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20章 OBEY潜入ミッション

襲撃に一段落が付き、一端館に戻ったレミリアとリヒトは図書館で今まであった所以を話した。

向こうの世界で曾てレミリアを聖櫃化ヴィルドガンズしたニスト・ペグダムを倒したことを話すと、全員は驚いた素振りを見せる。

美鈴はその場にいたものの、実際には見ていない為何も言えないのは事実であったが―――。


「…それにしても…レミィの言う通りかもしれないわね」

「…何よ?パチェ」


パチュリーは感心した様子を見せ、頷いていた。

それが何に対してなのか―――彼女は分からなかったが、トフェニを倒した事実は明らかであった。


「…私は最初、あんな怪物に勝てるはずは無いって思いこんでたのよ。

―――でも、貴方たちはその"私の定義"を打ち破ったのよ」

「…そうよ、パチェ。最初から諦めていては、何も生み出さないわよ?」


彼女はそう自信満々に話していた。が、それも事実であった。

トフェニが幾ら強大な存在とは言え―――立ち向かうこと…勇猛果敢に挑むことで何かを生み出せるのだ。

その結果が勝利であれ敗北であれ…挑まないことにはどちらも得られない。


「…それにしても、ですね…。…流石はお2人です、阿求を撃退してしまうなんて」

「…それくらい出来る」


彼は静かにそう呟いたが、やはり恐怖は存在した。

トフェニとは言え、機構の神―――力は顕在していた。

彼の中の畏怖―――まとまりのない感情は心の深淵で渦巻いて…静かに佇んでいた。

無寐を伴った感情―――発言をした後に、彼は急に自身を失った。


「…あ、そうだパチュリー。…開発したあの"機械"を2人にも見せてあげなよ」

「そうね。…レミィとリヒト、見せたいものがあるのよ」


◆◆◆


フランに言われたパチュリーは2人を地下室へ案内した。

多くの鉄扉を潜った事は、相当厳重警備していること―――つまり相当大事な物である。

彼女は奥に存在する、謎のスーパーコンピュータを2人に紹介した。

が、レミリアは目の前に存在するスーパーコンピュータを見ては目を丸くしていた。


「パチェ…これは…」

「貴方たち、異次元世界アサライズ・ディメンション・ワールドでニスト・ペグダムを倒したのに空間は崩れなかったでしょう?」

「あ、うん…」


ニスト・ペグダムは主に空間を司る。あの機神龍を倒したことは故に空間を滅ぼすこと。

異次元世界アサライズ・ディメンション・ワールドが崩れ去ってもおかしくないはずなのに、崩れなかった―――考えて見れば、確かにそうであった。


「…それはね、私が開発したスーパーコンピュータ…"トフェラム"によるものなのよ」

「トフェラム?」


レミリアは不思議そうな声を上げた。

パチュリーが開発した機械に、何の意味があると言うのか。


「…これはトフェニが崩れても、そのトフェニが司る現象や事象を代わりに保ってくれる優れものよ。

…簡単に言えば、イジスガンダーの保つ"存在"とニスト・ペグダムの保つ"空間"を今は司ってくれてるの。

…レミィ、私たちの身体は透明じゃないでしょう?」

「…あ、うん」

「そういうことよ」


彼女が開発した"トフェラム"はトフェニの代わりとなる機械であった。

それは素晴らしい事であったが、何にせよ、モノは機械で操られることに多少疑問を抱いていたが。


「…で、この後2人はどうするの?」

「阿求を追いかけに行くわ。…OBEY本部へ行っては何かを企んでそうだし」


阿求が逃げ際にいった一言はちゃんと彼も聞き逃さないでいた。

鮮明な声で、はっきりと呟いた一言―――。


…今からOBEYへ援軍申請しないと…!


太刀を構え、彼もそう決心をした。

レミリアはそんな彼の様子を把握し、彼の右手を掴んだ。

暖かな温もり―――ゆっくりとした感情が、彼に込み上げてきた。


「…行くのか」

「…ええ」


◆◆◆


バイクを運転する彼の後ろで、彼女は更地の世界を改めて見ていた。

寂寥と虚しさが漂う、虚ろな世界を彼女は悲嘆していた。

―――自分たちが行うこと…それが正しいと自分の中で証明する為に、何度でも未来を案じ続けた。

全てを奪い去ったのならば、取り返すまで。


摂理府営高速道路に乗り上げたバイクはそのままコンクリート上を疾走する。

響き渡るバイクのエンジン音。それは静かに通り過ぎて行く―――。


「…私たちは、どんな未来を見い出せるのかな…」


その寂寞を前に、彼女は不安を抱いてしまう。

過去の自分がどんなに勇ましいかれ、結局立ち向かうことに対して恐れを感じてしまう。

しかし、彼の背はそんな彼女に安堵を与えるかのように存在していた。


「…どんな世界でも、見い出せるだろ」


彼の一言は…正しかった。

平和な世界もまた、残酷な世界も、また…。

世界をどんな方向へ導くかは、彼らの行動次第であった。

バイクはやがて局地的に近代化した箇所へ突入する。その奥に佇む巨大ビル―――。


「OBEY本部…」


バイクはそのまま、ビルへと向かっていった。

道路の真ん中に描かれた、白線はもうすぐ途切れそうだ。


◆◆◆


―――OBEY本部ビル。

元々は人間の里に存在していた土地を活用して建てられたガラス張りのそのビルに、阿求はいた。

聳え立つ本部の前までやって来た2人は、入り口から見えない死角に一旦隠れる。

本部入り口ではOBEY兵が監視をしている。やはり潜入は困難なのか。


「…どうするのよ」

「―――ちゃんと掴まっておけよ」

「え!?一体何をするつもりなのよ!?」


一気にアクセルを踏んでバイクを急発進させた彼に、彼女は驚きを隠せなかった。

突発したエンジン音に気づいた監視兵も持っていた銃をすぐにバイクに向けるが、彼は兵士たちに突進しにかかる。

暴走するバイク。一気にスピードを上げ、ガラス扉に突っ込んだのだ。

彼の後ろでいた彼女は衝撃に驚き、目を瞑った。

バイクはそのままビルへ潜入し、凄まじい音を上げて走行する。

ビル内ではサイレンが鳴り響き、多くのOBEY兵がバイクを止めようとして立ち塞がる。


「邪魔だ!」


右手に太刀を、左手にバイクのハンドルを持った彼は立ち塞がる敵を斬っていく。

相手は聖匣アーティファクト、冷たい血が飛び交う中、バイクは奥へ進んでいく。

途中に見えた、エレベーターホール。…バイクで彼はそこまで運転すると、エレベーターのうちの1つが開いた。

その瞬間、中からOBEY兵が出てくるが兵士を轢いてはバイクごとエレベーターに乗り込む。

バイクを追った兵士たちはエレベーターを意地でも開けようと駆けつけるが、間に合わなかった。


直通エレベーターだった為、最上階まで一気に上がるエレベーター。

荒い技に、彼女は半泣きであったのだ。服に多少に冷血が付着する。


「…リヒト…貴方ね…!」

「悪いな。…でも、これもOBEYを鎮圧する為だ。…そう泣くな」


自身の頭の上に乗っかる、仄かな暖かさを持つ掌。

撫でられた彼女は泣くのを止め、彼に対して笑って見せた。


「…えへへ…」


撫でられた事が嬉しかった。

いつもは感情輸入が苦手な彼が…自分の心配をしてくれたこと…。

もう服に付いた冷血なんて、どうでもよくなった。…彼の右手を優しく握り返して…。


エレベーターの扉が開き、薄暗い中に光が差し入る。

バイクをバックして外に出る2人の前に立ち塞がったのは阿求…驚愕した顔を見せて、彼女は佇んでいた。


「…何で貴方たちがここに…!?」

「悪いか?…私たちはOBEYを鎮圧しに来た。…全て、破壊させて貰う」


顔が固まる阿求の前に現れた、甲冑の男。

それは枢機卿であったが―――他の4人と比べて威厳が存在した。

彼はそんな阿求を守るかのように立ち、バイクに乗った2人を見据えた。


「ビル内にバイクでやって来るとは…とんだ無礼者だな」

「…世界をトフェニの支配下に置いた貴方たちよりは余程マシに思えるけどね」

「黙れ!」


重厚感を持つ声に彼女はたじろぐも、すぐに立ち直った。

甲冑の男はそんな2人に向けて大剣を構える。…戦う証拠だ。

それに応じて、レミリアはバイクから降りてはスペルカードを構える。

阿求に関しては後ろでただ怯えるだけであった。


「…私はアロン・グレッダ=ジェノサイスOBEY聖匣管理責任枢機卿だ…。

…全ての管理を受け持つ存在として、邪魔を行う貴様ら"紅魔館勢"を赦す訳にはいかぬ」

「最初から許してもらおうなんて思ったことなんか無いわよ!」


強がる彼女に怒りを示した彼は大剣を地面に突き刺し、大声を叫ぶ。

それは彼がOBEYの全てを任されている身―――枢機卿の中で一番偉い存在として、威厳を保つため…。


「…ならば消え失せよ!この世界から!」

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