表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/136

―第壱拾章 銀色のアイデンティティー―

 俺――杉並俊輝は鏡花の言葉に驚きを隠せずに黙り込んでしまった。

 だってこんな女の子が、そして妹の歩美までもが、なんらかの組織に入っているだなんて。



「……ここじゃなんなので、リビングでお話をしましょう」



 歩美はそう俺たちに切り出した。



「そ、そうだな。上がってくれ、鏡花」

「ありがと、上がらせて貰うわ」



 ひとまず落ち着くため、俺たちはリビングに向かった。



     ❁ ❁ ❁



「さて、俊輝。質問コーナーよ。なんでも訊いて。わたしたちの答えられる範囲内なら答えるわ」



 リビングにて。大テーブルに俺の正面に歩美と一緒に座っている鏡花が俺にそう言った。



「じゃあ、順番に訊いていいか?」

「いいわ」

「は、はい……」



 ふたりに確認を取って俺はまずひとつ、質問した。



「単刀直入に訊くぞ。SICってなんだ?」



 そう、SICなんて名前の組織は聞いたことない。

 歩美が答えた。



「四年前に日本とアメリカにはある条約が結ばれたんです」

「条約?」



 二年前、それはたしか、そのSICとかいう組織ができた年だったっけ。



「はい。日米平和共同維持条約という条約です」



 日米平和共同維持条約? そんなの聞いたことない。



「内容は……知らないわよね?」



 鏡花が俺に訊く。



「ま、まあな」

「でしょうね。簡単に説明するわ。日米平和共同維持条約は文字通り、日本とアメリカの平和を共同して維持するという条約よ」

「そのまんまだな」



 俺がそんな感想を漏らすと鏡花は苦笑しながら続ける。



「それには、互いに条件がふたつあるのよ。ひとつは互いの国から各分野について専門としている人材を派遣すること。わたしはこれが理由で日本に来日したのよ。これは、互いの情勢を正確に通じるため。それと、互いに仲良くするための贈り物のつもりでもあるのよ。日本からも何人か、派遣されているわ」



 そうか。そんな目的でうちの日本に来たのか。

 鏡花が説明し終わり、今度は歩美が続ける。



「もうひとつは、その組織を互いの国に、国家の警察とはまったく別に独立させて作ること」

「なんでだ?」

「警察の内部に作ると、互いの国に真実、なにが起きたかが正確にわからなくなってしまいます。警察というのは、自分の国に都合が悪いことや過去に犯した冤罪などを隠蔽しようとする組織ですから。だからと言って、警察の組織を廃止すると失業者が大量に出る。今はただでさえ不景気なのに、そんなことしたら非難の的になってしまう。だから、警察とはまったく別の組織を作った。それがSICという組織」

「おかげで、警察関係者のほとんどから腫れ物扱いされてるわ……。覚えているかしら? 同じく四年前の出来事。武装警察官集団デモ事件」

「……ゴメン。まったく覚えてないや」



 俺のその答えに鏡花は意外そうに眉を寄せる。



「あれ? 結構有名になったんだけど……本当に覚えていない?」

「うーん。すまんな」



 実はと言うと「覚えていない」ではなく「知らない」が適切だと思う。だって、本当に聞いたことないもん、そんな事件。

 でも……当然、か。そんな事件が起きて。だって勝手に条約結ばれた上に警察とほぼ同じ動きをする組織を警察とまったく違うように作られちゃあ、警察官なら怒るわな。警察をないがしろにしているようなものだから。

 鏡花が俺に言う。



「もうわかったわよね、わたしたちの正体。社会の別の捜査官――Separate investigators the community――通称SICってことよ」



 ……大体わかった。



「……もうひとついいか?」

「なーに?」



 俺は最後の質問をした。



「十二番隊とか、なんだ?」



 そう、鏡花が歩美に「十二番隊の~」って言っていた。一体なんだ?

 鏡花が答える。



「さっきわたしが言ったわよね? 条件として各分野の専門家が派遣されているって」

「あ、ああ」

「SICには、その専門家を中心に部署があるの。一番隊から二十番隊まで。わたしは十番隊の隊長をしているわ。さっきの綺羅さんは五番隊、龍侍さんは三番隊の隊長をしているわ。そして……そちらの歩美さんも」



 鏡花が歩美を見る。



「……はい。私は十二番隊の隊長をさせていただいております」



 歩美が答える。



「そ、そうだったのか。でも、いつからそんな仕事をしていた? おまえも鏡花と同じとこにいるのなら元々はアメリカの所属だろう?」



 俺がそう質問すると、歩美は目を反らして言う。



「……そのことについては後に話してもいいですか?」

「ん、わかった」



 歩美にも言えないことはあるんだろう。今は触れないで、本人の口から直接話してくれるまで待とう。



「十二番隊はね、パソコン技術のエキスパート部隊。隊長の歩美さんのハッキング、クラッキング技術は孤高のものと聞くわ」

「い、いえっ、それほどでも……。鏡花さんの十番隊はたしか、隠密機動専門の部隊でしたよね。四年ぶりの新しい隊長さんは昔『最速のアメリカン忍者』と言われてたとか?」

「誰!? そんなダサいふたつ名、付けたの誰!?」



 鏡花がそのセンスの欠片もないふたつ名を聞いて戦慄する。



「え? 綺羅さんから……」

「……あのひとかぁ……。まったく、なに言ってんですか……」



 鏡花は歩美の言葉を受けて沈んでいた。……てか、先輩。悪戯のつもりかもしれませんが、かなりセンスないっすよ?

 でも……そっか。そんなに凄いやつだったのか、鏡花。とても同い年とは思えないよ。歩美もなにがあったかはまだわからないけど、凄いよなぁ。だってこのふたり、警察みたいな組織に入ってるんだぜ?



「兄さん、鏡花さん。もうこんな時間ですから寝ましょう。鏡花さんも事情は知っていますから、部屋を用意しますね」



 ああ、たしかに。もう、零時を回っている。

 鏡花が歩美に眉を寄せて訊ねる。



「……あれ? わたし、あなたになんで同居するのか、言ったっけ?」

「ああ、ほら、綺羅さんか龍侍さんが言ってませんでしたか? 協力者に十二番隊の隊長がいるって」

「……あ」



 なにかを思い出したように顔をハッとさせる鏡花。

 今日の出来事はもう歩美に伝わっていたようだ。



「それにしても、その一般人が兄さんだとは思っていませんでしたけど。まったく、ウソなんかついて……。なにをしにこんな時間に学校なんかに行ったのですか」

「うぐっ」



 ジト目で見られ、たじろぐ俺。

 ……い、言えない! こんな時間にエロゲを取りに行っていたなんてこと!



「……う、ウソをついてごめんなさい。反省しております」

「よろしい」



 妙な迫力を見せる歩美に素直に謝る俺。……歩美って、怒ると怖そうだよね。

 鏡花はその様子を見て苦笑していた。

 こうして、長い一日が終わったのであった。

 そして俺は、今までとはまったく違う生活を送ることになった。





              To be continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ