第五話 夜の国道
陽が完全に落ちた国道を、俺たちは走り続けた。
沿道のガソリンスタンドや看板の明かりが、途切れ途切れに流れていった。パチンコ店の電光掲示板が、けたたましく光っては消えた。その間に、暗い田んぼや雑木林が挟まっていた。昭和から変わっていない風景と、平成を経て建ったものが、脈絡もなく並んでいた。
引き渡し場所まであと四十分。バックミラーに、ヘッドライトが一つついてきていた。三十分前から、同じ距離を保ったまま離れない。
「今夜、どこに行くつもりだ」
「友達の家に電話しようと思ってます」と小春は言った。「携帯は持ってきたので」
「式場から逃げてきた花嫁を朝まで匿ってくれる友達がいるのか」
「一人だけ。大学からの親友で、父のこともよく知ってる人なので、話せると思う」
「そうか」
少し間があって、「あなたは?」と小春が訊いた。「今夜どこに行くんですか」
「仕事が終わったら家に帰る」
「サンタの格好のまま?」
俺は付け髭をむしり取って後部座席に投げた。小春が小さく笑った。
「仕事が終わったら普通の格好に戻る」
「普通ってどんな格好ですか」
「ジーンズとフリース」
「地味ですね」
「そうだな」
小春が窓に頬をつけて外を見た。ガードレールの向こうに、川が見えた。街灯の光が水面に細く揺れている。川沿いに一本だけ残った柳が、風に揺れていた。冬枯れの枝が、街灯の光の中で細く白かった。
「きれい」と小春が呟いた。
俺は何も言わずに、少しだけ速度を落とした。
バックミラーの中のヘッドライトも、同じように速度を落とした。
完




