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自作小説倶楽部 第14冊/2017年上半期(第79-84集)  作者: 自作小説倶楽部
第79集(2017年1月)/「鳥」&「卵」
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05 E.Grey 著  鳥 『源平館主人8 公設秘書・少佐』

   //粗筋//

.

 衆議院議員島本代議士の公設秘書佐伯祐は、長野県にある選挙地盤を固めるため、定期的に彼の地の選挙対策事務所を訪れる。夏のある日、空き時間で、婚約者・三輪明菜と混浴温泉デートをした。訪れた温泉宿は、源平館だ。二人が湯から上がったところで銃声がして、駆けつけてみると、宿の主人が密室になった一階書斎で、拳銃を握っているのが分かった。被害者の身内三人が容疑者として浮上した。

    08 鳥

.

 密室殺人があった書斎に集められたのは、温泉旅館・源平館の主、津下吉秋の殺人事件における容疑者は、津下夫人、津下次郎、津下明の三名だ。入口には真田巡査部長が立っていて事の成り行きを見守っている。私・三輪明菜の横にいた佐伯祐が容疑者たちを見回していった。

「仲居の証言。私室で源平旅館主人・津下吉秋が自殺。私室というのは書斎で一階にある。ドアはロックされていて外からは入れない。しかし、いま私たちが入れたのは銃声を聞いた番頭さんが女将さんの許可をとってタックルをかけ、ぶち破ったからにほかならない。津下氏は赤いカーペットの上に血だまりをつくって突っ伏していた。右手には拳銃が握ってあった。津下氏の手には北支南部十九式拳銃が握られていた」

 真田さんの話によると、北支南部十九式拳銃というのは、旧軍がつかっていたというドイツ・ルガー拳銃をコピーしたものだ。北支というのは旧日本軍が占領していた中国北部で生産されていたことを意味している。

 番頭である津下次郎氏がいった。

「その拳銃は七連発ホルスター方式を採用した大戦末期のものだ。兄貴は大戦中、帝国陸軍少尉だったのだそうだ。ポツダム宣言受託後、国民党政府軍に投降した際、武器の一切を供出し捕虜収容所に入り、それから、引き揚げ船に乗って帰国した」

「つまり、義秋氏の所持品ではないということですね」

 

 佐伯が切りだした。

「それじゃあ、みなさん。そろそろトリックの解明といきますか」

「まずはフランス窓から、窓の鍵は単純構造。窓枠の左側がリング、右側が掛け金になっている。犯人は被害者を殺害してから、フランス窓から外にでるとき、掛け金を少し斜めぎみに立てて置いて閉めた拍子に、リングに落ちるようにした窓を閉める際に密室ができる」密室での自死にみせかけているのだが、フランス窓のドアの施錠は、フック式の内鉤で、犯人がでるときに、手でつまんでおき、しめる瞬間にパッと離せば、簡単に閉まるという単純なトリック。窓のドアの敷居には靴の泥が付着。寸法を測れば、犯人の足のサイズまで分かってしまう。――密室の殺人なのに、犯人がこんなトンマなことをするだろうか?」

 そういってから今度は、フランス窓の下の花壇に残された靴サイズの件に触れた。

「殺害された旅館主人津下吉秋氏の夫人、弟・次郎、養子・明といった容疑者三名の靴を押収、サイズを測った。26センチ。身長170センチくらいの身長の人物となった。 該当者は養子の明青年しかいない。リン鉱山、パーティーをやっていた。パーティーは賭博や麻薬煙草喫煙と噂。養子・津下明にアリバイはない」佐伯が続けた。「――殺人の瞬間に呼子笛が鳴った。いったい誰が? なぜ? 何のために? 拳銃殺人との因果関係は?」佐伯はポケットからビニール袋を取りだし容疑者たちにみせた。「花壇の薔薇の棘に糸屑があった。たぶん、犯人が当日に着ていた衣服の線維だろう」

 さらに佐伯が、「明菜君、ちょっとフランス窓と、表庭の窓とを開けてみてくれないか」といった。私はその通りにした。

「それがどうしったっていうんだ」番頭が口を尖らせた。

 風がはいってきた。その瞬間、ヒューと鳥が鳴くような音がした。

「つまるところ、義秋氏が殺された瞬間、隙間風が入った。庭のフランス窓だけではなく、内部の部屋のドアが開いていなければ風は流れない。つまり密室状態ではなかったわけだ。犯人は庭にでる必要はない。靴の足跡をつけたのは偽装、被害者が、右効きなのに、左手で拳銃トリッカーを弾いたようにしたのも偽装だ。犯人は背後から被害者に近寄って射殺。拳銃を利き手の反対にもたせたのも、自死でないことを印象づけさせるためだった。つまり犯人は犯行時刻に旅館内部にいたということになるわけだ」

 佐伯はそう結論付けた。

     つづく (※第8/9話まで了)

  //登場人物//

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【主要登場人物】

佐伯祐(さえき・ゆう)……身長180センチ、黒縁眼鏡をかけた、黒スーツの男。東京に住む長野県を選挙地盤にしている国会議員・島村センセイの公設秘書で、明晰な頭脳を買われ、公務のかたわら、警察に協力して幾多の事件を解決する。『少佐』と仇名されている。

三輪明菜(みわ・あきな)……無表情だったが、恋に目覚めて表情の特訓中。眼鏡美人。佐伯の婚約者。長野県月ノ輪村役場職員。事件では佐伯のサポート役で、眼鏡美人である。

●島村代議士……佐伯の上司。センセイ。古株の衆議院議員である。

●真田巡査部長……村の駐在。

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【事件関係者】

●津下吉秋……源平館主人。被害者。

●津下夫人……吉秋夫人、源平館の女将。容疑者。

●津下次郎……吉秋の弟、番頭。容疑者。

●津下明……吉秋夫妻の養子。容疑者。

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