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自作小説倶楽部 第14冊/2017年上半期(第79-84集)  作者: 自作小説倶楽部
第79集(2017年1月)/「鳥」&「卵」
7/37

06 紅之蘭 著  卵 『ハンニバル戦争 エピソド』

【あらすじ】

紀元前二一九年、第二次ポエニ戦争勃発が勃発。カルタゴのハンニバルは、敵対するローマがまったく予期していなかった、海路からではなく、陸路ガリアを横断し、まさかのアルプス越えを断行、イタリア半島本土に攻め込んだ。そしてカンナエ会戦で二倍近いローマ迎撃軍を壊滅。南イタリアにあったローマ同盟諸市を寝返らせ、穀倉地帯と十五万の動員兵力を手中にした。

 シラクサはギリシャ人の共和制植民都市だったのだが、市民の支持を得た先王が王位に就いた。偉大な先王はローマについた。だが、没した直後、ハンニバルが破竹の勢いでローマ軍を次々と撃破してゆくので、親カルタゴ派がクーデターを起こして政権を掌握しローマを裏切った。

 このため、艦隊を率いて、対シラクサ攻勢を命じられたのが、マルクス・クラウディウス・マルケッルスだった。五層櫂船の舳に立ち、シチリア島を眺望していたこの人は、第一次ポエニ戦争にも参加した古参の将軍であった。――クラウディウス軍はハンニバルと戦って圧潰しなかったため〝ローマの剣〟と称された。この人は学識があり、敵の軍師になったとある人物に興味を持っていた。

 アルキメデス!

 クラウディウス執政官はこんな噂をきいたことがあった。

.

 ヒエロン2世は金細工職人に命じて王冠をつくらせた、しかし直感的に、それが混ぜ物をしたと感じた。

 先王は親族で、エジプト・アレキサンドリアのアカデミアから戻ってきた学者・アルキメデスにこの件を依頼した。引き受けた天才は、さまざまな計算式を連想しながら、湯船につかる。湯船につかったとき、ザブンと浴槽の縁から流れでた。――天才はちょっとした現象から、問題解決のヒントを得るようだ。

 ――まず水槽の水面の高さのところの内壁に傷を刻んでおき、次に王冠を沈めて水位が高くなったところにも傷をつけておく。これで王冠の堆積が分かる。これで知った堆積と同じ分だけの金、ついで銀を沈めて調整。そして三者を天秤にかけてやると、比重の違いがでるのではないか。「解けた!」アルキメデスは、嬉しさの余り服を着るのも忘れて市街地を駆け抜け王宮に入り、先王に良い意味で笑われた。

.

「卵? いや岩石だ!」悲鳴の次に、炸裂音がうなる。艦船マストをへし折り、甲板に木端を巻き上げた。弾道は正確そのもので狙いを外さない。

 クラウディウス執政官は先陣をゆく軍船が城壁の内側から飛んできた石弾の直撃を受け、沈んで行くのを目の当たりにした。

「アルキメデス、ローマに欲しい逸材だ。――わが、兵士たちよ、アルキメデスを傷つけずに捕らえるのだ!」老練な執政官がはにかんだ。

   つづく


【登場人物】

.

《カルタゴ》

ハンニバル……カルタゴの名門バルカ家当主。新カルタゴ総督。若き天才将軍。

イミリケ……ハンニバルの妻。スペイン諸部族の一つから王女として嫁いできた。

マゴーネ……ハンニバルの末弟。

シレヌス……ギリシャ人副官。軍師。ハンニバルの元家庭教師。

ハンノ……一騎当千の猛将。ハンノ・ボミルカル。この将領はハンニバルの親族だが、カルタゴには、ほかに同名の人物が二人いる。カルタゴ将領に第一次ポエニ戦争でカルタゴの足を引っ張った同姓同名の人物と、第二次ポエニ戦争で足を引っ張った大ハンノがいる。いずれもバルカ家の政敵。紛らわしいので特に記しておくことにする。

ハスドルバル……ハンノと双璧をなすハンニバルの猛将。

アルキメデス……ギリシャ人植民都市シラクサの王族。軍師。

.

《ローマ》

コルネリウス(父スキピオ)……プブリウス・コルネリウス・スキピオ。ローマの名将。大スキピオの父。

スキピオ(大スキピオ)……プブリウス・コルネリウス・スキピオ・アフリカヌス・マイヨル。ローマの名将。大スキピオと呼ばれ、ハンニバルの宿敵に成長する。

グネウス……グネウス・コルネリウス・スキピオ。コルネリウスの弟で大スキピオの叔父にあたる将軍。

アシアティクス(兄スキピオ)……スキピオ・アシアティクス。スキピオの兄。

ロングス(ティベリウス・センプロニウス・ロングス)……カルタゴ本国上陸を睨んで元老院によりシチリアへ派遣された執政官。

ワロ(ウァロ)……ローマの執政官。カンナエの戦いでの総指揮官。

ヴァロス……ローマの執政官。スキピオの舅。小スキピオの実の祖父。

アエミリア・ヴァロス(パウッラ)……ヴァロス執政官の娘。スキピオの妻。

ファビウス……慎重なローマの執政官。

グラックス……前執政官。解放奴隷による軍団編成を行った。

クラウディス……〝ローマの剣〟と称賛される名将。マルクス・クラウディウス・マルケッルス。

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