―第参拾伍章 青空のメイドカフェ―
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『いらっしゃいませ、ご主人様、お嬢様』
あれから樹里についていくと、ほかの六人のメイドさんが俺たちを出迎えてくれた。
当然みんな樹里を除いたミスコン上位六名だ。おお、みんな似合ってるぞ。
「やべぇ、すげぇな……!」
「ここの学園クオリティ高いな」
「俺、向島学園に入学してきてホントによかった。嬉し過ぎて涙が……涙が止まらねぇぇえっ!」
「か、可愛い……私もメイドさん、ちょっと興味持ったかも」
男子も女子にも、一般来場客もみんなメイド喫茶にご関心の模様だ。
そうだよなぁ。だってこの会場の教室も、なんかすげぇ本場っぽいもん。本格的なんだもん。
「ご主人様方、ご来店ありがとうございます。時間の都合上、おひと組み様十分間とさせていただきます。さて、ではご指名なさってください」
「お、俺! 十七夜さん!」
「俺は綺羅さんで!」
「琴美よ琴美! 琴美ー、会いに来たわよー!」
樹里の合図とともに次々とご指名されるメイド達。メイドさん達は指名をした客に会釈してテーブル席まで案内していった。そして俺らは。
「当然!」
「優稀菜ちゃんよー。やっほー」
完全に俺の選ぶ権利が諏訪子と奈々さんによって剥奪されているため、強制的に優稀菜だ。
「はーい。ご指名入りましたー……あれ、俊くん、諏訪ちゃん、奈々ちゃんだ。やっほー!」
ポニテメイドも優稀菜がどどんと登場!
す、凄い! 優稀菜のメイド凄すぎるっ! だ、だって!
「お、おい、優稀菜!」
「お胸……苦しくありません?」
「うん……」
優稀菜のメイド服は完全に胸だけサイズがあっておらず大変キツキツの状態だった! これは際どいっ!
「うわぁ……」
「あのポニテの子……すげぇ胸でけぇ……」
「……なんか、妬ましくなっちゃう」
男女問わず他の客からも凄く胸を注目されていた! そりゃそうだ!
「えへへ、まぁ、仕方ないの。みんなのサイズ、今日取り揃えたばっかりで、優稀のだけサイズが合わなかったの」
「どんだけ胸の発育いんだよ! ったく、あたしもなんだか妬ましいぜ!」
諏訪子は自分の胸を見て顔をしかめるけど、そうかぁ? 大体諏訪子や樹里ぐらいなのが日本人女性の平均のちょい上だと思うんだが……。
「まーまー、それは置いといて、久しぶりー、優稀菜ちゃん」
「お久しぶりなの、ふたりとも。まぁ、立ち話もなんだからさ、案内するよ。こっちこっち」
俺たちは優稀菜に導かれるままに席に誘導され、五つあるテーブルの内の真ん中の席に着いた。
椅子は全部で五つある。
「まぁ、あたしらは抵抗ないよな、奈々」
「うん。いいですよー」
「じゃ、じゃあお構いなく」
俺は最初に座ると、なぜかふたりとも俺を挟むように隣に座ってきた。
「…………」
『…………』
『…………』
なぜか、優稀菜が笑顔のまま固まってしまい、他の客からと理子と香織以外のメイドからは白い目で見られていた。……どうして?
それに気付いて気を使ってくれたのか、ふたりは俺の隣から一つ離れてくれた。
「こ、こほん。じゃあ、ご注文どうぞなの。メニューそこにあるから――」
「――そうか、じゃあ優稀菜をくれ」
『えっ』
ピッキーン。今度は全員が反応し、気まずそうに諏訪子を見る。当然俺と奈々さんも。
「ちょっ! おまえら! なにドン引きしてんだよ!」
「いや、いいんじゃないかな。女性同士でもそこに愛があればな。そうだろみんな?」
『おふたりとも、お幸せに。この先どんな困難が待ち受けていても挫けるなよ』
「そっかぁ……優稀、諏訪子ちゃんと結ばれちゃう運命だったのかぁ。ちょっと照れちゃうなぁ。告白にしても大胆なの」
「優稀菜もみんなもやめてくれ! 冗談だ冗談! ノリだノリ!」
「いいのよー諏訪子ちゃん。自分の気持ちに素直になってねー」
「頼む、奈々! これ以上あたしをいじめないでくれ!」
「じゃーおしまいにしましょう。ねー」
『…………』
奈々さんのなんとも言えないほどの普通の笑顔に、俺たちは全員硬直し、諏訪子イジメを終了する。
「さぁさ、ご注文どうぞなの」
「お、おう。じゃあコーヒー一杯」
「あ、あたしもそれで。あっ、ブラックな」
「私も同じものを」
「はーい。かしこまりましたーなの♪」
空気を戻すために助け船を出した優稀菜に乗っかって俺たちは全員ブラックコーヒーを注文した。優稀菜はいつものキャラで奥の方に戻っていった。
「やっほー、俊くん♪」
聞き覚えがあるテンション高い声に加え、もにゅんと背中に柔らかいものが当てられる感覚が俺を襲った。
「き、綺羅先輩?」
「はーい♪」
「ど、どうかなさったんですか?」
早速周りから白い目で見られ、気まずい俺だが綺羅先輩はなにも気にしていないのか、堂々と俺に密着してくる。
「いやー、驚いたよ。まさか最前列、一番先頭に立ってくれていたなんてさ。ジュンちゃんから聞いたよ?」
「い、いやあれは――」
「――照れ隠しはいいよ。今日は私がご奉仕してあげるね」
や、ヤバい! なんか変なスイッチが綺羅先輩に入ってしまってる!
「あ、あんにゃろ!」
「我らが綺羅先輩に……!」
「ご奉仕してもらえるなんて……羨ましぃ!」
店内ががやがやしてきましたよ綺羅先輩! 冗談だとしてもやり過ぎでしょう!
「おまたせしました~、コーヒーで……綺羅先輩!?」
「んー? どうしたの優稀ちゃん」
コーヒー三つ乗せたトレーを持って再登場したわけだが、俺に抱きついている綺羅先輩を見て驚く。
「い、いや、そこ優稀の担当――」
「――言ったよね。オーダーを受けていないとこに行っても構わないってさ」
「ず、ずるいの! そこは優稀の席だったのにぃ!……よぅし! そっちがその気だったら……」
優稀菜は一旦目を瞑って開ける。……ほ、炎が灯ってるぞ。
「ほう」
「綺羅先輩……優稀菜をムキにさせちゃった」
理子と香織は傍から呆れて接客作業をしていた。
一方、客を綺羅先輩に誘惑されてムキになった優稀菜は……俺に抱きついてきた!
そしてわざとらしく優稀菜は、自分の胸を俺に密着させる!
ゆ、優稀菜の胸! つくづく思うけどなんでこんなでっかいんだ!?
「ほらほらぁー、俊ちゃん。優稀の方がいいよね? 優稀はメイドだからこういうご奉仕もアリのはずだよね」
「ゆ、優稀ちゃん! 白昼堂々とそういうことはダメだよ!」
「ん? 綺羅先輩、もしかして嫉妬なの?」
「嫉妬?」
「優稀の胸の方が大きいこと、ひがんでる? 自分じゃこういう誘惑できないからひがんでるの?」
「……カッチーン」
……あ。綺羅先輩キレた。
「いいよ、優稀ちゃん! そっちがその気だったら私だって!」
結構真面目に怒ってしまった綺羅先輩は優稀菜と同じように密着してきた! 周りの男どもの視線が痛い!
「オーダー入り――!?」
「どうしたんすか鏡花さ――え!?」
「ふたりともそこ突っ立ってないで仕事しなさ――!?」
後ろから俺の聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、それはなにかとんでもないものを見たかのようにぱったりと停止してしまった。……嫌な予感がする。
「ちょ、優稀菜、綺羅先輩!」
「な、なにしてんすか!」
「抜け駆け!?」
その声の主はやはりそう、鏡花メイド、琴美メイド、樹里メイドだった。全員可愛いメイドさんなのだが、今浮かべている怒りの眼差しのせいで台無しである。
『ここは私(優稀)のお客さんだから邪魔しないで!』
『!?』
『!?』
『!?』
スリ向いて鏡花たちを見た綺羅先輩と優稀菜の、それはそれは闘志むんむんの視線と強い言葉に俺たちや他の客、鏡花たちが戦慄した。
しかし鏡花たちは懲りてないのか、猛反発してきた。
「はっ、白昼堂々と! いくらなんでもダメでしょう!」
「ご主人様を喜ばせて何が悪いの?」
「ほ、他のお客がいるんだからそんなことしない!」
「だいじょーぶ。それは他のみんなにお任せするからさ」
「それって……酷いっすね」
まったくだ。他のお客さんが可愛そうじゃないか……と思ったのだが「綺羅先輩に罵られた!」「ひゃっほう!」とまあドMが多いことで!
「そう、そっちがその気だったら……」
「こっちもやる権利あるっすよね?」
「とまぁ、んなわけで」
そう言った後……三人は俺に抱きついてきた! ま、周りの視線がさらに痛い!
「ここはわたしが頂くわ! どきなさい!」
「もう! 最初にご指名あったのは優稀なのにぃ!」
「そんなの関係ないわ! このメイド喫茶の地獄のルールの前ではね!」
「すごいなぁ。私が発案したのはいいんだけど、こうもなんとまぁ、本性現れるね。――でも譲る気はないよ!」
「アタシだって負けませんよ!」
……ああ、誰か助けてくれこの状況。五人の怖いメイドさんに囲まれて奪い合いされている俺と代わってくれ。
一方。
「……なんか、奈々。こいつに惚れてる奴らって……」
「……ええ。とんでもなく単純ですけど、怒らせてはいけない系統の方々ですわね。優稀ちゃん然り」
諏訪子と奈々さんはそんなことを言っていた。
「貴様らいい加減にしろ」
バシンバシンバシンバシンバシン!
『いったぁ!』
俺を奪い合っていた五人のメイドを容赦なくトレーで叩く怒りのメイド長こと理子。おおっ、救いの神が舞い降りたぞ。救いの神にしては妙な迫力あるけどな。
「他のお客様への迷惑だ。そんなに俊輝くんにご奉仕したいのなら、夜に家でやれ」
『……はい』
理子の言うことに頷く五人だがちょっと待て。なんだが不穏な単語が聞こえた気がするぞ?
To be continued




