9 異世界食事事情
レッツ異世界観光ー!
勇者召喚されて今まで城の中で生活してきた僕たちだけど、今日から城の外に出ることが出来るようになった。
城の外に広がるのは石造りの家の数々で、中世ファンタジーそのままという感じ。
もっとも僕たちが出てきたのは城なわけで、その周辺にある家は、どれも大きくて立派。貴族の邸宅だろう。
まあ、大きくて立派と言っても、単なる言葉の綾だ。
日本の巨大なビル群を見慣れてしまえば、貴族が住んでいる邸宅と言っても、たいした高さがない。
それでも一戸建ての住宅として見るなら、日本とは比べ物にならない広さがあった。
なお僕の故郷の場合、魔王城の周辺には黒い建材で建てられた建物群が、ズラズラ建ち並んでいて、まさに魔族の都と言う雰囲気が漂っている。
建物にも、魔法的な意味合いを持つ術式が施されていて、建物の材質以上に頑丈に作られていた。
あと、反重力で飛んでいる"ドローン"が、空をたくさん飛んでいる。
『魔王の都ならファンタジー臭をもっと出せ!なんてドローンが飛んでるんだ!』
と、突っ込まれるかもしれないけど、宅配サービスの荷物を、ドローンが配送しているのだ。
僕の世界に"アマゾン"という名前の会社はないけど、似たような事をしている会社があるんだ。
閑話休題。
「古臭い街並みですわね。埃っぽいですわ」
石造りの建物の数々を見て、リゼがバッサリ切り捨てる。
石造りの建物と言えば、古式ゆかしい伝統ある建物だけど、伝統を別の言い方で表すと、古さくいになってしまう。
「食べ物屋さんはないかなー?観光と言えば、やっぱり食べ物だよねー」
絶はキョロキョロ周囲を見回して、花より団子を地でいく。
「ボリボリボリ」
ポッキー魔神ヤヌーシャは、城の外に出ようが、そんなことは全くお構いなし。
「勇者様たちには、戦いに慣れていただくため、まずは街のギルドに登録していただこうと思います」
そして護衛兼案内役のコンラットさんは、そういう言った。
「へー、ギルドがあるんですね。そこでは依頼を受けて薬草採集したり、モンスターを倒したりするんですか?」
「ええ、そうなります。随分詳しいですが、勇者様の世界にも、ギルドが存在するのですか?」
「そうですね。昔は冒険者ギルドと言う組織があって、胃随分栄えていたそうですよ。けど、今じゃかなり規模が小さくなって、廃業寸前って聞いてます。実物のギルドは見たことないですね」
「廃業寸前?」
「父さんが冒険者ギルドを残して、民間人に武器を持たせておけば、人間に反乱を起こせとそそのかしているようなものだから、潰してしまえって……」
おっと、いけない。
余計なことを言ってしまったぞ。
僕の国だけど、地下世界にある魔族が住む魔界も、人間や獣人たちが住む地上世界も、天使たちが住む天上世界も、全て統一済み。
冒険者ギルドは魔界にないものの、人間の世界には存在していた。ギルドの人間は武器を持って、戦ってこそ商売が成り立つけど、そんな連中をそのままにしていれば、せっかく統一した世界で、内乱を起こされる原因になりかねなかった。
民間人に武器を持たせない。
武器は軍隊だけが持っていればいい。
父さんのそういった考えで、冒険者ギルドはかなり締め付けられ、潰れる寸前まで行っていた。
日本だって、銃は自衛隊と警官が持っているだけで、民間人には猟師などのごく一部の例外を除いて、所持することを許可しない。
考え方としては、それとほぼ同じだ。
「今のは忘れてください。なんでもないですから」
突っ込んだことまで話してないけど、コンラットさんにかなーりマズいことを話してしまった。
「……人間、反乱?」
ああ、ヤバイ。
僕の言葉を、コンラットさんが物凄く不審がってるよー。
「ア、アハハー」
誤魔化しが効きそうもないので、僕はとにかく笑っておいた。
ええーい、僕たちの正体がバレてしまうようだったら、その時は都市の外に行った時、コンラットさんを地面の下に埋めてしまおう。
死人に口なし。
モンスターにやられてしまったとでも言い訳すれば、王様たちだって疑わないだろう。
(わざわざ地面に埋めなくても、わたくしが食べますよ?)
(ポリポリポリ、人間食べていいの?)
そんな僕の内心が分かるようで、リゼとヤヌーシャが物騒な表情を浮かべていた。
僕の友達である2人は、何しろ大魔族だからね。
でもさ、僕としては人殺しをするつもりはないから。あくまでも最悪の場合の話だ。
それにそうなる前に、"伯爵"に頼めば問題ないだろう。
「ねえねえ、美味しいもの食べたいよー」
「絶ちゃんって、もしかして食いしん坊さんですか?」
「ううん、僕は食いしん坊じゃなくて、おいしい物が好きなだけだよ」
なお、僕たちが物騒な話題になっていた間、絶とカリンお姉さんは、物凄くほっこりした会話をしていた。
「僕も異世界の料理に興味がありますねー。ギルドに行く前に、何か食べていきましょうよー」
「……そうですね」
露骨な話題逸らし。
コンラットさんに相変わらず疑われたままだけど、同意してくれた。
「ワーイ、ご飯だー」
「ご飯だー」
絶は大喜び。
それに合わせて、僕もわざとらしく喜んで見せた。
僕は15歳。
だけど見た目が10歳のガキに見えるので、わざとらしい仕草をしても、そこまで怪しまれずに済む。
ここは絶と仲良くお子ちゃまっぽい振りをして、全部誤魔化してしまえー!
と言うわけで、その後僕たちは昼食をとった。
店で出てきたのは、小麦粉を焼いたパンに、野菜と焼いた川魚が添えられた料理。
「……このパン、全然美味しくない。ボソボソしてる上に……ペペッ、中にゴミが混じってる!」
パンの絶望的なマズさに、絶が顔を顰める。
「川魚も、小骨が多くて食べにくい上に、泥臭い……」
ナニコレ、何かの罰ゲーム?
僕も思わず顔を顰めてしまう。
「モグモグモグ、何でもいいじゃないですか。食べられるなら、私はちっとも気にしませんよ」
対してリゼは質より量で、味なんて気にすることなく、平然とぱくついている。
まあ、リゼは正体はスライムなので、味覚に関して壊滅的だ。
一応うまいマズいを判断できるけど、体の中に入った物は消化液で全部溶かして食べてしまう。体に取り込めるものなら、なんだっていいというスタンスだった。
肉や野菜も食べるけど、その辺に転がってる土や岩でも関係なく食べるのが、リゼだった。
彼女に、味のコメントを求めてはいけない。
「ポリポリポリポリ」
そしてヤヌーシャだけど、異世界料理なんてお構いなし。ここでもポッキーを食べていた。
一体どこまでポッキーが好きなんだよ!
そして常にポッキーを食べているのに、なぜ在庫が尽きないんだ!
「勇者様。市井の料理とは、このようなものです。城で出てくる料理とは、訳が違います」
僕と絶にとって、はなはだ不本意な味の料理だったけど、コンラットさんは平然とした顔で食べていた。
ただし、その表情は決して美味しい物を食べているという風でなく、『腹が減ってるから食べているだけ』って感じだ。
コンラットさんって、美味しい物を食べたことがないんだろうね。
これがこの世界の人たちにとって、普通なのかもしれない。
カリンお姉さんも、文句を言わずに食べている。
ただ食事だからと言う理由で、義務的に食べてる感じだった。
中世レベルの世界だと、マズい飯がデフォルトなのだろう。
2人とも食べる事に、楽しみを全く求めていなかった。
しかし、僕は研究されまくった日本の食に慣れてしまったせいか、この世界の料理をとにかくマズく感じてしまう。
城で食べた料理にしても、肉や野菜がたっぷり使われて豪勢だったけど、量と見た目が凄いだけで、味に関してはマズかった。
これでは日本どころか、故郷(魔界)の味にも負けてしまう。
技術では地球より進んでる僕の故郷だけど、料理の味と言う点では、日本の方がはるか上をいっていた。
しかし魔界にも負けてしまうとか、どんだけマズい料理なんだよ。
このレストランでの食事の後、僕たちは再び冒険者ギルド目指して街を歩いていく。
ギルドは街の一等地にあるとのことで、それほど歩くことなくたどり着ける。
ただその前に、屋台を見つけた。
そこでは何かの肉が串に刺されて、焼かれていた。
串焼きの店だ。
「クンクンクン。ねえおじさん、これって何の肉?」
屋台の肉に最初に反応したのは、やはり絶。
店のおじさんに、早速問いかけていた。
先ほどのマズい食事に辟易したけど、肉料理を見つけて、好奇心が沸いたようだ。
「この肉かい。さあ何の肉だろうね?モンスターってのは分かるんだけど、市場に買い付けに行ったときにあった肉を、適当に焼いてるだけだからなあ」
「おおうっ、超ズボラスタイル!」
仕入れた肉の正体すら知らない。
真面目に商売する気があるのか?
そんな感じで、店のおじさんは滅茶苦茶いい加減だった。
日本だったら、こんなずぼらスタイルの商売なんて成り立たないよ。
中世レベルのこの世界なら、こんなずぼらスタイルでもいいのかもしれないけど。
「うーん、とりあえずこの肉を1本、あと、これとこれとこれとー」
店のおじさんはともかくとして、絶は興味を引かれる肉を次々と買っていく。
「絶殿、一体何十本買うつもりですか?」
「ねえ絶ちゃん、そんなにたくさん食べられないでしょう」
絶が物凄い量の串焼きを買い込んでいくので、コンラットさんとカリンお姉さんが呆れていた。
「大丈夫、これくらい大したことないから」
もっとも絶の方はどこ吹く風。
たくさん買い込んだ串焼きを、1人でバクバク食べ始めた。
「絶、わたくしにもそれとそれとそれを……」
いや、絶だけでなく、リゼが絶の買った串焼きを、横から何本もとって食べていった。
「お二人とも先ほど昼食を取ったばかりなのに、よくそんなに食べられますね」
「リゼ様も絶ちゃんも、どうしてこんなに食べて太らないの?」
食べてばかりの2人に、コンラットさんとカリンお姉さんが、またしても呆れていた。
すみませんね、僕の友たちが大食漢過ぎて。
「ポリポリ」
そしてヤヌーシャは串焼きに興味がなくても、ポッキーは食べ続けていた。
例えお菓子とはいえ、ここまで食べ続けるヤヌーシャも大食漢と言えた。
まあ人間じゃないので、これくらい食べるのが普通の子たちなんだけど。
後書き
2年間放置していたツイッター(@edy_edi)に、最近戻ってきた作者です。
適当なことを呟きつつ、今まで書てきた小説の裏話も適当につぶやき中~




