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―第漆章 橘のトラジェリー―

 あれから三十分後。



「……はぁ……」



 俺はホテルの廊下で溜息をついていた。……辛かった。本当に辛かったよ……。でも反面、嬉しかった自分もいるのが不思議だ。男ゆえの性か?

 そんなことを考えている俺の隣で……。



「うーん、さっすが高級リゾートホテル!」

「いいお湯だし、夜景も最高だったの!」

「そういえば、ここって海に面しているのを忘れていたね」

「樹里さんがイヤがってプールしか行ってなかったんだから、しょうがないですよ」

「こ、琴美! うるさいわよ!」

「……はぅ……」



 隣で呑気に話をする女ども五人と顔を真っ赤っかに染めている歩美。……そうなるんなら入らなければよかったのに。今はすっかり、全員浴衣姿だ。うんうん、みんな似合っている。



「……あれ? 五十嵐さんと長淵警部?」



 エレベーターに乗るために俺たちが事情聴取を受けたレストランの前を通る時、優稀菜が声を上げた。

 見れば、刑事一行がそこから出ていく。



「もう、現場検証が終わったのですか?」



 一応、念のために長淵警部に訊いてみる俺。



「ああ。現場検証は終わったし、全員の持ち物や部屋の中も全部調べさせて貰ったよ」

「結果は……って言っても、なんにも出てこなかったんでしょうね」

「……残念だがそうだ。凶器の拳銃は海辺に打ち上げられていたよ。海水で指紋は無し。海に投げ捨てたんだろうな。密室の謎も消えた犯人の謎も解けんし」



 うーん、厄介なことになったぞ。

 指紋は無し、密室トリックもわからない。犯人もここに宿泊している客の中に存在中。



「で、我々は一時、撤退するよ。現場に刑事はいらないだろう。なんせ君たちがいるんだからな」



 ……こいつ。もしなにか起きた場合は俺たちの責任にする気か。SICの過失にするために。こんなときになにを考えているんだ。

 みんなもそれを悟ったのか、苦笑している。鏡花に限ってはもう怒りに怒っている。……我慢してくれよ。



「まぁ……こっちを信頼していないなら五十嵐君を置いていくが?」

「じゃあそれで」

「ええ?」



 提案する長淵警部。了承する鏡花。驚く五十嵐刑事。

 身代わり立てやがった。「ほら、刑事も置いていくんだからSICだけに責任を取らせないよ」ってな感じか。責任を五十嵐刑事に押し付けるつもりだな。警察側の過失を全て。



「ふぅ、じゃあ五十嵐君。あとは任せたぞ。バイ」

「ちょ! け、警部!」



 五十嵐刑事が制止の声をあげるがもう遅い。

 残念ながら長淵警部一行は五十嵐刑事を置いてここから出て行ってしまった。



「…………」



 いまだに唖然としている五十嵐刑事。

 その肩に優稀菜がポンと手を置く。



「まぁまぁ、残念なの。第二の事件が起きないように優稀たちも協力するから、腹括ろうね?」

「……はい」

「ぶっちゃけて言うわよ。あんたはある意味での人質よ? おk?」

「……はい。まぁ……私の警察人生が掛かっておりますので……本当によろしくお願いします」



 優しい優稀菜の言葉と、容赦のない鏡花の言葉。温度は天地の差だ。



「まぁ……一応、なんかあって警察クビになったらSICに拾ってあげることも考えてあげるから、シャキッとしなさい、シャキッと」

「は、はい……」



 鏡花の付け足しに五十嵐刑事は少し、安心した様子だった。……いい大人が俺らみたいな子供に慰められるとは……社会もわからんものだね。





               ――To be continued――

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