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―Kyoukas story Episode④ 杉並俊輝の秘密―

 わたしと樹里は教室を出て隣の誰も使っていない特別教室に入る。



「話ってなに? あと、あんた。どこの管轄?」

「十二番隊よ。歩美と同じところ。そこの隊長補佐官」



 ……別任務中の十二番隊隊長補佐官は樹里だったのか……。じゃあ優稀菜のことは歩美から聞いたのかな。



「知らなくて当然よね。だって隠していたから。あんたにも綺羅先輩たちにも。知っていたのは隊長の歩美と雛形総帥だけ。龍侍さんは薄々気づいていたようだけど。雛形総帥も私の潜入を見て見ぬふりをするようにFBIの上層部から指示されていたからね」



 ……FBIの上層部が、雛形総隊長に指示してでも隠していた捜査官……。



「理由は……大体わかっているんじゃないの、鏡花。私たちSICの捜査官の隊長、準隊長格がここに集結している理由」

「…………まだ推測に過ぎないわよ……」

「安心して――当たっているわよ。私たちの本来ここにいる理由は杉並俊輝の監視なのだから」



 ――っ! や、やっぱり……。



「なんで? あいつの記憶喪失がそんなに重要なことなの?」

「ええ。俊輝の過去の記憶は、私たちFBI上層部関係者にとっての最重要機密事項のひとつ……。そして、私は俊輝の過去を知っている数少ない人間のひとり……」



 FBI上層部の最重要機密事項のひとつ!? 樹里がFBI上層部関係者!? 俊輝の過去を知る人物のひとり!? だから潜入を見逃すように雛形総隊長に指示――いや、おそらく圧力をかけていたんだ! た、ただ者じゃないっ! たぶん危険だ!



「ふふっ。でもね、私はたしかに危険かもしれないけど、別に鏡花の敵になることはないと思うわよ? それにね、私は別に俊輝やみんなを騙してなんかいないわ。だって私は正真正銘、俊輝の幼馴染なんだから」



 不敵に笑う樹里。わたしの顔からなにを考えているのかを察したの? だったらなおさら、危険だ。



「……じゃあ、あなたと俊輝は同じところで働いていたのね? おそらく、アメリカでしょ? その組織」

「その通り。もともと、私たちがいたのはアメリカよ」



 ……このことは予測できる。歩美がSICの隊長格、樹里がFBIの上層部関係者だから、ふたりとも、アメリカにいたことぐらい。



「ふん。で、歩美もいたんでしょ?」

「いえ。そのときはまだ歩美はいないわよ」



 ……ん?



「『まだ』だって……?」



 どういうこと? だって、歩美は俊輝のひとつ下の妹よ?



「……余計なこと言っちゃったかな。それにしても、いい運動神経と顔に考えが浮かんじゃうこと。そういうとこ、俊輝に似てるわねぇ」

「???」



 な、なにを言っているの、この娘はっ?



「……また余計なことを言っちゃったわね。まあ、そういうのは歩美に訊けば? あの娘は全てを知っているわよ」

「え? あなたは、全ては知らないの?」



 わたしの問い掛けに一瞬目が遠くなる樹里。



「……私に訊かないでくれる? ちょっと、話したくないのよ……」



 ――ダメだ。ここで訊かないと、樹里からこの話は一生聞けなくなる!



「いやでも聞かせて貰うわよっ!」

「……いやだと、言ったら?」



 途端。樹里の顔が鋭くなり、とてつもないプレッシャーが放たれる。……どこか、俊輝に似ているな……。でも、怯んでいられるかっ!



「こうするのよっ!」



 わたしは樹里に思いっきり跳びかかる! すると……。

 ひょいっとなんなく受け流して距離を取る樹里。……こういう戦闘に手慣れていることがよくわかった。でも、まだまだ! 私は樹里にフェイントを交えた連続攻撃を仕掛ける。しかし……。

 ひょいっ。ひょいっ。

 フェイントに引っ掛からず、正確にわたしの攻撃をクリアし受け流す。



「……弱いよ、鏡花。物凄く弱い。こんなんじゃ、俊輝には絶対に勝てない」

「な、なんですって!?」



 俊輝に勝てない? なら、俊輝の本来の強さは樹里以上ってこと?



「聞こえなかった? じゃあもう一度、言ってあげる」



 見下した視線で樹里が私に告げる。



「あんたは弱い」



 ぶちッ。

 ……あー、キタね。これは、うん、キタ。



「無理矢理にでも聞き出してやるッ!」



 跳び出すわたし。もう完全にヤケになっていることぐらい自分でもわかる。

 しかし、樹里はまったく動じず、ポケットから扇子を取り出す。……?



「――直球な攻撃ほど隙ができやすい技はないよ。そういうのは自分の実力が相手よりも上だと断定したときに使わないと――ほら」



 ――くるん。

 樹里はわたしの体当たりを、まるで回転扉のようにくるりと回って受け流し――。



「――チェックメイト。まだやる?」



 わたしの後ろから抱きつく。そして、わたしの首――頸動脈には広げられた扇子が当てられていた。

 こ、これが戦闘用の扇子――バトルフォンやナイフとかの刃物、または拳銃だったら、わたしの首は間違いなく、吹っ飛んでいた。

 つぅーっとわたしの首筋に冷たい汗が流れる。



「次は扇子じゃ相手はできないわよ? なにがいい? 鉛筆? それとも三角定規?」



 わたしから距離を取った樹里が自分のポケットから筆箱を用意する。……ヤバい! 絶対にヤバい! なんかわかんないけどヤバい!



「……わ、わかった。まいったわ。降参よ」



 手を上げ、投降を意思表明する。



「物分かりがよくて良かった。でも、できれば襲わないで欲しかったかな。どうせ、勝てないんだから」



 まだまだ余裕の笑みを見せながら筆箱をポケットにしまう樹里。……まったくダメね、わたしって。なんでこんなんで隊長なんかに選ばれたんだろう。



「でもね、まだまだ伸びるから大丈夫。いずれは私よりも強くなる」

「? どうしてそんなことがわかるの?」



 さっきの余裕は何処へやら、樹里は少し寂しそうな顔をしていた。



「……そういうのは、歩美に訊いてって」

「ん。わかった」



 どうせ今のわたしが掛かったところで、樹里に赤子の手を捻るように殺される。

 そういうわけでこれ以上なにも話さずに、わたしたちは教室に戻った。





          To be continued

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