表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/48

41章 瑩徹のファムフリート

最期の決戦地―――摂理府本営。

オズマ・トフェニ=エデンを表皮として、中に佇む黒幕たちとの最終決戦へ 、2人は臨んだ。

白き聖地を視界に映した彼は、迫りくる畏怖を胸に…全てを決め込んだ。

明羅が咲夜たちをブラックホールで巻き添えにした以上、この腐り切った世界を変えなければいけない。

…尤も、其れが確実に成功すると言う保証は無いが…。


バイクはそのまま更地を疾走する。…他の生物の気配は全く感じない、死した世界の上を…。

エンジン音だけが空しく響く。後方座席で座っていた彼女は、そんな大地を前にして責任を感じた。

自分の起こした行動は間違ってはいない…そう自分自身の心に何度も問い掛けて。


「…もうすぐね」


「…心の用意は出来てるか」


「…当たり前じゃない」


2人を乗せたバイクはそのまま…新世界への架け橋となるであろう場所を駆けた。

オズマ・トフェニ=エデン…全ての元凶を倒し、真実を得るために…。


◆◆◆


摂理府本営…所謂オズマ・トフェニ=エデン。

その前にバイクを泊め、降り立つ2人は緊張しながらも、潜入を試みた。

前までは虫の数ほどいたOBEY兵も、その姿を消失させ、沈黙した空間だけが残る。

蠢きすら無い、虚無空間の中に存在する回廊に足を踏み入れ、緊迫しながらも前へ進む。


レッドカーペットが敷かれた回廊を歩くうちに、地下へと続く巨大な階段の入り口に出る。

2人はその奥に荘厳しさを感じ、お互いが見つめ合っては頷き合うと、2人はゆっくりと階段を下りていく。

摂理府本営に設置された、アダムとイヴの胎内トフェニ・クレイドル

深淵の奥へと、2人は進んでいく。真っ暗な回廊に煌めく、青白い光。

其れは幻想的なオーロラのようにも思えた。


急に2人は巨大な広間へ出る。

そこは今までの幻想的な回廊とは異なって、高い場所に存在する天井には豪華なシャングラスが吊り下がっている。円形の広間の周りには数々の多くの絵が飾られ、その様子は立派な美術館に匹敵するほどであった。


そして、2人の前に影のように姿を見せた、8つの存在―――。

…全て、左腕に捺印スティグマを刻ませて―――。


「…ゼア系譜とミレ系譜。2つの系譜の頂点を失った今、戦えるのは・・・私たちだけだ」


16つの眼差し。スーツ服姿は立派にも、そこに立ち塞がったのは…エニルクスであった。

早苗と明羅を古代図書館での戦いで失い、残った8人は潜入してきた2人に特攻を仕掛けてきたのだ。

今まで何人かは戦ってきた存在でありながら、ほぼ無傷の状態で立っている。

流石はエニルクス、とでも言ったところであろうか。


「…最期の最後まで立ちはだかるのね。…小賢しいわ」


「フン、だから何だ?世界を変えられては困るんだよ、こっちが」


そう前に出て言ったのは封獣ぬえであった。

彼女とは一回も力を交えた事は無いが為に、より一層新鮮に見えた。

背中に生やした、対極的な色同士である紅と蒼の翼を靡かせ、2人を睨み据えた。


「…この世界の事象を何も知らずの儘で粤犬吠雪えっけんはいせつしようとするその心、特に気に入らないね。

…何故受け入れない?…同じエニルクスである以上、望めば摂理府加盟も考えたのに」


「…世界を腐らせる仕事に就くなんて御免よ」


彼女は8人に対して、スペルカードを構えて対峙する。

中央に立つぬえは、後ろに存在する7人の意思を理解し、左手を天に向けて掲げた。

不敵な笑みが、ぬえの余裕を示唆する。


「…私たちは此処まで追い詰められた以上、全てを取り込む。

―――全ては…オズマ・トフェニ=エデンの為に!」


自身も、また他のエニルクスも全てを魂と化した8人のエニルクス。

靄と共に自らを幻象シグマに変化させ、空中で合体化して、一つの大きなエネルギー体となる。

そして、空中に浮かぶエネルギー体が組織を形成し、2人の前に幻象召喚シグマバースする。


しかし、急に問題が発生、8人を組織として産みだそうとしていたものは崩れ、零刻次元体エヴィル・グレッダに為ってしまったのだ。

光を解き放つと共に現れた、巨大な白の最終兵器。

この機械化された平和が持つ世界が遺した、エニルクスの最終兵器でもあった。

その容姿は何処となくアステルウェポンと似ているのを、彼は仄かに感じていた。


「…グギギギギ…コード認証、完了。…全てに於いて異常確認ナシ。

…対象確認完了。―――『リヒト』『レミリア』。

…これより抹殺処分を行います。…グギギギギ…」


背中に存在する、大きな歯車を回転させ、2人の前に立ち塞がった兵器。

彼は鼻で少しだけ笑いながら、太刀の刀身にエニルクスの最終兵器を映した。


「…機械が敵、か。…戦い慣れてるものでな」


「嫌という程トフェニを相手にしてきたのよ、ここで負けて終えるわけにはいかないわ!」


2人は意思を固め、戦う意思を見せた。


「…終わりにしましょう、摂理府のエニルクスたちよ!」


「グギギギギ…コード:[Dizaster Buster]…攻撃開始」


◆◆◆


巨大な零刻次元体エヴィル・グレッダである[Dizaster Buster]…通称「ディザスター・バスター」と呼ばれる兵器は、2人の敵を前にしてエネルギーを最大まで充填させる。

悍ましい生具観念そのものであるディザスター・ブラスターはア・プリオリな直観形式…所謂"空間"を引き裂く次元の一撃を試みたのだ。


原義を問う、その壮大なる一撃を前に2人はすぐさま動いて攻撃を躱そうとする。

放たれた破壊光線は、摂理府本営であるオズマ・トフェニ=エデンと言う外套を壊さんとする。

今まで歩いてきた回廊が光線で崩壊し、退路を断たれてしまう。


しかし、2人は何も怖くは無かった。

破壊光線を避けると、反撃手段の為に左手を掲げる彼。

刻まれた捺印スティグマが光輝き、その凄まじさ上に彼女も驚いてしまう。


「リヒト…それ…」


「私はゾディアック・システム状態になる!

・・・幻象召喚シグマバース!―――『アステルウェポン』!…ゾディアック・システムver!」


靄と共に、本気状態の彼は紅き兵器に変身を遂げると、蒸気を立ち込める。

完全暴走状態となったアステルウェポンは視界に捉えたディザスター・バスター目がけてその右腕を突っ込んだ。


貫通する右腕。

機構の身体を貫き、電流の音を静かに言わせるディザスター・バスターを彼は見据えていた。

しかし、相手も又、アステルウェポンの反対の手を掴んでいた。

取っ組み合いのような姿は、まるで戦隊シリーズのロボットと怪獣の戦いを彷彿とさせる。


「…お前は知らないだろう…。

…今、お前たちの示す行動は…異端駁論いたんばくろんに過ぎない事を…」


ディザスター・バスターは攻撃を蒙りながらも、その言葉を発した。

―――異端駁論。

アドウェルスス・ヘレセスと称させる著作は、エイレナイオスが示した駁論である。

不合理性の立証をキリスト教の基に示したものだが、異端思想としては代表されるものである。


―――2人の取っている行動が、果たして異端なのか。

この世界に順応しないことが、全て真実とは言い切れないのか。

…エニルクスである8人の結集体であるディザスター・バスターがその言葉を発した時、彼は雷に打たれたような感覚がした。

しかし、ゾディアック・システム状態である以上、攻撃を続ける。

至近距離で固定した敵に、自身のエネルギーの一撃を与えようとする。

しかし、敵の兵器はその一撃を見切り、アステルウェポンに腕の一撃で襲撃したのだ。


―――それにいち早く気づいたのは、レミリアであった。

すぐさまスペルカードを構え、アステルウェポンの一撃を確実に決める為、スペルカードを構えた。

右手に携えたカードを、天井の光輝くシャングラスに向けて…。


「―――スペルカード!…神槍、スピア・ザ・グングニル!…ゾディアック・システムver!」


放たれし、紅色の筋の閃光。

…その形貌は絶影か。

紛うこと無き彼女の渾身の一撃は、そのまま皚皚がいがいの兵器に直撃する。

不意打ち攻撃を仕掛けようとしたディザスター・バスターは狼狽え、刹那―――。


…白亜の兵器の断末魔。


―――巨大な電流を空間に流して、そして…黒煙を上げたと同時に爆発した。

…ダイナマイト一個分と同じ位か?…いずれにせよ、その威力は凄まじきものであった。

無事にアステルウェポンから回帰した彼は、彼女の補助に感謝し、礼を述べた。

当の彼女は頬を真っ赤に染め、少し照れくさそうにしていたが…。


「…ありがとな」


「…礼には及ばないわ。…それよりも行きましょう、この先に…」


「――――――待つんだな」


◆◆◆


先を行こうと急いだ2人の後ろに並んだのは、何故か零刻次元体エヴィル・グレッダから回帰し、元の形容を取り戻していた、8人のエニルクスであった。

しかし、以前とは違って、靄が立ち込めている。…幻象シグマの霧であった。


「…私たちは…お前たちに最後の最後まで敗北してしまった。

…死に耐えそうな此の世界で生きている以上、最後まで責任を果たさなくてはならない。

―――私たちは幻象シグマとして生まれ変わった。

…『エニルクスオブラウンド』…8人の摂理府の円卓の騎士として、幻象召喚シグマバースしてくれ」


ぬえがそう述べると、8人は霧と共に空間から姿を消してしまった。

最後の召喚獣を入手した2人は、静かに笑みだけ浮かべると…先の道のりを目指す。

薄暗い回廊の奥にある存在…聖なる父母。


―――アダムとイヴ。


「…後悔はしてないわ。…行くわよ、リヒト」


「…ああ」


懺悔も、そこに空しく潜んでいた。

長かった旅の終焉も、すぐそこまで迫っていたこと…事実を抱いて、2人は足を前に出した。

最後の召喚獣を入手。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ