↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンタがやってきた――結婚式から逃げた日に  作者: 八雲 海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/5

第五話 夜の国道

陽が完全に落ちた国道を、俺たちは走り続けた。

沿道《えんどう》のガソリンスタンドや看板の明かりが、途切れ途切れに流れていった。パチンコ店の電光掲示板《でんこうけいじばん》が、けたたましく光っては消えた。その間に、暗い田んぼや雑木林《ぞうきばやし》が挟まっていた。昭和から変わっていない風景と、平成を経て建ったものが、脈絡《みゃくらく》もなく並んでいた。

引き渡し場所まであと四十分。バックミラーに、ヘッドライトが一つついてきていた。三十分前から、同じ距離を保ったまま離れない。

「今夜、どこに行くつもりだ」

「友達の家に電話しようと思ってます」と小春は言った。「携帯は持ってきたので」

「式場から逃げてきた花嫁を朝まで匿《かくま》ってくれる友達がいるのか」

「一人だけ。大学からの親友で、父のこともよく知ってる人なので、話せると思う」

「そうか」

少し間があって、「あなたは?」と小春が訊いた。「今夜どこに行くんですか」

「仕事が終わったら家に帰る」

「サンタの格好のまま?」

俺は付け髭《つけひげ》をむしり取って後部座席に投げた。小春が小さく笑った。

「仕事が終わったら普通の格好に戻る」

「普通ってどんな格好ですか」

「ジーンズとフリース」

「地味ですね」

「そうだな」

小春が窓に頬《ほお》をつけて外を見た。ガードレールの向こうに、川が見えた。街灯の光が水面《みなも》に細く揺れている。川沿いに一本だけ残った柳《やなぎ》が、風に揺れていた。冬枯れの枝が、街灯の光の中で細く白かった。

「きれい」と小春が呟《つぶや》いた。

俺は何も言わずに、少しだけ速度を落とした。

バックミラーの中のヘッドライトも、同じように速度を落とした。

完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。