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29章 轟雷のゾディアック・システム

ゾディアック - システム [ Zodiac - system ]


危険な状況、及び危機的心情に対象者が至った時、普通とは異なった凄まじい力を一時的に得ること。

主にアドレナリンに関することだと分かっているが、機械であるトフェニも使用することから、詳細は不明。

ゾディアック・システム状態での攻撃は常軌を逸脱している。

妖精たちを助け出し、不自由な状態から解放させる2人。

やはり妖精たちは自らの儚さを知り、メソタピア・アルザリオンによる聖櫃化ヴィルドガンズを怯えて待っていた。

視界が開け、そこに映った"抵抗者"の顔が見えた時―――込み上げてきた希望と嬉しさが笑顔を募らせる。


「…た、助かった~」


開幕早々に氷精は安堵の声を上げた。

それに続いて他の妖精たちも安心したかのような声を上げ、お互いに喜び合っていた。

トフェニは強大な存在…そんな定義が妖精たちにあったのだろう、助かるなんて奇跡レベルのことなのだ、と。


「…レミリアとその男の人がトフェニをやっつけたの?」

「せめてレミリア"さん"と呼びなさい、チルノ。…それに彼は"リヒト"、よ」

「フーン…。…でも凄いね、あの変な竜みたいなトフェニをやっつけちゃうなんて!」


チルノはそんな2人を尊敬の眼差しで見ていた。

天真爛漫で、何も考えていない彼女に敬われる事は馬鹿馬鹿しく思えるも、悪い気では無かった。

彼女はそんな眼差しを誇りに感じたのか、偉そうにして見せる。


「そ、そうよ。…私は貴方とは違うんだから」

「―――見栄っ張りは止めたほうがいいと思うがな…」


彼の正論に彼女も少し反省し、見栄を張るのをやめた。

しょんぼりした彼女は憔悴したのか「あー、後は各自で帰ってー」と投げやりに言い放つ。

そんな3人の元にやって来たのは…以前、高速道路崩壊の時に助けて貰ったリグルであった。


「あ、また会いましたね…お2人さん」

「貴方は…リグルじゃない、貴方も捕まってたのね」

「…はい。―――やっぱり2人に思いを託して正解ですよ。…トフェニをやっつけるなんて、私たちには到底及びませんから…」


丁寧な言い方で彼女は静かに述べた。

―――決してお世辞なんかでは無く、彼女の想いを連ねた本音でもあったのだ。


「…この後、みんなを連れて古代図書館に避難させます。…あそこはとてつもなく大きいので、何人でも許容出来ますから。

…もし、他に私たちのような人たちを見つけたら、私の家まで行くよう教えてあげてください。

―――あそこが避難場所になると思うんです」


「…古代図書館の再活用ね。…分かったわ」


レミリアは承諾すると、次なる咒式降誕炉ラ・ヴァース・シュラインを目指すために颯爽と胎内トフェニ・クレイドルから出る。―――彼と手を繋いで。

彼は彼女に思いを任せていた。勝手に引っ張られる彼はぼんやりとして訳の分からない方向を見つめて…。


「…何ぼんやりしてるのよっ」

「…何でもない…。…行くか、次は咒式2號炉だ」


バイクに跨り、彼はアクセルを一気に踏み切った。

大きなエンジン音を立てて、高速道路に乗り上げて白亜の神殿を背景に、一気に駆ける。

―――青々とした水平線の先を目指して。


◆◆◆


―――咒式2號炉。

中からは電流のようなものが溢れ、それが白亜の神殿の表面に流れる。

他の咒式降誕炉ラ・ヴァース・シュラインとは違う点は、中が薄暗い空間では無く、現役稼働中の工場のような中であったところだ。

壁一面に置かれた機械が呻り、フル稼働している。

電流が動く機械の中を通電して迸り、バチバチ音を言わせている。


レッドカーペットの上をゆっくりと歩む2人は幻想郷では非現実的な光景の中を進む。

彼女はそんな空間に気持ちを齟齬させる。…慣れないのだ。

科学を捨て、魔法を得た幻想郷にとって、工場は幻の世界でもあるからだ。

散々トフェニを見てきた彼女であったが、機械しか無い空間にはやっぱり変な感情を抱いてしまう。


「…これが咒式2號炉…」

「―――工場みたいだな。…他の咒式降誕炉ラ・ヴァース・シュラインとは違って」


何を生産しているのか、レッドカーペットの周りに設置された機械は音を言わせている。

その中を搔い潜って、2人は最奥の煌めく世界を見据えて歩む。


―――胎内トフェニ・クレイドル

今までは黄金や白金の彫刻が施され、ステンドグラスを背景にトフェニが存在していた煌めく空間であったが、ここは違っていた。

薄暗い世界で、工場の中心核のような大きな機械を背景に、そこにトフェニは御座していた。

湖も濁っており、電流が流れる。

薄暗い世界を照らす光源は、トフェニの灯る紅い眼と機械を通電させる為にトフェニから流れる電流であった。


「な、何よアイツ…!」


彼女の眼に映る、機械に纏われたトフェニ。

身体中に電流が走り、電気を作っている。機械音が呻る声はまるで絶望の雄叫びのようにも捉えられる。


「…我が名はゼア・トフェニ=ルシナス・ジュール…。

―――貴様らが摂理府と我々トフェニに反逆を示す者達か。…噂は聞いていた」


「…ルシナス・ジュール…電気を司るトフェニね…!」


「…如何にも、だ。…機構は全て電気で補われる。

―――その"電気"を司る我に、貴様ら軟弱な生物が挑むか?…滑稽な話だ」


2人を見下し、軽蔑するルシナス・ジュールに怒りを覚えるレミリア。

だがトフェニの背景である巨大機械が呻る速さを早めると、その事象に彼女は驚いてしまう。


「…うぅ…」

「…怖気づくな、奴は他のトフェニとは何も変わらない。…行くぞ」


リヒトは太刀を構え、目の前の巨大な存在を睨み据える。


「…正義は力で買える。…力で正義を示せるのだ。

―――弱者の分際で、何の正義を示せるのだ?…世界にとっては不利益な存在でしかない」


「なら強けりゃいいんでしょ!要するに!

―――リヒト、貴方の言葉で目が覚めたわ。…行くわよ、傲慢なトフェニに本当の正義を示すために!」


「…そうか、残念だ…。…自らの儚さを知らずして、片道切符を買うとはな…。

…よかろう。…それが貴様らの全てなら…!」


◆◆◆


「…貴様らの力を示してみよ!」


ルシナス・ジュールは電流を更に音を言わせ、雷鳴を起こす。

電流を司りしトフェニは雷の如き勢いを持つ電流を作り出し、それを2人に向けて落としたのだ。

迸る閃光。それにいち早く気づいたのはレミリアであった。


「危ないわッ!」


すぐに彼を押し倒し、自分も避ける。

2人はギリギリその落雷から身を躱すことが出来た。が、改めてトフェニの強さを思い知らされた。


「…す、済まない…」


彼はレミリアにお礼を簡単に述べると、太刀を構え直す。

白銀の刀の先を天に掲げ、彼は一気に暗闇の中で宣言する。


「…幻象召喚シグマバース!―――『ドグマ』!」


靄と共に姿を現したのは、漆黒の逆鱗を身に纏った龍。

その龍は口から一気に炎、水、雷の3属性ビームをルシナス・ジュールにぶつけたのだ。

それぞれの属性が齟齬しあい、やがて硬い装甲を滅茶苦茶にしていく。

役目を果たしたドグマは靄に回帰した物の、ルシナス・ジュールは過大な損失を受けた。


「う…ぐぐぐ…」


「今よ!―――スペルカード!…神槍、スピア・ザ・グングニル!」


放たれた紅き槍は狼狽を見せるルシナス・ジュールに飛んでいく。

が、トフェニはその攻撃を見計らい、カウンターを仕掛けたのだ。


「―――ハイパードライブカウンターON!…充填完了!

―――電磁カウンター未負荷!…異常ナシ!…ゾディアック・システム起動!

…ハイパードライブ、発射!」


自身が作る電気を最大限まで溜め、グングニルが身体に刺さった瞬間―――。

装甲に付けられたカウンター検知器が反応し、ルシナス・ジュールから破壊光線が彼女に放たれたのだ。

―――ガーディアンが放ったハイパードライブなんかでは無い、もっと恐ろしく、悍ましいものであった。


「は…あわわわわ…」

「何してるんだ!早く逃げろ!」


彼女はトフェニが放った破壊光線に、動きを止めてしまったのだ。

身体が強張り、硬直して思うように動かないのだ。恐怖心が…彼女の動きを止める。


「危ないって言ってるんだよ!」


彼は走った。

強張る彼女を押し倒しても、攻撃範囲が大きいハイパードライブから逃れられない事は明白であった。


「いいから…じっとしてろよ!」


その瞬間―――彼は彼女を隠すかのように仁王立ちした。

迫りくるハイパードライブ…彼は彼女を守るために―――。


「うわあああああああああ!!!」


「リ、リヒトっ!」


彼は代わりに攻撃を受け、そのまま倒れてしまう。

が、攻撃を彼によって守られたレミリアは無事であった。

その時、目の前で倒れる彼の姿を見て―――自らの心の弱さとトフェニに対する怒りを覚えた。


「…絶対…絶対許さない!

―――スペルカード!…神槍、スピア・ザ・グングニル!…ゾディアック・システムver!」


◆◆◆


トフェニは巨大な紅き槍を前に、一撃で装甲を貫かれ、そのまま湖の中へ沈んだ。

だが、彼女は自分を庇って倒れた彼を前に、どうしようもない悲しみが込み上げた。


「…そうよ…、…パチュリーなら…パチュリーなら魔法で治してくれるわ…!

―――ごめんねリヒト…私の所為で…!…ごめんね…ごめんね…!」


不意に零れた涙―――。

彼女は自分の下で倒れている彼の顔に涙を落とした。

破壊光線を直撃で受け、罅だらけの機械の身体…。…虚しさが、そこには存在していた。


彼女はすぐに薄暗い中で捕らえられた妖怪たちを助け、古代図書館に行くよう促した。

そして彼女はバイクで彼を後ろに寝させ、そのまま紅魔館までアクセルを踏み切った。

バハムート戦で紅魔館への摂理府営高速道路は崩れ去った。その為、バイクは更地を駆け抜ける。


「…待ってなさい…リヒト…!

―――私が助けてあげるから…絶対私から離れちゃダメなんだからね…!」

[追記]誤字多すぎた…

急いで書くのは厳禁かな?

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