表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/29

序章-10. 暗闇の反響


松明の炎が、じわりと闇を照らす。

その先で、“それ”が姿を現した。


──ラットマン・チャンピオン。


毛のない灰色の肌は、他のラットマンと変わらない。

だが、体格は二回り以上も大きく、人間の成人に迫る巨体だった。


腕は異様に太く、手には錆びた鉤爪のような骨片が剥き出しになっている。

頭部には無数の傷痕。

顎は欠け、まるで死線を越えてきた獣のようだった。


「……でかいな」


つぶやいた瞬間、ラットマンが咆哮する。

風圧で、手にした松明の火が大きく揺れた。


(焦るな……攻撃パターンは三つ。突進、飛びかかり、そして引っかき──)


脳裏で、何度も繰り返し挑んだ戦闘の記憶がよみがえる。

その記憶が、恐怖を押し戻す盾になる。


松明を前に突き出す。

一瞬、奴がたじろいだ。


(やはり、火に弱い……でも、逃げる様子はない)


次の瞬間、巨体が突進してくる。

ズシン、と地を蹴る音。空気が裂けた。


ギリギリで横に跳び、壁を背にする。

だが、すぐに左から鉤爪が横薙ぎに襲いかかった。


「ッ……!」


肩が裂ける。声を殺し、すぐさま反撃に出る。

脇腹に短剣を突き立てた。だが、


(硬い……。筋肉に弾かれてる。やっぱり、弱点を突くしかない)


ラットマンが地を踏み鳴らして吠える。

行動パターンのひとつ、威嚇。動きが止まる。


(今だッ!)


走る。

全力で松明を握りしめ、叫ぶように──


「おおおおおおッ!!」


燃え盛る火を、ラットマンの眼窩に突き立てる。


ジュッ……と肉が焼ける音。

続いて、獣じみた絶叫。


巨体が暴れ回る。柱にぶつかり、床に爪を立ててのたうち回る。


(よし、あと一手……!)


そう思った刹那。


──ドゴォッ!


強烈な衝撃が、体を吹き飛ばした。


(……がっ!?)


視界が跳ね、地面に転がる。

短剣も松明も、遠くへ弾き飛ばされていた。


なんとか起き上がる。だが──もう武器はない。

チャンピオンは片目を押さえながらも、怒りに任せて尾を振り回していた。


(やってしまった……。ゲームじゃない。今の俺にとって、あいつはザコなんかじゃない)


背後の壁を頼りに、どうにか立つ。

肩は熱を持ち、呼吸が乱れる。視界も定まらない。


その時だった。

転がった松明の灯りが、闇の中で“何か”を照らした。


そこにあったのは──場違いなほど、無骨な両手剣だった。


(……なぜ、こんなところに……?)


迷う時間はなかった。

全身の痛みに鞭を打って、剣に手を伸ばす。


その瞬間──


________________________________________


【観測情報】個体識別コード《レムナ》

 同一個体のソウルコードを取得

________________________________________


________________________________________


【TRAITS】“空の継承エコーズ”の発動条件を満たしました

剣士ソードマン》カインのソウルコードを継承します

________________________________________



「っ……あ、が……!?」


稲妻のような激痛が、全身を走った。

脳を貫く閃光。視界が白く焼け、意識が吹き飛びそうになる。


骨が、筋肉が、細胞が、何かに塗り替えられていく。


(くそ……まだ……!)


意識だけは手放せなかった。


朦朧とした視界の先で、ラットマンチャンピオンがこちらに向かっていた。

丸太のような腕を振り上げる。

今度こそ、確実に終わる。


「く……そ、があああッ!!」


咆哮と共に、両手剣を逆袈裟に振り上げた。

鈍く、だが鋭い金属音。


一撃がぶつかり、ラットマンチャンピオンの右腕が、根元から吹き飛んだ。


違和感が残る。


この感覚……初めてじゃないような。

両手剣の重さが、妙に馴染む。


(なんだ……この動き。俺ができる動きじゃない……誰かの……)


だが、考えている暇はなかった。









ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ぜひ次話もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ