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―第壱拾肆章 銀色のリレイション―

「さて。もう時間よ。そろそろみんな配置についたと思うわ」

「ああ」



 夜の十時少し前。ここは向島学園の体育館である。

 話し合いの結果の結果、俺と鏡花が、綺羅先輩と龍侍さんがペアで学園内を巡回する。瀬良さんはまえのビルの屋上でスナイパースコープでの、歩美も瀬良さんと一緒の所で学園中に設置されている監視カメラをジャックしてノートパソコンでの監視を行っている。



『こちら中目無。俊くーん、鏡花ちゃーん、聞こえる?』

「はい。聞こえてますよ」

「こちらも」



 今日は全員がイヤホンマイクで会話できるようになっている。もちろん、綺羅先輩の隣にいる龍侍さんも、ここにはいないけど歩美も瀬良さんも装着している。



『あはっ♪ 良かったー。じゃあ、場所を確認するよ。そっちは学園から一番西側の体育館にいるね?』

「はい。わたしこと十七夜、そして杉並と両名います。こちらも確認を。そちらは学園最東端の校舎四階の三年H組の教室で間違いないでしょうか?」



 慣れた感じで綺羅先輩に返す鏡花。やっぱりすげぇな。



『うん。いるよ♪ 龍ちゃんもねん♪』

『どうも、いるよ』



 龍侍さんの所在の確認を済ませる。



『みなさん聞こえますか? こちら杉並歩美です』

『こちら瀬良琴美。目標地点に到着いたしました。準備完了です。聞こえますー?』



 次に聞こえてきたのは歩美と瀬良さんの確認の声。



「聞こえるぞー、ふたりとも」

「右に同じく」

『はい。わたしこと十七夜、そして杉並と両名います。こちらも確認を。そちらは学園最東端の校舎四階の三年H組の教室で間違いないでしょうか?」



 慣れた感じで綺羅先輩に返す鏡花。やっぱりすげぇな。



『うん。いるよ♪ 龍ちゃんもねん♪』

『どうも、いるよ』



 龍侍さんの所在の確認を済ませる。



『みなさん聞こえますか? こちら杉並歩美です』

『こちら瀬良琴美。目標地点に到着いたしました。準備完了です。聞こえますー?』



 次に聞こえてきたのは歩美と瀬良さんの確認の声。



「聞こえるぞー、ふたりとも」

「右に同じく」

『はいはーい。聞こえているよん♪』

『歩美ちゃん、琴美ちゃん。ともに確認完了だよ』



 俺たちは即座に返答をする。



『それでは、みなさんよろしいですか? 全体の様子と監視カメラの映像は私と琴美さんで監視いたします。なにか変化がありましたら、そちらに連絡いたします。――では、開始してください』

「それじゃ、行きましょう。俊輝。いい練習訓練よ」



 鏡花のその言葉と同時に俺たちは体育館から出発する。

 鏡花は張り切っていた。……やっぱりこのまえのそうだけど、こいつ、こういう「狩り」みたいなの好きなんじゃないのか?……あ。だから「隠密機動隊」の隊長してんのか。納得した。しかもこれを練習訓練扱いかよ。大したもんだぜ。



「おう。出来れば、これは使いたくないんだけどな……」



 俺はベルトに取り付けた拳銃が入っているホルスターを指さす。昼に先生から渡されたものだ。



「わたしだって使いたくないわ。……出来るだけね」



 ……ウソつけ。今、おまえ俺から目ェ逸らしたろ。それにこのまえ、俺に普通にバンバン撃ってきたじゃねぇか。

 俺とウソつき鏡花さんは体育館から渡り廊下に出る。

 この学園では色々な場所が渡り廊下で繋がっている。だから、そのことを利用して一年のときはよく校内鬼ごっこを樹里や優稀菜、ほかのやつらも交えてやっていたものだ。ふたりとも、速かったな。でも今はどうやら、その鬼が俺たちで、逃げるひとがここを夜な夜な徘徊してなにかをしている凶悪犯らしいぞ。イヤな校内鬼ごっこだね。



「改めて見ると広いもんだな。この学園」



 俺はそう呟いた。

 そう。この学園は広いのだ。敷地が。普段俺たちがいる本校舎、職員室などがある別館校舎、芸術塔、体育館などと色々なところがある。さっきも言ったが、全ての場所が渡り廊下で繋がっているからどこへでも行ける。



「そうなのよ。だから、わたしが最初ひとりでここを周ったときは苦労したわ。だって、広すぎてどこに行ったのか忘れることがあったもの」



 苦笑する鏡花。案外抜けているな。こいつは本当に天然らしいな。



「でもね、おかげでこの学園の表側に関しては大体覚えたわ。裏側の部分はあまりわかんないけど、結構隠れるところがあって困るのよ」

「?」



 隠れるところ? トイレとかか? あそこはバレたら袋の鼠だと思うぞ。表? 裏? なんだそれ。



「不思議そうな顔してるわね、俊輝」

「当り前だろう。この学園には隠れやすいようなところはそんなにない」

「ふふっ。だと思うでしょ? こっちよ。ついて来て」



 俺たちは渡り廊下を渡りきり、本校舎の中に入る。するとなにを思ったのか。鏡花が左側の行き止まりのところに俺を連れて行く。ん?



「このまえ、偶然見つけたんだけどね……」



 行き止まりについてしまいこれ以上いけないところに鏡花が向かう。



「どうした。そこはただの壁だぞ?」

「だと思うでしょ?」



 鏡花が壁の一番隅っこの部分に手のひらを当てる。すると……。

 ――ガコンッ。



「!?」



 なにか音がしたと思うと、そこにはなにもなかったはずの壁に入口ができていた。こ、これは!



「隠し扉よ。このことは、もう綺羅さんたちは知っているわ。この通り、この学園には秘密が多そうね」



 か、隠し扉だと?



「この先は前に行ってね。なにもない部屋があったわ」

「じゃあ、そこに潜伏しているんじゃ――」

「ううん。それはないわ。だってこの先の部屋にひとが住んでいたような痕跡はなかった」



 じゃ、じゃあもしかして。



「まだ、そんな扉がこの学園に存在するのか?」

「可能性はゼロじゃないわね。そしてその凶悪犯がその隠し扉をすべて把握しているとしたら、かなり厄介ね。今のところこういう扉はわたしたちが知っている限り三つだけよ」



 ……先生が言った通り、本当に一筋縄ではいけないか。



『こちら、中目無。今のところ三階と四階は異常なしだよ。――どうぞ』



 綺羅先輩が俺たちに伝える。



「こちら、十七夜。杉並とともに現在一階を捜索中。終わり次第、二階に行ってみます。――どうぞ」

『了解。こっちは四階にまた上ってみるね。――以上』

「了解しました。――以上。ふぅ、じゃあ一階を調べたら二階に行きましょうか、俊輝」



 さっきまで綺羅先輩と通信をしていた鏡花が俺に言う。



「おうよ」

「まったく。あなた、立場上ではわたしは隊長よ?」



 ……そういえば、そうだったな。



「まあいいじゃねぇか。俺たち友達だろ?」

「ま、まぁ……ね」



 少し照れたように頬を赤らめさせる鏡花。なぜ照れる。普通のことを言っただけだぞ。



「ほ、ほらっ。早く行くわよっ」



 声が少し上がっている鏡花とともに、俺は一階を探し終え二階に行くため階段のところに向かった。



     ❁ ❁ ❁



「さて、着いたわ。二階ね」



 足音を消して階段を上った俺たち。俺もできたよ、足音消すの。

 上っている途中で鏡花に「練習したの? すごいわね」って訊かれたけど練習なんてしていない。練習するぐらいなのか? あんなの。簡単にできたぞ。



「なんか、素質あるのかもね、あんた。この世界に」



 ……素直に喜んでいいのか悪いのかわからないよ、鏡花さん。



「綺羅さんたちが見逃していなければ、ここにいる可能性が高いわね――って、俊輝、隠れて……っ」

「え……――っ! い、いた……っ」



 ……本校舎内には階段が四つある。

 今俺たちが登ってきた中央階段と、後方階段(学園の正門から本校舎内で一番奥にある階段だから)。後方階段の奥にある非常階段。そして最後は――。



『…………』



 今、俺と鏡花が凝視している一番手前の階段、前方階段だった。そこには――。



「いるわね……」

「ああ……」



 そう、いるのだ。誰かが。シルエットからして細い。女か?



『射殺しますか?』

「ダメよ。捕縛するわ。この学園の秘密、隠し扉の秘密を知っていれば、そのことについて調査できるから」

『了解』



 瀬良さんの射殺の提案を一蹴する鏡花。うん。できれば殺したくないよね。

 よくよく見れば奥の方に女性の方より背丈が高くガタイがいいシルエットが見えるな。あっちは男か。ターゲットはふたり……か。



「――可能性は三つ。どちらも主犯。どちらもおとりとして雇われたプロのダミー。そして、どちらかが主犯。いずれにしても、どちらとも捕まえるわ。――琴美。綺羅さんたちに三階に向かうように言って。場所は前方階段」

『了解』



 ……流石だなと思った。三階に綺羅先輩たちがいれば、ほぼ間違いなく確保できる。



 ――ドックンッ!



 な、なんだ? 俺は自分から無意識のうちに恐ろしいほどの殺気が放たれていることに気付く。しかしこの感覚はどこか、懐かしくも感じる。



「……俊……輝……?」



 鏡花は怯えているのか、俺におそるおそる話しかける。……らしくないな。



「ん?」



 鏡花に振り向くと――。



「――っ!?」



 ビクンッと体を軽く弾ませて驚いていた。……そんなに怖かったか?――っと、そのとき。



 ――どッ!



 俺の体が動き、走り出した。



「!?!?!?」



 鏡花はなにが起こったのかわからないような顔をしていた……ような気がする。



『鏡花さんなにしてるんですか! ターゲットが逃走しましたよ!』

「!?」



 突然の歩美の言葉に面食らう鏡花。

 そう、俺は敵が突然なにかに気付いたように逃げ出したからそれに反応して体が動いたのだ。たぶん、俺の殺気に反応したのだろう。



 ――自分に反応して誰かが逃げたと思ったら、そいつを捕まえろ。ほぼ間違いなく、そいつは敵だ。追え!



 誰かの声が俺の頭に響く。――っ。なんだよ、これ?

 しかし、体はなにかを思い出したかのように走り続ける。



 ――敵に女と男、どちらともいたら、迷わず女の方を狙え。そっちの方が捕まえやすいし、仮に男の方が逃げきれたとしても、そいつに少なからず精神的ダメージを与えやすいんだ。



 ――っ。まただ。また俺の頭の中に誰かが話しかける! なんなんだよっ! 誰なんだおまえはっ!?

 しかし、体は理解したように動き、俺は目の前を走る女の姿を捕えていた。




             To be continued

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