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3/3

3食目:港の美味しいご飯。



>

三人が山を超える時、野生のトラを討伐をして

手際よく調理して食事にする。


ヘルモドが村から持ってきたスパイスをかけたトラの肉をフーノスに食べさせると、感動したように


「このお肉、私の村で食べてたトラのお肉と全然違う味がする。

しかも獣の匂いが全くしない。

このスパイスはどうやって作ったの?

もっとかけて食べたい!」


「ははっ、そうだろ?

これは酒屋のおばちゃんの秘伝のスパイスなんだ。

これさえあれば、どんな肉にかけても

めちゃくちゃ美味くなるんだぜ」


とロンが鼻高々に言う。


ヘルモドは2人の会話も聞いていないかのように

自分の分のお肉をペロリと完食していた。


「やっぱり肉は美味い。

昨日のイノシシ鍋のあの肉の柔らかさもいいけど

ガッツリ食べたい時は

こういう食べ応えのある肉も捨て難いな」


各々食べ終わるが

ヘルモドはまだ食べ足りない様子で

周りに動物がいないか見渡しながら歩いている。


ロンとフーノスは

肉にふりかけたスパイスの良さを語っていた。


森を抜け、

アルン街の特有の色鮮やかな屋根が

少し遠くに見えた。


3人の足が自然と早くなっていく。



>

ーー目の前に海が見えた。

アルン街のマーラン海が一面に見えた。


フーノスは感激する。


「すごい綺麗…これって湖なのかな。

私こんなに大きな湖、見たことない!」


ロンはやれやれと


「これが海ってやつだ。

ちょっと屈んで指先についたやつ舐めてみろよ」


言われた通りに指先についた水をひと舐めすると

フーノスが顔しかめて苦笑いしながら、


「この水、かなりしょっぱいね…」


「だろ?この海水で魚が生活しているんだ。

港町だから美味しい魚がたらふく食えるぜ」


と2人で楽しそうに話していた。


2人の会話を聞くこともなく

ヘルモドは近くにあったレストランに向かう。

外に置いてあったメニューを見ると、

俺たちがとても払えないような値段だった。


ヘルモドがしょんぼりした顔で

2人のところへ戻る。


とりあえず新鮮で美味しい魚が取れる港だからと

釣具屋に行き適当な釣竿など最低限の道具を買い、

堤防にフーノスを囲んだ形で座り釣りを始める。


しばらく経っても小魚が数匹しか釣れない。

今日は諦めようとヘルモドが言った瞬間、

ロンの釣竿がものすごい勢いで引っ張られる。

ロンは負けじと竿を引いて釣り上げた。


その魚は白く、背びれが鮮やかな青色で

1メートルはあるような大きな魚で

ロンが驚きの声をあげる。


ロンの大声で船に乗っていた若い男性が

釣った魚を見て驚きを隠せない様子で、


「これは数年に1度現れるかどうかわかない、

とても希少な魚だ。

金は弾むから是非買い取らせてくれ」


と頼まれる。


ヘルモドがそれを聞き

それなら少しだけ味見させてくれないかと、

交渉する。


漁師はすぐに丁寧に鱗を取り皮を剥ぎ、

1番美味しいお腹の脂がのった部分を捌き、

生のままお皿に綺麗に盛り付けてくれた。


マラナ村でも使っていた醤油につけて食べる。


フーノスは生魚を食べたことがなく

恐る恐る食べると、感激したように


「生のお魚って

弾力があってプリっとしてるんだね。

私の村じゃ干物しか食べられなかったから、

こんなに美味しいお魚食べたの初めて。

この黒いソースもお魚の甘みを引き立たせて

すごく美味しい!」


その光景を見た2人は

フーノスの笑顔を見て嬉しそうに微笑む。



>

漁師に魚を売って大金を手にした三人は

またレストランへと向かう。


最初に食べたサーモンのカルパッチョ。

ベビーリーフの周りに少し厚めにスライスされ、

綺麗に円上に並べられたサーモン。

酸味のきいたハーブのソース、

質のいいオリーブオイルがかかっていた。


「さっきのお魚も

脂がのっていて美味しかったけど

このちょっと酸っぱいソースに絡めて食べても、

すごく美味しい!

でもこのお魚、

綺麗な赤いお魚なのに白身魚なんて不思議だね」


アクアバッツァは白身魚を丸ごと1匹使い、

野菜はミニトマト、ナス、マッシュルーム、

ムール貝など色鮮やかで

見た目でも美味しいのがよく分かる。


「すげぇ。

でかい魚なのに味がしっかりして

食べ応えもあるし、魚と野菜の出汁を

パンに染み込ませて食べても

めちゃくちゃ美味い!」


そして、レストランのイチオシメニュー。


魚の塩釜焼き。


テーブルに天板のまま置かれた時は

見た目が真っ白の塊でびっくりしたが、

店員が小さな木のハンマーで

割って食べるのだと教えてくれた。


叩いて割ってみると

見たことのない

緑の布みたいな物に包まれた魚が現れた。


ヘルモドが驚いて固まっていると

店員が、それは海で取れる海藻で

旨味たっぷりの【昆布】だと教えてもらった。


「これは塩で固めてあるのに

魚はふっくらとした食感で、

この【昆布】に包んであることで

塩辛くないように、そして旨味を引き出して

程よい塩味も感じることが出来る逸品だ。

ダメだ…美味しくて食べてもお腹が空いてくる」


このレストランには、

どの料理にもパンが付いてきて

バケット、ライ麦粉を使ったカンパーニュなど、

食べ進めて行くうちに芳醇な香りがして、

どれもいい小麦を使っているのがわかる。


フーノスが魚料理を食べる横で、

ヘルモドが猛烈な勢いでパクパクと食べていく。

他に注文した料理を

何皿も平らげる異常な食べっぷりに若干引く。


ロンは、

こいつは食い物になるといつもこうなんだ。

とため息をつきながらフーノスを憐れむ目で見る。



>

食事を続けていくと、

いかにも冒険者だと思われる4人組が


「塔の5階層のボスが倒せない。まだ駆け出しの僕たちじゃ力不足なんだろうな…」


と話しているのがフーノスの耳に入る。


フーノスは昔パーティーに所属していた時に、

20階層までは攻略出来て

そこそこの報酬とレア素材を手に入れていた。


冒険者たちの話に聞き耳を立てながら、


「あの冒険者たちみたいに塔を攻略していくと、

階層ごとに報酬が増えたり

レア素材も手に入れることが出来るの。

素材は骨董屋で高値で売ってもいいし、

防具屋に行って

武器にバフをかけることができるんだよ。

もし冒険者になるなら

2人はどんなバフが欲しいの?」


ヘルモドが顎に手を当て、少し考えてから


「俺たちは剣の扱いには木こりの仕事で

太い木も簡単になぎ倒すことが出来るし、

ある程度の動物ならラクに倒せることが出来るから

剣にもう少し威力を上げるバフを

かけたいくらいかな」


と、自信満々笑う。


そこですかさずロンが


「お前。そんなこと言ってこの前倒した木の下に

ぺちゃんこになってたのは、どこのどいつだよ。

あの時、木の重みで肩脱臼してたよな?

だからお前には防具も必要だろ」


とロンが腕でヘルモドの脇腹をつつく。


「おい!今その話を出すのは卑怯だろう」


恥ずかしさで声が少し大きくなる。



ヘルモドが詳しく話を聞こうと

冒険者の席に行き、声をかける。


「ごめんな。

実はさっきの話し少し聞こえていたんだ。

塔の話なんだけど、

それって俺みたいな一般人でもいけるやつなのか?

報酬もそれなりに入ってきて

レア素材も入手できるって、

仲間から聞いたんだけど」


冒険者が話を聞かれていたのが恥ずかしかったのか


「塔の攻略をするために、

まずギルドで登録しなくちゃいけないんだ。

僕たちは最下位のFランク止まりだけどね…」


と困った顔で言う。


ヘルモドが腕を組み少し考える。


そして冒険者にまた話しかける。


「確認したいんだけど、

ギルドに登録して塔を攻略すると報酬、

レア素材が手に入って売ればそれも金にもなる。

それなら冒険者になれば

美味しくて色んな料理を食べられるのか?」


真剣な顔で聞かれた冒険者が

ぽかんとした顔をする。


「ま、まぁそんな感じ。

お金の使い方は人それぞれだからね」


ヘルモドの顔が見たことの無い笑顔になる。


「ロン、フーノス聞いたか?

俺らが冒険者になったら美味しい料理を

もっと食べられるぞ!」


と興奮しながら元にいたテーブルに座る。


ロンはこういう時はツッコミを入れていたが

ヘルモドの圧に言葉が出てこない。

やっと言えた言葉が、


「…お前、正気か…?」


一方でフーノスは

三人で冒険者として正式にパーティーを組めると

ニコニコとしながら、

座っている椅子の足をパタパタと揺らして

嬉しそうな顔をする。


今この場では

いつもツッコミやちゃちゃを入れるロンが

機能していない。


ヘルモドが


「冒険者になったら早く塔の最上階層に行って

大金を手にして

死ぬまで美味しい料理を食べ続けるんだ」


と意気込んでいた。


フーノスも

美味しい料理を食べられるのが気に入ったのか、

ヘルモドとこれからどんな料理を食べていくか

真剣に話し合っていた。


ロンは天井を仰ぐ。


俺とヘルモドの2人でこの街で

魚を食いに来ただけのはずなのに

なんでこんなことになったのか、と。


更に注文した料理を

モリモリと食べているヘルモドが


「明日の朝イチにギルドで

冒険者になるために登録しよう、善は急げだろ」


と言う。


フーノスは喜ぶ。


ロンの目は死んでいる。


レストランを後にした3人は、

宿舎に向かいヘルモドとフーノスが

明日からの冒険者ライフを

和気あいあいと話していた。


そこでロンが


「俺はめんどくせえから2人で行け、

本来は2人で

新鮮な魚を食べに来ただけだったんだ。

3人で冒険者になるなんて聞いていないぞ」


と少しいじけてしまう。


幼少期から一緒に過ごしてきたヘルモドは

こういう時の対処は心得ていた。


ロンに聞こえるように小声で


「ギルドに

ロンの好みの女性がいるかもしれないぞ」


と耳元で言う。


途端に顔が明るくなり


「いやぁ、

明日から冒険者になれるの楽しみだな!」


と先陣を切って歩き出す。


フーノスがヘルモドに何を言ったか聞くと、

ヘルモドが口に人差し指を当て、

内緒の話とはぐらかす


ーーただ美味い魚を食べて帰るはずだった。

これから3人は誰もが思いもしなかった動機で冒険者として歩んでいく。

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