもしれない。
だけど今はまだ、そういうことをしたいわけじゃなく、誰かに会いたい……それだけだった。
「何だい、ありゃあ? アレが悪魔に力を貸した召喚士~?」
「……そうです」
「どこにも逃げられねえってのに、仕方無い奴だね。しょうがない、アタシから力を使わせてもらうよ!」
「他の二人には何と?」
「ごちゃごちゃ言わず、アタシからやらせろよ」
「加減はしてくださいね。彼は悪魔に力の大半を奪われたと思い込んで、弱気になっているのですから」
トルエノに会いたい……いや、みんなに会いたい。
それだけを思って、目的も無く一心不乱に走り続けた。
洞窟は一体どこまで続いているのか、そう思っていると、またひらけた空間に出た。
さっきとは違う土や岩で出来た部屋だ。
「どこに行くつもりでアタシを踏みつけている?」
「……え」
気のせいか、強気な姉御肌の声が足元から聞こえて来た気がする。
「勝手に入って来て、シカトか?」
姿が見えないのに、返事をするべきなのだろうか。




