8 衣装チェンジ
僕の装備一式を用意したけど、それに合わせてリゼも装備をチェンジ。
日本で目立たないように着ていたセーラー服から、白銀のドレスを纏う。
リゼの銀色の髪と合わさって、まるでその髪で作ったような色のドレス。
フリル付きのウエディングドレスじみた衣装で、リゼの細くくびれた胴周りのラインをやたら強調していた。
とても神秘的な美しさだけど、このドレスの正体は"スライム"だ。
人の姿をしているリゼだけど、その正体は魔王クラスのスライム。
リゼの体内には、リゼの子どもたちが大量に飼われていて、その中にドレスへ姿を変えられるスライムがいる。
リゼのドレスは、そんなスライムが化けた物というわけだ。
そしてこのドレススライムだけど、エルダースライムと呼ばれる種族で、その体はミスリルより頑丈で、アダマンタイトクラスの防御力を持っている。
しかも元がスライムなので、ドレスが汚れたり傷ついても、一端ゼリー状に戻って再度ドレス姿へ戻れば、瑕一つない状態に戻ることが出来た。
「リゼ様、とても美しいですわ」
「ホホホ、わたくしシオン様の妻になる準備が、いつでもできておりますから」
ドレスの正体がスライムなんて知らない王女様は、リゼのドレス姿に感嘆していた。
でもさ、リゼ。
それは"ただのドレス"でしょう。
間違っても、本物の"ウエディングドレス"じゃないよね?
(さあいらっしゃい。今すぐいらっしゃい。押し倒される準備はできていますわよ!)
言葉はないけど、リゼの僕を見る目が、狩人の目になっていた。
「リ、リゼ、とてもよく似合ってるよ」
「はい、シオン様」
悲しいかな、上っ面ではいい人を演じてしまう僕。
衣装を褒めたら、満面の笑顔になるリゼだった。だけどやっぱり、リゼの目は今日も笑ってなかった。
狩人の目のままだよ!
「僕はこの格好のままでー」
そして次に絶だけど、絶は地球にいた時からゴスロリドレス姿。
「絶ちゃんは、その格好で戦うの?」
「うん、そうだよ」
僕たちはこれから街の外に出て、モンスターと戦っていくことになる。
そんな中、ゴスロリ姿で戦おうという幼女絶。
まあ絶だけでなく、リゼもドレス姿で戦闘しようという、かなり頭のおかしな子たちだ。
最後にヤヌーシャだけど、着替えと言うことで一端僕たちのいる場所から姿を消す。
替えの部屋のドアを閉めて、即開けて戻ってきた。
それだけで、さっきまで来ていたセーラー服から、一瞬で絶とそっくりなゴスロリ戦闘服へ変わっていた。
「ヤヌーシャちゃん、一瞬で着替えたの!?」
「ポリポリポリポリ」
一瞬の早着替えに王女様が驚いてるけど、ヤヌーシャは他人のことなど完全無視。
着替え終了と共に、早くもポッキーに噛り付いていた。
マイペースを通り越して、今日もポッキー街道まっしぐらだ。
「わたくしも、あのドレスを着てみたいわ」
この後、絶とヤヌーシャのゴスロリドレスに感化されて、王女様がそんなことを言っていた。
でもさ、二足歩行する白豚王女様のゴスロリ姿って、見たくないなー。
白豚と心の中で呼んでるだけあって、王女様の肌は白い。そこに黒のゴスロリ衣装が加われば、色の対比としては完璧だろう。
でも、白いだけじゃなく、豚体型だからねぇー。
「ヴッ、少し気分が……」
頭の中で王女様のゴスロリ姿を想像してしまった瞬間、僕は気持ち悪さを感じてしまった。
「シオン、どうしたの大丈夫?」
思わずふらついてしまった僕を、心配してくれる絶。
「フウッ、どうして殿方の頭の中は、ふしだらなのでしょうね」
そしてリゼは訳知り顔でため息をつく。
でもさぁ、白豚王女のゴスロリ姿を想像しただけで、なぜふしだら扱いされないといけないんだ?
リゼ、何か勘違いしてるぞ!
「ポリポリ」
ポッキーヤヌーシャだけは、いつも通りだった。
ただヤヌーシャだけど、ポッキーを食べずに黙ってその辺の椅子に腰かけていれば、かなり可愛い女の子に見える。
ヤヌーシャは基本的に無表情で、感情と言うものを表に出すことがない。
無駄口も一切叩くことがない。
人形めいた美貌の幼女なので、そんな彼女が黙って椅子に腰かけていれば、性別を問うことなく、多くの人たちから「綺麗」と言われるだろう。
もっともそれは人間的に綺麗と呼ばれるのでなく、美しい人形を賛辞する意味での"綺麗"だ。
何しろ、ヤヌーシャの正体は……
「勇者様、お迎えに上がりました」
なんて考えてたところに、コンラットさんがやってきた。
「お迎え?」
「はい。勇者様たちの能力は疑う必要もありませんが、これからは城内でなく、王都の周辺でもモンスター討伐に慣れていってもらいます。それに際して、私が護衛としてお供いたします」
「ああ、護衛ですか」
いらねぇー。
この世界のモンスターがどのくらい強いかは、まだお目にかかってないので分からない。
けど、少なくとも僕たちはコンラットさんに護衛されるほど、弱くなかった。
足手まといだなー。
邪魔だなー。
「あの、私もお供いたします」
と、続いて現れたのはカリンお姉さんだった。
これからの僕たちには、コンラットさんだけでなく、カリンお姉さんも同行するそうだ。
「本当はお師匠様が同行するはずだったのですが、如何せんお年を召されているものなので」
とのこと。
勇者の旅に同行するメンバーと言うわけだね。
それにしても、よかったー。
カリンお姉さんの師匠っていえば、あの変人宮廷魔術師のオイゲンさんだよね。
僕たちに弟子入りしたいとか言ってたけど、老人に弟子入りなんてされたくなかったので、よかったー。
それに神秘のパーフェクトバストを持つカリンお姉さんと一緒の旅になるなら、凄く楽しそう。
ああ、なんて眼福だろう。
「これからもよろしくお願いします。コンラットさん、カリンお姉さん」
てなわけで、180度方向転換。
僕は愛想よく笑った。
「やれやれ、シオン様と言えど所詮は男。どうして殿方はこうも単純なんでしょうね」
そんな僕の耳にリゼの呆れた声が聞こえたけど、何のことだか分からないなー。
「まあ、勇者様の笑顔って可愛い」
あと、白豚王女様が何か言ってた。
ゲェッ、王女の顔が赤く染まってるんだけど!?
……OK、僕は何も見なかった。
僕は王女様相手に、フラグなんて立ててないぞ。
いくら僕の見た目が年齢より遥かに下に見え、そのせいでショタに見えるからって、それで王女様の顔が赤くなる理由にならないはずだ。
おまけに中性的な顔立ちで、母さん譲りのエンジェルスマイルを持っているからと言って、それとは全然関係ないはずだ。
「フフフッ、シオン様の笑顔は、女の母性をくすぐるから仕方ないですわね」
リゼがそんなことを言ったけど、今の僕には何も聞こえないー!
「さ、さあ、善は急げ。僕たちの冒険はここから始まりだー」
僕は王女様から一刻も早く逃れるため、これから魔王討伐の旅に出ることにした。
まあ、馬鹿正直に勇者ゴッコをして、この世界の魔王を討伐する気なんてさらさらないけど。




